しかけを使って昔話を新しくアレンジした、きしらまゆこさんの描く「2WAYおはなし絵本シリーズ」。これまで、「3びきのこぶた」や「おおきなかぶ」、「うさぎとかめ」、「きんのおのとぎんのおの」のおはなしがアレンジされ、楽しいストーリーとなっています。こちらはシリーズの5作目。グリム童話の名作「おおかみと7ひきのこやぎ」がモチーフです。
おかあさんやぎの留守におおかみがやってきて、「あけておくれ、おかあさんですよ」と子やぎたちをだまし、家に入り込むと、子やぎたちを次々と丸飲みにしてしまう……。これが原作のおはなしです。しかけを開かずに読むと、この原作通りのおはなしを楽しむことができます。
しかし、この絵本には右ページをさらに広げるしかけがあります。それをめくってみると、なんと、おおかみにはお兄さんがいて、そのお兄さんおおかみが、弟おおかみに指示をしていた!という新事実が描かれているのです。
おかあさんやぎに似せるため、弟おおかみにガラガラ声をきれいにする食べ物を食べさせたり、手足を白く見せる粉を手渡したりと、なかなか賢いお兄さんおおかみ。でも、肝心な時に居眠りをしてしまったから大変。なんとも間抜けなおおかみ兄弟のドタバタを、ユーモアたっぷりに描いています。
1冊で2度おいしい「2WAYおはなし絵本」。しかけをめくらずに名作を楽しむこともできれば、しかけをめくってサイドストーリーを楽しむこともできるなんて、お得感がありますね。
クスッと笑える展開やかわいらしいユーモラスなイラストは、大人も夢中になってしまうはず。次はどんな昔話がアレンジされるのか、まだまだ続編が楽しみなシリーズです。
(出合聡美 絵本ナビライター)
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