こねこのはなしではないおはなし
- 絵:
- カーソン・エリス
- 訳:
- 石津 ちひろ
- 出版社:
- Gakken
絵本紹介
2023.03.16
最近、泣いた記憶はありますか? 涙は悲しいときだけ出るものではありません。嬉しいときや感動したとき、懐かしい思いと出会ったときなど、感情が大きく揺さぶられたとき、涙が流れます。感情が高ぶって涙が出ると、ストレスホルモンが体外に排出され、デトックス効果やストレスの軽減、副交感神経が優位になることでリラックスした状態になると言われています。
年度末の忙しさに追われて、感情をうまく発散できていないなという大人の方におすすめの泣ける絵本を集めました。今日は泣く準備を整えて、絵本でデトックス効果を体験しませんか?
この書籍を作った人
1953年愛媛県生まれ。早稲田大学文学部仏文科卒業。3年間のフランス滞在を経て、絵本作家、翻訳家として活躍中。『なぞなぞのたび』(フレーベル館)でボローニャ児童図書展絵本賞、『あしたうちにねこがくるの』(講談社)で日本絵本賞、『あしたのあたしはあたらしいあたし』(理論社)で三越左千夫少年詩賞を受賞。訳書に『リサとガスパール』シリーズ(ブロンズ新社)他多数。
みどころ
前作「しってるよ」で、がんばっていた子ぶたのお兄ちゃん。
「いまがいい」では、そのお兄ちゃんのそばにいた妹の赤ちゃんが少し大きくなって、今度は主人公に!
もちろん、お兄ちゃんも少し大きくなっています。
子ぶたの女の子は、好奇心が旺盛で何でもやってみたいお年頃。
お母さんが朝ごはんの用意をしているのを見て、「おてつだいしたい。タマゴわってみたい」と言います。
でも、残念ながら目玉焼きはできちゃったところでした。
「こんどね」というお母さんに、「いまがいい。いまやりたい」という女の子。
朝ごはんを食べ終わった女の子はお父さんとお兄ちゃんと一緒に公園に行きますが、そこでもやりたいことができません。
「もうすこし おおきくなったら」「おとなに なったら」
そんな言葉を言われ続けて、とうとう女の子の気持ちは爆発してしまいます。
いまなの!
いまがいい!
この親子のやり取り、身に覚えがあるお父さん、お母さんも多いのではないでしょうか。私は、覚えがあります。
子どもにとって、やりたいことと同じくらい、「今」というタイミングも大事。そんな真剣な思いを、適当にあしらっていたかもしれないと反省……。絵本を通して第三者の視点で見ることで、当事者だと気づきにくかったことに気づけたのかなと思います。
優しいタッチのぶたさん家族にほんわかしながら、楽しく読んでくださいね。
この書籍を作った人
1965年生まれ。東京都出身。『さるの尾はなぜみじかい』『こおにの くもづくり』で2014年Hearts Art in Saitama-色彩と明暗 -にほんのえほん展で金賞受賞。前記作品に『ある はかせ』を加えた三作品で2015年Hearts Art in TOKYOエイズチャリティー美術展公益社団法人東京都医師会賞受賞。IKEの会所属。
出版社からの内容紹介
100歳になる猫のチビは、鏡の中に現れた鏡の精に、「もうすぐこっちの世界へ来るんだよ」と告げられます。
「ぼくがいなくなったらチョコちゃんが悲しむ! そんなのだめだ!」と、チビは自分のそっくりさんを探すため、オーディションを開催します。目が丸くて、おっぽが長くて、鼻がハートのかたちのチャトラのオス猫・・・
ようやく見つけたチビ2号に、自分の癖や仕草、好物などあらゆることを教えこむと、ついにチビ2号をチョコちゃんの元へ送りだすときがやってきます。
チャトラ猫のチビは、室井滋さんが初めて飼った猫。本書は、そんなチビとの別れをモチーフにして、チビの視点で書かれた物語です。
動物と家族のように暮らす人たちにとって、ペットとの死別はつらい出来事です。でもペットのほうでも同じように別れをつらく感じ、また飼い主のことを思いやっているのです。
姿がなくなっても想い続ける気持ちをちょっぴり切なく、でも室井さんらしく、明るくユーモラスに描いています。
保護猫や老猫の問題にも関心を寄せ、愛してやまない猫たちのために活動されている室井滋さんが、今もっとも心から伝えたい物語です。
この書籍を作った人
富山県生まれ。女優。早稲田大学在学中に『風の歌を聴け』(1981年)でスクリーンデビュー。映画『居酒屋ゆうれい』『のど自慢』『OUT』『ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜』などで映画賞を多数受賞。エッセイストでもあり、著書に『すっぴん魂大全 赤饅頭/白饅頭』(文藝春秋)、『気になり飯 うまうまノート2』(講談社文庫)、『マーキングブルース』(MF文庫ダ・ヴィンチ)などがある。また、ディズニー映画『ファインディング・ニモ』のドリーの吹き替えや、NHKエンタープライズ発行のDVD『なぜ? どうして? がおがおぶーっ!』のリラさんの声で人気。絵本作品に『しげちゃん』(金の星社)がある。
みどころ
「おまけのじかん』は、好きなことができる、ゆっくりな時間。
「ぼく」のおじいちゃんは、「おまけのじかん」を生きているから、ゆっくり遊んでくれる。
いっしょに山に行ったり、海に行ったり、街をお散歩したり。
忙しいママやパパと違って、一緒にゆっくりしてくれる、友だちです。
おじいちゃんの「おまけのじかん」は、おばあちゃんからもらったもの。
病気で亡くなる前に、おばあちゃんは言ったのです。
「おじいちゃんは、おまけのじかんをたのしんで」
主人公「ぼく」の目を通して描かれるおじいちゃんの「おまけのじかん」は、夢の中を見るような明るくカラフルなタッチと、登場人物たちのにっこり温和な笑顔が印象的。
最愛の人に先立たれたおじいちゃんのさみしさとは、一見して相容れないようにも思えるイラストですが、むしろそのコントラストが、おじいちゃんのさみしさをより痛ましく、それでいて温かに描き出しています。
「ぼくはおまけが大好きだけど、おじいちゃんのおまけって、なんだろう?」
おばあちゃんが亡くなってから、少しぼんやりになったおじいちゃんを見て、「ぼく」は考えます。
「ぼくの大好きなおまけは、『もうおしまい』のあとでもらえる、ごほうびみたいなおまけです」
だからきっと、おじいちゃんも楽しんでいるはず!
いつかおばあちゃんと同じ場所に旅立つまで続く、好きなことをするための、この、ゆっくりな時間を──。
ひとり残される夫に送った「おまけのじかんをたのしんで」という言葉。
最期のさよならのときにおばあちゃんが口にした、声にならない「ありがとう」。
そして、そんなふたりを見て「おまけの時間」をうらやましく思う「ぼく」。
やさしくて、あたたかくて、それでもちょっぴり悲しくて──。
いつかきっと訪れる別れが、そしてその後に続く日々が、どれもこんな風だったらなら。
これは、人生を愛おしく思える魔法がかかった、そんな物語です。
この書籍を作った人
1912年アメリカ ニューヨーク生まれ。7歳のときにイギリスに移り住み、ロンドンのウェストミンスター美術学校、王立美術学校で学ぶ。1942年アメリカに帰り、ニューヨーカー誌での活躍をきっかけにさし絵と絵本の仕事に打ち込む。「大きな森の小さな家」「大草原の小さな家」(以上福音館書店刊)などの作品がある。1996年没。
この書籍を作った人
1935年神戸市に生まれる。神戸女学院大学英文学科、慶應義塾大学図書館学科卒業。1961年渡米。ウェスタンミシガン大学大学院で児童図書館学専攻後、ボルチモア市立イーノック・プラット公共図書館に勤務。帰国後、大阪市立中央図書館を経て、自宅で家庭文庫を開き、児童文学の翻訳、創作、研究を続ける。1974年、石井桃子氏らと共に財団法人東京子ども図書館を設立。2015年まで理事長を務めた後、同館名誉理事長。文化功労者。著書に『子どもと本』『えほんのせかい こどものせかい』創作に『なぞなぞのすきな女の子』『とこちゃんはどこ』、翻訳に『しろいうさぎとくろいうさぎ』、「うさこちゃん」・「パディントンの本」シリーズなど多数。