キツネが葉っぱを頭に乗せて「ばけますよ ばけますよ。ようちえんが ばけますよ」と唱えると…、動物、昆虫、恐竜と、幼稚園の子どもたちや先生の姿が変わって…それどころか幼稚園も変わって…。なんて不思議!でも、それだけじゃないんです。幼稚園の門も変わって、ダルマが出てきて、キンギョが出てきて…。なんて自由!
文章だけではとても伝わらないくらい、ユニークで、ナンセンスで、帯に書かれている「100ぺん読んでもおもしろい!」がまさにそのとおり!と強く頷いてしまう絵本、『ようちえんがばけますよ』(内田麟太郎/文、西村繁男/絵、くもん出版)。
絵を担当された西村繁男さんのお宅にお邪魔して、お話を伺ってきました!
- ようちえんがばけますよ
- 文:内田 麟太郎
- 絵:西村 繁男
- 出版社:くもん出版
「ばけますよ ばけますよ。ようちえんが ばけますよ」
きつねが呪文をとなえると、幼稚園が、次々に姿をかえるこの絵本。姿をかえるのは、幼稚園だけではありません。幼稚園にいた人も、窓も、げたばこも、み〜んな変身してしまいます。
人気作家・内田麟太郎と西村繁男発、めくるのが楽しい、へんてこ変身絵本。
●本邦初! ラフスケッチ公開?!
─── 幼稚園がどんどんいろんなものに変わっていく、その細かさや、どこが変わっているのか、何度もページを行き来して見てしまうのがこの作品の魅力ですよね。
ありがとうございます。
─── 各ページの子どもたちの動きが、とっても細かくて、「あ、この子は次、ここにいった」、「この子はブランコに乗った」と読む回数を重ねるごとに新しい気づきがあるのが子どもたちは大好きだと思うんですが、こんなにたくさんのキャラクターを描き分けるのは大変じゃないですか?
そうですね。でも、僕はもともと客観的に動いている人を描くのが好きなんですよ。僕は「観察絵本」と呼んでいるんですが、『夜行列車』や『おばけでんしゃ』なんかもそういう手法で描きましたから。
絵本を描くときは、まず、一番最初に簡単なラフスケッチを描くんです。『ようちえんがばけますよ』ではそのラフに、「男の子A」「女の子A」「先生1」とか特徴のある子を決めて、その子の動きを決めていきます。例えば、ジャングルジムに登っている子、この子はページを通してずっとここにいるんです。それからいろいろ拾っている子は三輪車で園内を回って、落し物を後ろのかごに入れていく。そういう特徴のある子を先に決めて、後はそれ以外の子どもや先生たちを配置していきます。注意するのは、男の子、女の子がページごとに突然入れ替わったりしないようにすることですね。
─── ダルマや金魚など、最初の「ばけますよばけますよ」のときには変わらないものもありますよね。
そこは最後に残しておいた方が面白いかな…って思ったんですよ(笑)。大人は、突然ダルマや金魚が出てきてびっくりするんだけど、子ども達はそのわけにきっと気づくと思うから。「だから、最初は変わらなかったんだ!」って。
─── びっくりするといえば、突然ページがラフスケッチに変わってしまう大胆さですよね(笑)。
そうだね。僕は担当の編集者に見せるときはいつも本描きに近いラフを見せるんだけど、あの場面は、編集部内でもかなり騒然としたみたいでしたね。「…これ…、このままいくの?」って(笑)。僕もかなりドキドキしたんだけど、子どもたちにはすんなり受け入れられているようで安心しています。
─── 私も息子に読んだんですけど、「どう思うのかな…」と見ていたら、「あ、絵になった!」って言ったんですよ。最初っから絵なのに(笑)。でも、息子の中ではそれまで絵本の中で起こっていたことは現実で、ラフになったら「絵」なんだって気づいたら、なんだか「すごい!」って感動してしまって…。そこまで入り込める絵本っていいなぁ…って。
子どもの中には「色を塗らなきゃ!」って思う子もいるみたいですよ。ぬりえに見えるんだろうね。ぬった絵を送ってきてくれた親御さんもいました(笑)。
─── 西村さんが絵を描くときは、どんな素材を使っているんですか?
大体、2パターンを使い分けて描くんだけど、『ようちえんがばけますよ』は、和紙に墨で描いて、それをパネルに貼って、日本画の絵の具を使って描いていきます。これは絵を描き始めたころから使っている技法ですね。
─── その描き方をされるきっかけはあったんですか?
若いころに上野で絵巻物展を見て、あまりのすごさに「こう描きたい!」と一目惚れ。その日のうちに画材屋さんに飛び込んで、画材を買い揃えました。それからずっと…多少紙の種類を変えたりするけれど、ほとんど同じ技法で描いてます。