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インタビュー

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2012.09.06

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『じっちょりんとおつきさま』 かとうあじゅさんインタビュー

デビュー作『じっちょりんのあるくみち』が大好評のかとうあじゅさん。ひとめ見たときから、「じっちょりん」の小さな愛らしさに魅了されてしまいます。次の絵本『じっちょりんとおつきさま』が出版されることになり、絵本ナビに来てくださったかとうさんに、気になることを質問攻め(笑)。<じっちょりんQ&A>に答えていただきました!(おそらくじっちょりん詳細初公開です)。そして、制作のご苦労や今後についてもお話をうかがいました。

  • じっちょりんとおつきさま

    みどころ

    小さないきものじっちょりん。人知れずアスファルトの隙間や電信柱の根元に野の花の種を植えて歩く彼らの姿を絵本で見て、すっかりとりこになってしまった人も多いはず。
    今度は秋のじっちょりん達に会えますよ!

    おつきみの日。空き地の隅で、小さなじっちょりんの家族が朝ごはんの準備をしています。
    前作に登場する場所と違う?そう、じっちょりん達は移動をしながらその日に寝る場所が決まるのです。でも、ちゃんと居心地のいい家になっているのがさすが。早速心をくすぐられてしまいます。土と石でつくったイスとテーブル、台所、天蓋つきの素敵なベッド、葉っぱで作ったすべり台まで!更に朝ごはんは葉っぱのお茶碗で「いただきます」・・・最初の一場面から夢中になってばかりいては次に進みませんね(笑)。
    どうやら今夜のおつきみに向けて「おたのしみの実」というものを作るらしいじっちょりん一家は、材料を集めるために出発します。秋の草花で彩られた公園には宝物がたくさん落ちています。じっちょりん達はここで器用に何か素敵なものを作り上げていくのです。
    さて、暗くなってきて虫の音が聞こえる頃。いよいよおつきみの行われる池の近くに向かうと、そこにはなんと・・・!?
    すごくワクワクする「おつきみ」の様子は絵本で楽しんでくださいね。ため息が出るような美しい場面もありますよ。秋の七草や虫の名前も覚えることができるのもポイント!

    ところで「じっちょりん」ってなんなの?どんな生物なの?実際にいるの?
    まぁまぁ。いっぺんにその正体がわかっちゃっても面白くないじゃないですか。ほーんの少しずつ全貌が見えてくる(?)、そんな感じを味わいながら楽しむのが正解!続刊の楽しみも増すってもんですよね。

  • じっちょりんのあるくみち

    みどころ

    なんだかすごくおもしろい絵本を見つけてしまいました。
    なんたって最初の場面で主人公達は見つけることのできない位の小ささで登場するのです。
    その主人公とは団地のすみに住んでいる「じっちょりん」の家族です。じっちょりんは花びらや葉っぱを食べるけど、種だけは食べないでとっておきます。なんと、コンクリートの隙間や電信柱の根本などにせっせと植えに行くのです!ああ、散歩の途中、あんなところに、こんなところにそっと咲いていた雑草を楽しめるのはじっちょりんのおかげだったのですね。
    作者のかとうあじゅさんはこの作品がデビュー作なのだそうですが、ユーモラスなじっちょりん一家の可愛らしさと、あっと驚くスケール感、そして愛にあふれた植物描写などなどに、すでにじっちょりんワールドのとりことなってしまいました。今度のお散歩は細かく細かく色んなところを覗いてしまうに違いありません。

「じっちょりん」シリーズ

この書籍を作った人

かとう あじゅ

かとう あじゅ (かとうあじゅ)

東京生まれ。幼いころの絵本が好きな気持ちのまま現在に至る。絵本ワークショップ「あとさき塾」出身。作品に「ただ よんだだけ」「なかよしスタンプがたまったら」(おはなしプーカ・学研)がある。「じっちょりん」シリーズは、『じっちょりんのあるくみち』、『じっちょりんのなつのいちにち』、『じっちょりんとおつきさま』、『じっちょりんのふゆのみち』(全て文溪堂)がある。

Q1:「じっちょりん」って何モノですか?

A1:人間みたいな虫みたいな…ちっちゃい生きものです。

Q2:何を食べるんですか?

A2:たね以外の植物です。葉っぱやお花を食べたり、花粉や花の蜜をお料理したりします。たねだけは食べずに「たねかばん」にしまっておきます。

Q3:「たねかばん」って何ですか?

A3:どんぐりの殻斗(ぼうし)でできたかばんです。じっちょりん家族はそこに、たねを集めておくのです。集めたたねをどうするかは絵本を見てくださいね。

Q4:服を着て、パパじっちょりんとおにいちゃんじっちょりんは帽子をかぶっているみたい?

A4:服ではなくて、体の色やもようです。パパじっちょりんとおにいちゃんじっちょりんの頭の部分は縞縞の線が入ったもよう。ママじっちょりんといもうとじっちょりんの頭はふわふわの毛ではなく、てんとう虫の背中みたいにさわるとコツコツして黒くてかたいんですよ。

Q5:頭のツノみたいなものは?

A5:虫の触覚と同じようなものです。音が聞こえてくる方向をむいて、音をキャッチしたりするんです。

Q6:足はどうなってるの?

A6:顕微鏡でよーく見ると、先っぽが小さくとがって虫の足のようになっているのが見えるかも。地面やマンホールの溝を歩いたり、壁や階段や草花…いろんなところを上手によじのぼります。

Q7:いつもはどんなことをしてるの?

A7:遊ぶことと物を作ることが大好きです。4本の指で器用に作ります。たねかばんを背負って自由に移動し、たねを集めながら暮らすのによさそうな新しい場所を見つけると、葉っぱや土や人間が落としたもので、上手に住まいを作るんですよ。すべり台やブランコも作って遊びますよ。

「じっちょりん」が生まれたきっかけ

─── 『じっちょりんのあるくみち』デビュー作がいきなり大好評ですよね。絵本ナビでも熱いレビューが届いています!

ありがとうございます。書いているときはもう必死で、次の本が出せるなんて思わなかったですし、じっちょりんを世に送り出すために何度もラフを作っていた1年間は、途中で自分でもわけがわからなくなったくらいです。

─── かとうさんが以前、絵本ナビに寄せてくださったメッセージが印象的だったんです。

「じっちょりんの目の前にはきっと道はないけれど、
自分達でつくった道を進んで生きていきます。
制作中に何度も壁にぶつかったりもしましたが、
最後まで完成する事ができたのは、
そんなじっちょりんの存在を尊敬していたからだと思います」

「存在を尊敬している」ってすごいなと思いました。たしかに、小さいのに不思議な存在感とパワーがある。『じっちょりんのあるくみち』を読んだあと、いままで素通りしていたコンクリートの隙間や、壁と地面の間から生えている草花が気になってしょうがなくて。お散歩のしかたが変わっちゃいました(笑)。じっちょりんはどんなふうにして生まれたんですか?

朝、歯みがきをしているときに、頭にふわーっと浮かんだんです。
人間が知らないところで、ちっちゃーな生き物が、人間みたいな生活をしていたらおもしろいだろうなー、と。朝起きてから、日が暮れて眠るまでのお話にしたいなと。
最初は「じっちょりん語」を話していたり「じっちょりん村」の設定を考えてみたり(笑)。何度も場面を考えなおして、最終的にいまの「じっちょりん家族」が「たねかばん」を背負って道を歩いていくお話になりました。

小さなじっちょりんの目線で、どんな場面がおもしろいかなと、あれこれ考えたそう。
ジュースの自動販売機の下で「うーん、よくねた」と朝起きた場面の試作スケッチ
「じっちょりん村」(!)の試作スケッチ
じっちょりんがどんなところに種をまいているか…

─── 「自然観察絵本」とレビューに書いた方もいるくらい、私たちの身の回りでよく見かける草花がたくさん描かれていますよね。

ラフ制作中は実在の植物じゃない絵を描いたこともあったのですが、だんだん実在の植物に変わっていきました。雑草と呼ばれるような草花、たとえば「かたばみ」「へびいちご」「おおいぬのふぐり」「ながみひなげし」の名前を入れるアイデアも途中から、やっぱり絵だけでなく草花の名前を入れたらいいかな、と加えていきました。

─── このページが素敵!ステップコーナーの下の、穴があいて光が当たっているところに「はこべ」が生えていて、暗いところは石ころやじゃりで生えていない。光と影や、奥行があって。そんななかをじっちょりん家族が歩いていくんですよね。

ターニングポイントになった思い入れのある絵です。最初はなかったページでした。自分でも、こんなふうにじっちょりんの目線になった絵が描けると思っていなかったんです。

「あとさき塾」という絵本制作ワークショップに通ってラフ制作を重ねていたのですが、あるとき、ワークショップを主宰されている土井さんに、自分が描ける絵にあわせてお話を作るのではなく、お話の世界にあわせて絵を描くんだよと言われました。本当にそのとおりだなと思いました。「いま、自分にその絵が描けるかどうか」で、絵本の絵を決めてはいけない。挑戦しようと思いました。

当時は派遣社員として仕事をしていたので、通勤の行き帰りの道や、おもしろそうな道を探して歩いてたくさん写真をとったり、この場面と同じステップコーナーの下を「どうなっているのかな?」と横からのぞきこんだりしました。実際はいろいろなものが落ちていたりして、ほとんど想像で描きあげたんですけれど(笑)。

この絵を描きあげたとき、ああ、私にも絵本の絵が描けた、と感慨深かったです。

スポットがあたらないようなものに光をあてたい

─── 絵を描きながらどんなことを考えているんですか?

以前は平面的な感じというか…イラストのような感じの絵をたくさん描いていました。でも絵本の絵はもっと立体的だし、子どもたちがよくわかってそのお話の世界に入りこめるような、空間が感じられる絵が描きたい。じっちょりんの本なら、じっちょりんがそばにいるように感じる空気のようなものを描きたいと思っていました。

線はロットリングという製図用ペン、線以外は色鉛筆、空などの大きな空間はアクリル絵の具など使用する画材を工夫しています。じっちょりんはとても小さいので、細い針のような筆で細かいところは描いたりしています。

「じっちょりん」が生まれたのは、私自身が小さい頃から絵本がすごく好きだったこと、スポットがあたらないようなものに光をあてたいという思いからでした。じっちょりんのような存在もそうですし、じっちょりんのあるく道に出てくる草花もそうです。

はじめての単行本絵本だったので、制作過程で、自分でも確信がもてないままに、いっぱいそぎ落とした部分がありました。これで本当に伝わるかなと不安もありました。でも出来上がってみなさんのレビューを見ると、そぎ落としたのに、私が伝えたかったことがちゃんと伝わったんだ、と感動しています。

─── どんな絵本が好きだったんですか?

『おおきなおおきなおいも』(赤羽末吉・作絵)は大好きで何度も読みました。自分で声に出して読んで、カセットテープに吹き込んだものが残っているくらい。影響を受けた一冊だと思います。あと『からすのパンやさん』(加古里子・作絵)も好きでした。

『ぶたぶたくんのおかいもの』(土方久功・作絵)は、見返しにぶたぶたくんの歩いた地図が載っているのが、単純な地図だけど子ども心にわくわくして…。

『じっちょりんのあるくみち』に、じっちょりんたちが歩いた地図(ルート)の絵を入れようというのは、描きあがった最後に思いついたアイデアなんです。出てきた場面がぜんぶ入りこむような道を成り立たせないといけないので大変だったんですけど、ぜひ入れたいと思ってがんばりました(笑)。

─── そんなご苦労があったとは(笑)。たしかに地図はわくわくします。大冒険!と思って最後に地図を見るととても愛らしい…短い距離。『じっちょりんとおつきさま』にも地図は出てきますか?

はい、最後に出てきます。よーく見てみると、『じっちょりんのあるくみち』と『じっちょりんとおつきさま』は地図がつながるんですよ。見てみてくださいね。

─── 「はまっています!」という読者の声も多いハート探しはどうですか。『じっちょりんとおつきさま』にも登場しますか?

はい、ありますよ。最初は、ちょっとした遊び心で思いついて、葉っぱにハートを入れてみたんですけど、子どもたちはすぐ見つけてしまうんですね。びっくりしました。答えを本のどこにも書いていないので、不親切かな〜と心配しましたが、楽しんでいただけてうれしいです(笑)。

「前作よりもおもしろく」二作目ならではの苦労

─── 『じっちょりんとおつきさま』では、月のきれいな夜を、じっちょりんたちが楽しそうに過ごしていて、前作と違って夜の絵が魅力的な本になりましたね。じっちょりんたちのお月見ってどんなことをするんだろう?と気になります(笑)。新作を書くにあたり、苦労したところはありますか?

『じっちょりんのあるくみち』に比べて、ラフはスムーズにすーっとできました。でも大変さがまた違うというか…前作は必死に仕上げましたが、今度は読んでくださる方々を裏切ってはいけない、最初のほうがおもしろかったなーと残念に思われたらさみしいので、そう思われないように、というプレッシャーがありました。

今回はラフ(鉛筆で描いただけで、色はつけていない状態での)はすぐできたんですけど、いざ色を塗るとなると、本当にこの絵に色がつけられるだろうか、イメージどおりの世界が色で表現できるだろうかと不安になりました。

おつきみだいのうえで、色とりどりの「おたのしみのみ」やごちそうが素敵に見えるように、月あかりの光が感じられるように、一所懸命彩色しました。パパじっちょりんたちがすすきの穂先で編んだおつきみだいも、絵に描く前に毛羽のあるモール糸を使って模型を編んでみたんですよ。でも規則的には編めないことがわかって、絵本のなかの編み方も不規則です(笑)。

こんなハンモックに揺られながらお月見のおだんごを食べてみたいですよね。でもおだんごの串が刺さると危ないので、子どもたちはマネしないでくださいね。

─── ママじっちょりんたちが作ったおだんご、本当においしそうですよね!今後もじっちょりんのおはなしはひろがっていきますか?じっちょりんの仲間たちの存在も気になります(笑)。

いまは夏の草花の取材メモをいっぱい書きためていて、夏のお話も書きたいなと思っています。最初が春、次は秋。こんど夏が書けたら、冬のお話も書いてみたいですね。
アイデアはちょこちょこ頭の引き出しにためていますけど、まだ具体的にはなっていません。なので、どんなお話になるかはお楽しみです(笑)。
『じっちょりんとおつきさま』の制作中は、もう派遣社員のお仕事もやめていたので、毎日少しずつ「ここまで」と決めて絵を描きすすめました。こんなに絵を描くことと向き合ったことはなかったです。
「じっちょりん」が頭のなかでうまれてから、ずっと、じっちょりんたちがすぐそばにいるような感覚で暮らしています。みなさんにもそう思っていただけるような絵本をこれからも描けたらいいなと思っています。

─── 楽しみにしています。ありがとうございました。

【取材を終えて】

じっちょりんのキャラクター同様、とってもキュートで愛らしい雰囲気のかとうあじゅさん。小さい頃はお母さんに絵本を読んでもらうのが大好きだったそうです。アウトドア好きのお父さんに連れられて、家族でよくバーベキューやキャンプに出かけたそう。もしかしたらそんな体験が、じっちょりんワールドが生まれる源になったのかもしれません。
ちなみに『じっちょりんとおつきさま』の中には「秋の七草」が出てくるそうですよ。全部見つかるかな?探してみてくださいね!

編集協力:大和田 佳世

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