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- ためしよみ
絵本紹介
2025.05.19
書店で、図書館で、本棚で。特別な理由もなく手にした一冊にときめき、心震わせ、癒されることがあります。絵本の顔ともいえる表紙と目があった瞬間が、運命的な出会い。でも選んだ理由は偶然ではなく、実は自分の心にあるような気がしませんか。
いっぱいのカラフルなシャボン玉の中で、今の気持ちを選ぶならどんな色? 女の子が静かに入っていくのは、もやのかかった目覚めたての朝の森。 広い青空の下、少年とまっすぐに見つめ合う、見たことのない不思議な生きもの。 小さな男の子の胸にぽっかりと空いている穴、そこから舞い飛んでいるのは−−
みずみずしさ、鮮やかさ、静謐さ、コントラスト。さまざまな表紙絵の作品の中には、読み手が自分の心の奥底を見つめ、問いかけるような絵本もあります。 今の気持ちを映す鏡のような絵本の中から、あなたは、お子さんは、どんな一冊を選ぶのでしょうか。大切な一冊との出会いになりますように。
みどころ
色とりどりのシャボン玉が浮かぶ、その中で「いまの きぶんに ちかいいろは どれ?」「おとに したら どんな かんじ?」 とやわらかい言葉と色彩で問いかけます。
「やったー!」ってスキップしたくなるくらい心が動いたことは? くやしい、かなしい。のどの奥がぎゅーっとしたことは? 問われた子どもたちは内心うなずいたり、首をかしげたり、「そうかな……?」と考えたりしながら、不思議な心の中を探ってみるはず。
幼い子は、感情をうまく表現できなくて当たり前。泣いて、怒って、「どうしたの?」とたずねられて……。だんだん表現の仕方を覚えていきます。園や学校でも、言葉にするのが得意な子、なかなか口に出せない子、色々な子がいるでしょう。忙しい大人に遠慮し、どう言ったらいいかわからなくて面倒で不機嫌になっちゃう子もいるかも……。絵本を通じて、心の声に少しでも耳を傾けられたらいいですよね。
本書は、保育士や学校教諭、スクールカウンセラーなど現場の方から“子どもの気持ちを引き出す本”として好評だそう。人気作家えがしらみちこさんのみずみずしい水彩画は、眺めているだけで心がほどけます。えがしらさんは、『ようこそ こどものけんりのほん』(文 子どもの権利・きもちプロジェクト/白泉社)も手がけていますよ。
子どもたちの未来のために、広く存在を知ってほしい一冊です。
この書籍を作った人
絵本作家。1978年 福岡生まれ。静岡県三島市在住。 熊本大学教育学部卒業。主な作品として、『あめふりさんぽ』『さんさんさんぽ』『あきぞらさんぽ』『ゆきみちさんぽ』『はるかぜさんぽ』(講談社 / 全国学校図書館協議会選定図書)、『なきごえバス』(白泉社 / 第9回MOE絵本屋さん大賞2016「パパママ賞」第1位 )『なきごえたくはいびん』、『いろいろおてがみ』(小学館 / 全国学校図書館協議会選定図書)『いろいろおしたく』、『あのね あのね』(あかね書房)、『あなたのことがだいすき』(KADOKAWA)など。『はこちゃん』(文・かんのゆうこ / 講談社)、『せんそうしない』(文・谷川俊太郎 / 講談社)、『おかあさんのいのり』(文・武鹿悦子 / 岩崎書店)、『まだかなまだかな』(文・竹下文子 / ポプラ社)の絵を担当。また、雑誌や教科書などの挿絵も手がけている。現在、静岡県三島市にある絵本専門店「えほんやさん」代表も務めている。
出版社からの内容紹介
女の子は、朝もやが残るころにカゴを持って森へと出かけていきます。
まだ目覚めたばかりの森。クモの巣には宝石のような朝露が光り、鳥たちは遠慮がちにおしゃべりをはじめ、やがてリスたちも枝の上に姿を見せます。目の前にある森は、夜になるといったいどんな様子をしているのでしょう? 鳥たちはどこで眠りについて、リスたちの赤いしっぽはどんな色に見えるのでしょう? いつものベリーを摘むお気に入りの場所で、女の子は目をつぶって夜の森のことを想像しはじめます。咲いているはずの花や、空の上の方に見える月、飛んでいるものたちや、足音を忍ばせて歩くものたちのことを。まだ今は、自分の周りの小さな世界のことしか見ることができないけれど、女の子はまるで森と共鳴しているように、静かで優しい夜の森をありありと思い浮かべることができるのでした。みずみずしい朝の森と、密やかな夜の森が絵本の中に広がります。
この書籍を作った人
1969年東京都生まれ。武蔵野美術大学卒業。『あめふらし』(パロル舎)で2003年BIB(ブラティスラヴァ世界絵本原画展)のグランプリ、『マーシャと白い鳥』(偕成社)で2006年日本絵本賞大賞を受賞。その他、絵本に『十二の月たち』『おふとんのくにのこびとたち』(以上偕成社)『おふろ』(学習研究社)『山のタンタラばあさん』(小学館)『ペンキや』『ワニ』(理論社)『はるさんがきた』『アントリ・ベリーのながいたび』(鈴木出版)『もりのおとぶくろ』(のら書店)、読み物の挿絵に『わたしたちのぼうし』『ルチアさん』(以上フレーベル館)「グリム童話集 上・下」(岩波書店)など多数の作品がある。チェコ・プラハ在住。
出版社からの内容紹介
ひとりぼっちのぼくが出会った不思議ないきもの。ぼくらの夏はいつまでも続くと思ってた…
ある夏のあさ。不思議ないきものがあらわれた。ふわり、そらに舞いあがるきみは、まるでくもみたい。「ともだちになろうよ」ぼくはいった。その日いちにち、いっしょにすごした。それからまいにち、夏の間ずっと。ぼくらの夏は、いつまでも続くと思ってた…。あしたから学校がはじまる。ぼくはひとり、きみとの時間を思い出していた。
ともだちになった、きみとぼく。やがてはなれていくこと、会えなくなることを、まっすぐな子どもの目線でえがく。この絵本を読んだ人がそれぞれに、過去やこれからの「さよなら」に思いを馳せることのできる、切なくもあたたかな物語。
詩的な文章とやわらかな水彩画に、なつかしい夏の景色がよみがえる。ティム・フィッシャー、絵本デビュー作。
出版社からの内容紹介
弟が死んでから、ぼくたち家族には穴がつきまとう。
この穴をどうしたらいいの? 中に何があるの? どうして弟に会えないの?
喪失感に寄り添う〈グリーフケア〉の絵本。
ーーー
〈大切な存在〉がこの世界からいなくなったとき、心に穴があいたような感覚をおぼえることでしょう。だれにでも起こりうる、けれどとても特別で個人的な感覚。その穴のことを忘れたくても、見たくなくても、消し去ることは難しいのではないでしょうか。
この絵本は、そんな辛さを抱えた男の子に寄り添う物語です。黒い穴は日常の中にもつきまといます。だまって話を聞いてくれる人がいて、穴に向き合い本当の気持ちを吐き出せたとき、男の子の中で何かが変わったようです。
悲しみや喪失感に寄り添い手助けをする〈グリーフケア〉という支援がありますが、この絵本はそのようなプロセスをあたたかなイラストとともに描いた物語です。
黒い穴だけでなく、画面のそこここに現れる明るく黄色い光の意味も考えたくなる絵本です。
この書籍を作った人
イラストレーター。ケベック大学でグラフィックデザインを学び、絵本や児童書の分野で活躍。グラフィック・ノベル(小説全編に挿絵をつけた作品)である『ジェーンとキツネとわたし』で、3回目となるカナダ総督文学賞を受賞し、『アンナとわたりどり』(西村書店)で2011年ニューヨーク・タイムズ最優秀絵本賞を受賞するなど、数々の賞にかがやく。キョウ・マクレアーとの共作“Spork”と『きょうは、おおかみ』(きじとら出版)も人気が高い。
この書籍を作った人
翻訳家。英米の絵本・物語を手がける。おもな訳書に『魔女学校の一年生』『まいごのまいごのアルフィーくん』『アンナの赤いオーバー』『ねえ、どれがいい?』『コロちゃんはどこ?』『せかいのひとびと』など多数。
文/竹原雅子
編集/木村春子