はしのはしたろう
- 作:
- つぼい かなお
- 出版社:
- 日本標準
絵本紹介
2023.04.11
春って忙しい。特に園や学校、仕事と新しい生活が一斉にスタートする4月は、毎日が気忙しく過ぎていく気がします。朝、元気いっぱいに家を出たはずが、帰宅した頃には疲れてへとへと、ぐったりしていたり。張り切りすぎてフル回転、体だけじゃなく、脳もココロも疲れてしまうのかもしれません。
そんな時こそ、絵本の力を借りて乗り切りましょう!
何もしたくない、本も読みたくない時でも、ちょっと気持ちを押してページをめくってみてください。登場人物たちのシュールな表情、テンポいい言葉回し、想像をはるかに超えたはちゃめちゃな展開!気がつけば吹き出してる、笑い出してる、まんまと巻き込まれてる。 ユーモア&ナンセンス絵本、最強です。
入園・入学、進級やクラス替えを迎えた子どもたちもワクワクはもちろん、どこか気も張っている時期ですよね。おうちではとにかくリラックス、そして絵本タイムでいっぱい笑って、明日へのパワーチャージを!この時期出会った一冊は、気持ちが疲れたとき、ちょっと凹んでいるときに力をくれるお守りのような存在になってくれるかもしれませんよ。
みどころ
このちょっと不思議な姿をしているのは、はしのはしたろう。え、はしが主人公!? いったいどんなお話が始まるというのでしょう。
はしたろうが散歩に出かけると、川の向こうでうさぎといのししが困っています。石の上にはかめたちが気持ちよそうに眠っていて、川を渡ることができないのです。そこで、はしたろうが川に入ると、思いっきりのびをします。
「うーーーん」
すると体が少しずつのびていき、向こう岸にかかります。大喜びでうさぎといのししが渡りおわるとまたもとどおり。今度は、道路の真ん中に大きなかば。これではバスが通れません。はしたろうはまたのびをします。さらに海についたはしたろうは、もっと大きなのびをします。
「んぐぐぐー――っ」
すると……?
確かに「はし」って、とても便利。でも、こんな風にのびたりちぢんだり、さらには自らお散歩をするだなんて、想像をしたこともありません。でも、はしたろうを見ていると、なんだかとっても爽快な気分になってくるのです。そして、ちょっぴり真似してみたくもなってきます。うーーん、んぐぐぐ―――っ。
作者つぼいかなおさんの、クスッと笑える絵本デビュー作。トムズボックス土井章史氏プロデュース作品です。
この書籍を作った人
1985年栃木県出身。魚座、AB型。高校生の頃から独学で短編アニメーションを作り始める。東京造形大学アニメーション専攻一期生、同大学大学院卒業。2009年(株)東北新社企画演出部入社。2017年退社。現在はフリーランスの漫画家、イラストレーター、演出家、アニメーション作家。
この書籍を作った人
1989年12月11日生まれ。2014年より、独学で絵本の創作活動に入る。主な刊行書に、『あおいかえる』(文・石井裕也 リトルモア)『タツノオトシゴ』(PHP研究所)『かみをきってよ』(岩崎書店)『きみょうなこうしん』『みずがあった』『もうひとつのせかい』(三部作、現代企画室)『コビトカバ』(PHP研究所)『光と闇と ルフィとエースとサボの物語』(集英社)などがある。
みどころ
自分を勇気づけたり元気になりたいとき、みなさんはどうするでしょうか?ゆっくり寝る、おいしいものを食べる、お笑い番組を見るなど、人によっていろいろありそうですが、実は「おまじない」という、ちょっといい方法があるんです。
「ほっとけ、ほっとけ、ほっとけーきのふとんが ふっとんだー」
このへんてこなおまじないは、ねこがあーちゃんに教えてくれたおまじない。大きな声で唱えれば、恥ずかしいのも、嫌な気分も、心配事も、みーんなどこかへふっとんでしまうのです。あーちゃんのお兄ちゃんが、野球の試合でヒットを打てるか心配しています。ねことあーちゃんはお兄ちゃんにこのおまじないを教えました。
『おばけかぞくのいちにち』(福音館書店)などが大人気の西平あかねさん。本作は、大人も楽しめる、ユーモアあふれる絵童話に仕上がっています。読めばほっこり、元気になれるおはなし。ポジティブな言葉は気持ちを明るくしてくれます。さあ、子どもも大人も、「げんきだしていこう!」ではありませんか。
この書籍を作った人
1968年、東京都生まれ。筑波大学大学院修士課程芸術研究科修了。主な作品に『おばけかぞくのいちにち』『おばけのおつかい』(福音館書店書店)、『ぶんかいきょうだい』(アリス館)、『おはいんなさい』(大日本図書)などがある。長崎県在住。
みどころ
「ただいまー!」
家に帰ってきたのは、ちらかしさんとおかたしさん。二人は一緒に暮らしています。靴をポーンとぬいだあと、歩きながらぼうしやかばんをほうり出し、台所にかけこむちらかしさん。その後ろから全部ひろって片づけていくおかたしさん。そう、二人は正反対なのです。
好きなことにまっしぐら。出したら出しっぱなし、汚れることなんて気にしないし、ちらかっていたってへっちゃら。ちらかしさんが通れば、そこはもうみんなしっちゃかめっちゃか。
一方、おかたしさんはきれい好き。ケーキを食べる時だって、ちらかしさんが出したものを全てしまい、きちんと整頓して、ピカピカに掃除をしてからやっといただきます。
そんな二人が一緒に暮らすことなんて、可能なのでしょうか? ところが、これが実に楽しそう! お互いのことをとがめることもなく、それぞれが好きなように過ごしています。それどころか、お互いを尊敬しあっているようにも見えるのです。
たくさんの絵本を翻訳されているふしみみさをさんの文章に、絵画やデザインなど多くの分野で活躍されているポール・コックスさんの絵の組み合わせ。聞いただけでもワクワクしてくるこの絵本。ちらかしさんとおかたしさん、どちらに感情移入できるでしょう。二人のコンビを見守りながら、おおらかでのびのびした線と、考え抜かれた緻密な構成、どちらもくまなく味わってくださいね。
この書籍を作った人
1970年、埼玉県生まれ。フランス語、英語の児童書を翻訳しながら、ときどきエッセイも書く。主な翻訳に『トラの じゅうたんに なりたかったトラ』(岩波書店)、『どうぶつに ふくを きせては いけません』(朔北社)、『うんちっち』(あすなろ書房)、『わにの なみだは うそなき なみだ』、『ふるい せんろの かたすみで』(ともにロクリン社)など。海外作家との交流も多く、「日本の神話えほん」シリーズ(岩ア書店)では文を担当し、フランスの画家ポール・コックスと共同制作をした。登山と温泉が好き。
文:竹原雅子 編集:木村春子