南極大陸のまわりの海で、夏の間、泳いでエサをとったり、遊んだりして暮らしているコウテイペンギンたち。
夏が終わると、何百羽ものコウテイペンギンたちが南極大陸へ移動をはじめます。
本書は、つきささるような吹雪の嵐、ブリザードがふきあれる南極大陸の氷原で、コウテイペンギンたちが子育てをする姿を描いた絵本です。
何といってもレナード・ワイスガードの絵の雰囲気が美しく、ファンは必見です。
文章はヨハンナ・ジョンストン。構成作家として長年、子どもたち向けの人気番組を担当していただけあって、ペンギンの子育てをしっかりわかりやすく描写しています。
本書を読むと、可愛いペンギンの姿からは想像もつかないほど、過酷な冬をのりこえて、一組のペアのもとに一羽のヒナが誕生するのだとわかります。
外敵を避けた、氷原での産卵後、お父さんペンギンが何か月間も何も食べずに卵をあたためつづけること。
お母さんペンギンは遠い海で栄養をたくわえ、帰ってきて、孵ったヒナにエサを与えること。代わりにお父さんペンギンが海をめざし、再び栄養をたくわえて帰り、ヒナにえさを与えること…。
冬の終わりが近づくにつれ、去年のヒナが帰ってきて、ついに羽毛がぬけかわり、コウテイペンギンのあかしである金色の羽毛が、首の両側に現れること。
淡々とした文章のなかに、じんわりと感動が浮かび上がり、心の中に広がっていきます。
原書のタイトルは「Penguin’s Way」。直訳すれば、ペンギンのやり方、生き方といえるかもしれません。
コウテイペンギンが、きびしい冬に耐えて卵を孵し、誇り高く生きる姿が伝わってくる絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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