どろぼうって聞くとちょっと怖い? 悪いやつ? それが落語の世界のどろぼうは、悪いことをしているはずなのに、どこか間抜けでヘンテコで憎めないんです。そんな落語の中のどろぼうが絵本になりました。
夜道を、足音を忍ばせて歩くどろぼう2人。「今日から、お前もどろぼうや。しっかり、はたらけ!」と兄貴が声をかけます。弟分は「へえ、わかりました。あーーーにき!」という答え。このとぼけた弟分、何度その言い方をやめろと叱られても「あーーーにき!」と言います(ここで子どもたちは大体ニヤニヤ、クスクス笑い)。
「町内のことは何でも知ってる」という弟分に、兄貴は手頃な家を案内させようとしますが、どうもこの新人どろぼうはズレていて、警察の家に入ろうとしたり、金目のものならぬ金物ばっかりの金物屋を教えたり……。兄貴の怒りに触れるばかり。
あっちもダメこっちもダメと行くうち、とうとうたどり着いたのはメガネ屋さん。中にいた「でっちさん」(働く男の子)はどろぼうがのぞいているとわかって、いたずらを仕掛けます……!
人気上方落語家・桂文我さんによる「まぬけなどろぼうシリーズ」。絵を描いた荒戸里也子さんはデビュー作『おいぬさま』(白泉社)で第7回MOE絵本屋さん大賞新人賞を受賞するなど、愛嬌たっぷりの江戸物絵本に定評があります。小粋な生活小物や衣服など細部まで見飽きません。
とにかく、のんきな弟分と頭から湯気を立てて怒る兄貴の掛け合い、2人の混乱ぶりがおもしろくて笑っちゃいます。学校などでの読み聞かせにもおすすめ。落語の愉快さが味わえるこのシリーズ、今後の作品も楽しみです!
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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