本書は「世界のむかしばなし絵本シリーズ」の1冊。ロシアのむかしばなし絵本です。
金髪で白い衣を着た七人の兄弟は、顔も背丈もそっくりで、名前はみなシメオン。
でもそれぞれ、ちがう「わざ」をもっています。
ある日、王さまが兄弟の畑をとおりかかり、七人それぞれがもつという「わざ」に興味をもちます。
一番上のシメオンは、天まで届く鉄の柱をたてられます。
二番目のシメオンは、その柱にのぼって四方の果てまで見渡せます。
三番目は船のり、四番目は弓名人……と、六番目のシメオンまでは、いかにも役に立ちそうなわざの持ち主です。
でも末っ子は歌って踊り、笛を吹くのが得意。
役に立たないと思われましたが、実は末っ子の腕にかかると、みな踊って踊って、自分の意志ではやめることができないくらい踊ってしまうのです。
さて七人のシメオンは、王さまの命令で、海のむこうの島にいる、うつくしいエレーナ姫をたずねることになります。
それぞれのわざを使い、姫を、王さまのもとへ連れて帰ろうとしますが……。
最初から最後まで、大畑いくのさんが描く、幻想的な色彩に魅了される一冊。
あざやかな緑の農地や、青い海。黄金の宮殿、草原、星空……。
一つ一つの場面のうつくしさが、おはなしの世界をいろどります。
意地悪な司令官は、王さまに何度も嘘の告げ口をしますが、最後は七人のシメオンが力をあわせ、それぞれ幸せな結末にたどりつきます。
むかしばなしならではの時空を超えるおはなしの魅力を、存分に味わってくださいね。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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