話題
しばわんこの和の行事えほん

しばわんこの和の行事えほん(白泉社)

お正月、節分、夏祭り...季節に縁のある遊びに触れながら、親子で楽しめる日本の行事をご紹介。

  • 全ページ
  • ためしよみ
絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  谷川俊太郎 さん

《スペシャルコンテンツ》インタビュー

2010.08.02

谷川俊太郎 さん
幻の名作『かずのえほん いくつかな?』

一覧を見る

50笑い声だけで絵本をつくろう!『あっはっは』

ことばのえほん3 あっはっはことばのえほん3 あっはっは

作:谷川 俊太郎
絵:堀内 誠一
出版社:くもん出版

ことばのえほん3 あっはっは いひひ”“うふん”“くすくす”“おほほほほ”の違いがわかるかな?笑いのオノマトペ絵本。いきいきとした絵とともに、イマジネーションがどんどんふくらみます。

─── 3冊目は『あっはっは』。笑い声「あっはっは」ときて「いひひ」・・・子どもでも大人でもそのニュアンスの違いがすぐ伝わるすごくわかりやすい内容ですね。

そうですね。日本語の笑い声の擬音っていうのは、本当に結構おもしろいから。
みみをすます』(福音館書店)という詩集の中で、色々な足音が出てくる箇所があるんだけれど、英訳する時にみんなすごい苦労したんですよね。ローマ字表記にした人もいたくらい。英語の場合は、強く踏むとか、足を高く上げるとか、なんかそういう類の動詞がそのまま擬音語になっていたと思う。音として結びつかない。だからその時に日本語の擬音語っていうのはすごいなと思ったんです。

─── 改めて絵本で見せられると、ああ日本語の笑い声の表現って感情に直結しているんだな、と。

そうそう。日本語の笑い声はほんとうに「ひひひ」って何となくずるいような感じがする。誰が読んでもそういう表情になるよね。それがおもしろいなと思って。笑い声でやろうっていうのは、最初から決めてたんです。

─── そこで堀内さんの絵というのが男の子と女の子の顔の表情だけ!すごく目を惹かれます。ページが進んでいくと共に2人の間の微妙な雰囲気というのが、変化していって・・・。

誇張の仕方がね。並々じゃないんですよね。漫画的なんだけど、漫画ではなくてやっぱりちゃんとアートしてるっていう感じがしますね。
この『あっはっは』『かっきくけっこ』の2つと似ている、合体した様な絵本を少し前に出したんです。中辻悦子さんという前衛の絵描きさんなんですけど、2人の人間が「あいうえお、かきくけこ」で対話する絵本を作ってくれたんですね。(※)それが堀内さんの具体的な絵と全然違うんですよ。それはそれですごく良くて。あいうえお、かきくけこで対話してる感じがよくでてるんですけど。その表現方法の違いも面白いですよね。

※『ふたり』(クレヨンハウス)・・・そっちが「ぎぐぐぐ」なら、こっちは「げ ござざざ」で、どうだ!おつぎはだあれ?いざ、ご対面ですよ。

─── この『あっはっは』の絵は特に線にスピード感があるような気がします。ものすごい速さで出来上がったという話も伺ったのですが・・・。

ほとんどジャズのアドリブみたいに描いてたんじゃないかな。全ての仕事において速いので有名だったんで。その当時も雑誌「anan」(※)を手がけていたでしょ。あれ、全部やっぱり自分で作るわけ。ものすごい速さでやったみたい。もう天才と言うしかない。

※「anan」(マガジンハウス)・・・1970年3月創刊の女性向けファッション雑誌。堀内誠一さんは創刊号〜49号までのアート・ディレクションを担当。
堀内誠一 旅と絵本とデザインと』(平凡社)がおすすめ。堀内さんの全仕事がわかりやすく紹介されています!

38年経ってみて・・・

─── 「ことばのえほん」シリーズを出された当初のまわりの反応は、覚えてらっしゃいますか。

それはあんまり。今のほうがずっとフィードバックがありますよね。それこそネットや何かで。当時はそんなのなくて。我々としては「ことばあそびの会」の仲間と、とにかく音が出る絵本を作ったことで大満足だった記憶があるんですよね。

─── 今38年経って、改めて見て思われるところはありますか?

今だったら、もうちょっと複雑な構成にしていたかもしれないなと思うんだけど。でも、堀内さんが生きてたらやっぱりこれだな。堀内さんって、すごく単純なものがうまい人だから、変に複雑にしない方が絵が生きるような気がするんですよね。絵が雄弁だとテキストは本当に無口ですむんですよ。僕はそのほうが好きなのね。絵本っていうのは絵が主役で、テキストは最小限のほうがいいと思ってるんですよね。
だからこれは当時はまだ異端の絵本ですよね。絵本といえば物語があって、ちょっと教訓があってみたいな時代でしょう。だからこれはよくやれたなと思って、嬉しかったですよね。

谷川 俊太郎さん

美しくて楽しいかずのえほん『いくつかな?』

かずのえほん いくつかな?

かずのえほん いくつかな?
作:谷川 俊太郎
絵:堀内 誠一
出版社:くもん出版

かずのえほん いくつかな? 40年前に堀内誠一が描いた絵本のイラストに、2010年、谷川俊太郎が新たに詩を書き下ろしました。かたつむりがおさんぽしながら1から10まで数える、美しくて楽しいかずのえほんです。

※本書は株式会社フレーベル館より1966年に刊行された『Counting Fun』(堀内誠一・絵)と1969年に刊行された『A Snail goes Counting』(堀内誠一・絵)をレイアウト修正し、新たに谷川俊太郎氏が文章を書き下ろしたものです。

─── そして最新刊『かずのえほん いくつかな?』です。

この作品は今回初めて見たんですけどね。即興的な発想といいますか、すごく堀内さんらしさが出ているという感じがしますよね。楽しそうに描いていて。

この絵本の前身となる1冊目、『Counting Fun』が出たのが‘66年。まさに「anan」出版に向けての準備が始まり、ホリウチは自身の勤める広告制作会社の仕事のほか、絵本児童書関係の挿絵や装丁、季刊誌のアートディレクションなど、今羅列してみても呆れるほどの仕事量でした。つづく2冊目の『A Snail goes Counting』が出たのは’69年。届いたのを初めて見て、あら、かわいいと思ったのを覚えています。どちらも仕事先のデスクで描いたのでしょう。気張らず楽しく、当時のホリウチにとっては息抜きになったのではと思われます。・・・
 (『いくつかな?』堀内誠一夫人である堀内路子さんのあとがきより抜粋)

─── 「すごく忙しい時に息抜きのように描かれた」という言葉がすごく印象的で。

仕事が息抜きになるって、やっぱりすごいですよ。普通ならないんだけどね。 普通こういう数の絵本って、型どおりの絵になりそうじゃないですか。僕も今まで見たこともあるしやったこともあるけど、この絵本は本当に単純に描いてるんだけど、型どおりじゃなくて楽しいんですよね。絵そのものにリズムがあるから言葉もつけやすかったですよね。
英語だとoneは全部oneでしょう。日本語だと犬が出てきたら「いっぴき」となるし、人形だと「いっこ」だし、紙だと「いちまい」でしょう。リズムがなくなっちゃうんですね。oneで始まるリズムががね。だから翻訳って難しいなと思ったりするんだけどね。これはすんなりと。

堀内さんの中には数を教えようなんていう態度は、全然ないんじゃない?だから自分がおもしろいと思うものを数かぞえの中にアイデアとして入れて描くのが楽しいって、それだけですよね。

堀内誠一さんについて

─── 堀内誠一さんってどんな方だったのでしょうか?

堀内さんっていうのは、東京の下町生まれでね。保守的な江戸っ子と言いますか、生活はすごくきちんとした人でしたね。
僕は叱られた事があってね。うちの娘が小学生の頃、いつのまにか「お父さん」って呼ばなくなったんですよ。俊太郎さんって名前で呼ぶようになったのね。周りにいたアメリカから帰って来た家族の影響なんかがあると思うけど、向こうは父親も母親もファーストネームで呼ぶじゃないですか、その話を堀内さんにしたらね、色をなして怒られちゃってね。そんなのよくないと。ちゃんとお父さんと呼ばせなさいと(笑)。この人すごいきちんとしてるなと。

─── 絵を観ているとそういう雰囲気はしないですよね。

全然違うよね。でも、どんな絵でも描ける人だったからね。描けっていえば浮世絵だって描けたんじゃない?

─── 当時、谷川さんにとって堀内さんはどんな存在でしたか?

死んでもらっちゃ困る人だったんですよ、本当に。死なれた時はみんな、どうしようかって言いましたよ。堀内さんはちょっと遠くにいて、しかもすごく知識教養のある人だったからね。本当に尊敬していて、人柄もすごく好きで、とにかく絵は最高っていう感じですよね。
酔っぱらいでさあ(笑)。パリに行った時に、安野光雅さんと3人でレンタカーでノルマンディーの方に旅行したんですよね。割と気の知れた仲間だから、楽しかったんだけど、堀内さんはパリにずっといるくせにフランス語がほとんどしゃべれないんですよ。全部娘さんに任せていたらしくて。車の運転もしないの。彼もヨーロッパじゅういろいろ回ってるんだけど、全部電車とかバスで回ってるらしくて。しょうがないから僕と安野さんが運転するんです。後ろの席で何してるかっていうと、カルバドス(りんご酒)を飲んでるだけなの。だから車の中がどんどんリンゴ臭くなってくるわけ。

谷川 俊太郎さん ─── 一同(笑)。

泊まるホテルもぶっつけでいくわけだけど、彼の趣味が変わってて。いいホテルは嫌なんです。長距離トラックの運転手が泊まるような、そういう安い宿が好きなのね。それで見つけてここに泊まろうって言うわけね。こっちはフランス語ができないから、堀内さんが行って交渉してくれるのかと思ったら、全然飲んでるだけなの。しょうがないから安野さんがおぼつかないフランス語で交渉して(笑)。もうまいっちゃってさ。一応案内してくれるということで、シャルトルという有名なお寺がある所に最後に寄ることになってたんだけど、彼がもう本当にいい加減な道案内人だから、行ったらもう閉まっちゃってたの。入れないんですよ!それでもうしょうがないから、夕方から夜中まで高速走ってパリに帰って来たんだけどね。
本当は腹が立つはずだよね、だけどが腹が立たないんだよね。あれは本当に楽しかったです。

出版社おすすめ



『あっぷっぷのぷ〜』 すずきまみさんインタビュー

谷川俊太郎【たにかわしゅんたろう】

  • 1931年、東京に生まれる。高校卒業後、詩人としてデビュー。1952年に第一詩集『二十億光年の孤独』(創元社)を刊行。以後、詩、絵本、翻訳など幅広く活躍。1975年日本翻訳文化賞、1988年野間児童文芸賞、1993年萩原朔太郎賞を受賞。ほか受賞多数。絵本作品に『ことばあそびうた』(福音館書店)、『マザー・グースのうた』(草思社)、『これはのみのぴこ』(サンリード刊)、『もこもこもこ』(文研出版)、「まり」(クレヨンハウス刊)、「わたし」(福音館書店)、「ことばとかずのえほん」シリーズ(くもん出版)他多数の作品がある。翻訳作品も多数。

堀内誠一【ほりうちせいいち】

  • 1932年東京生まれ。グラフィックデザイナー、絵本作家。主な絵本作品に『くろうまブランキー』『くるまはいくつ』『たろうのおでかけ』『ぐるんぱのようちえん』『こすずめのぼうけん』『ちのはなし』(以上福音館書店)、『おひさまがいっぱい』(童心社)、『かにこちゃん』「ことばとかずのえほん」シリーズ(くもん出版)など多数。また著書に『父の時代 私の時代』(マガジンハウス)、編著書に『絵本の世界・110人のイラストレーター』など。1987年没。


全ページためしよみ
年齢別絵本セット