●次から次へと事件が起こる!? 〜だんだん家族になっていく妖怪たち〜
───人間では「野中さん」のほかにもうひとり、団地管理局長でやかん頭の「的場さん」が、シリーズをとおして登場しますが、この人がまた強者! 妖怪一家の味方で、どんな問題もひょうひょうと「問題ないっす」と解決しちゃう。野中さんと的場さんがなぜこんなに妖怪にくわしいのかも気になります。
気になりますよね〜。もしかしたら、このあとのお話で、それが明らかになる……かもしれませんよね。まだわからないですけど(笑)。
───それはぜひ知りたいです! 野中さんと的場さんは、2巻『妖怪一家の夏まつり』でも活躍しますよね。
やまんばのおばあちゃんがひょんなことから団地の「夏まつり実行委員会」の委員長に選ばれてしまった……。盆踊りのやぐらをたてるために、決して動かしてはいけないと言われていた封印の石をどかしてしまったことで大変なことが起きてしまいます。ぶじに夏まつりの日をむかえることができるのでしょうか。
2巻は、やまんばのおばあちゃんが主人公。隙あらば人間や飼い猫を食べようとし、騒動が起こる気配をかぎつけると大喜びのおばあちゃんですが、今回はさすがに「えらいことになっちゃったわ。大ピンチ」って思っているみたい(笑)。
───封印がとけて団地の中に出てきちゃった「おっそろしいヤツ」とは何でしょう?隣町の妖怪「油すまし」の登場も見どころですね。
妖怪一家7人と人間2人。それぞれの能力をいかしたチームワークで、おばあちゃんがひきおこした事件を解決し、楽しい夏まつりの夜がやってきます。
市役所の地域共生課は、人間と妖怪が仲良く暮らすことをお手伝いする課です。ヌラリヒョンパパが働くその職場に、調査依頼がまいこみました。住宅の建設予定地から気味の悪い声が聞こえてくるというのです……。今回も妖怪一家が大活躍。
───3巻『ひそひそ森の妖怪』では、「住宅建設予定地から気味の悪い声が聞こえてくる」という相談が地域共生課にもちこまれ、野中さんとヌラリヒョンパパが調査にのりだします。
なぜヌラリヒョンが調査にのりだすかというと、ヌラリヒョンパパも地域共生課で働いているからですね。
───そうでした(笑)。このへんのくわしい事情を知りたい方は、1巻を読んでくださいね。
妖怪が市役所で働いていると思うと愉快ですが、ヌラリヒョンパパにはぴったりのお仕事だったわけですよね。何しろ地域共生課は、人間だけじゃなく、妖怪の相談にのる課ですから。
といっても「ひそひそ森の妖怪」は相談にきたわけじゃありません。それどころか、丸太ん棒にとりついて工事現場監督のおしりをたたいたり、ヌラリヒョンパパ愛用のステッキにくっついて九十九さんちまでいったり、あちこち隠れたまま問題をひきおこします。
───ここで役立つのが一つ目小僧の、目ですよね。すごくいい目をもつハジメくんは、隠れていた妖怪を先に見つけて仲よくなり、初めてヌラリヒョンパパに隠し事をします。そしてそれをさっちゃんに見抜かれ……。
親子関係、きょうだい関係らしくなってきたでしょう(笑)。3巻は、父ヌラリヒョンと子どものハジメくんの物語でもあります。
ある夜、アマノジャクのマアくんは、サトリのさっちゃんと一つ目小僧のハジメくんをさそって、隣町の廃校へ遊びに行くことにしました。ところがそこで次々不思議な出来事が。妖怪も驚く学校の七不思議とは?
───2015年1月に4巻『妖怪きょうだい学校へ行く』が出版されましたが、どんなお話なのでしょうか。
ある夏の日、みんな出かけちゃってつまんないから、子どもだけであそびにいこうよ、隣町にひやっとしてゾゾッとしていい感じのところあるんだよ、とマアくんがきょうだいを誘って、廃校になった学校のプールに遊びに行く話です。
行ってみたらしーんとして暗くてこわ〜いところなんだけど、3人は大喜び。でもそこには何かがいて、プールでおいかけっこをしていると、いつの間にか3人のはずが4人いる。と、誰もいないはずの校舎からピアノの音が聞こえてくる……。「何か」にハジメくんの帽子をとられ、とりかえせないマアくんは悔しくて仕方ない。なんとかつかまえてやろうと走り回って……というお話です。
───うわー、ちょっとこわいですか!?
こわいですけどね。でもこわくないです(笑)。4巻ではさらに一歩すすんで、きょうだい3人の関係が深まります。
●山村浩二さんの絵にほれぼれ
───シリーズの挿絵を描かれているのは、アカデミー賞短編アニメーション部門に日本人ではじめてノミネートされ、国際的な賞を数多く受賞されている山村浩二さん。山村さんが描く妖怪たちが、いい雰囲気ですよね。
本当に山村さんにお願いしてよかったです。実は挿絵をお願いする方がなかなか決まらなくて、原稿を書き上げ、校正もあがってきて、さあいよいよ本当にもう決めなきゃいけないというギリギリの段階まで、決まらなかったのです。
このシリーズの妖怪たちは、姿は人間に見えるけど実は妖怪、という設定ですから、妖怪と人間の境界線上のぎりぎり微妙なところを面白がって描いてくださる方にお願いしたかった。でも、異形そのものの絵を描くのは皆さん面白がってくださっても、人間のおじさん・おばさんや、おじいさん・おばあさんと妖怪の境界線のキャラクターとなると……。野中さんや、的場さんや、市役所のお役人なんかも個性的に描いてもらわないといけませんしね。
悩んでいたとき、べつの出版社で『あのくもなあに?』という月刊絵本を山村さんと一緒につくることになりまして、そのときわたしは山村さんをアニメーションをつくられる方だとご紹介いただいてはじめてご一緒したんですが、あがってきた絵がすごくすてきだったのですね。それで「妖怪一家九十九さん」シリーズの編集者さんに、山村さんはいかがでしょうかとご相談して、ご本人に聞いていただいたところ、快くひきうけてくださいました。
───とくに気に入っている絵や場面はありますか?
どれかひとつではなく、すべての絵、すべての場面に闇が漂っている感じがいいなあと思います。そして一枚の絵のなかに空間的なひろがりを感じるところがすばらしいなと思います。
4巻では、団地を出てひとつ山をこえれば田舎の田園風景がひろがっていて、この道を、廃校へむかってマアくんたちが自転車をとばしていく……この場面が好きです。
───シリーズ各巻冒頭の、化野原団地の絵は、その巨大な感じに圧倒されます。
実は、わたしの父がかつて都市計画の仕事をしていました。大阪万博(1970年の日本万国博覧会)の前後、日本には千里ニュータウンのような巨大団地が次々できたのですが、千里ニュータウンのマスタープランを考えたのは父でした。
なので、化野原団地の具体的な構造については父に相談しながら、わたしが箇条書きにしたものを、編集者さんにまとめてもらって、それを父が図面におこし、父が描いた図面をもとに山村浩二さんが描いてくださったのです。
───だから、まるでどこかに実在する団地みたいに、リアルな絵なのですね!