2005年に刊行された『被爆者 60年目のことば』から10年―。前回インタビューした被爆者の方のその後の10年を伝えるとともに、この10年の間に起きた福島での原発事故による放射線問題についても言及する『続・被爆者 70 年目の出会い』。報道カメラマン会田法行さんによる写真絵本です。
広島・長崎に原爆が投下されてから今年で70年。前作で登場された、13歳の時に被爆して以来、原爆ドームの絵を命をかけて描き続けているという原廣司さん。そのドームの絵はこの10年で1500枚から3000枚を超えるまでとなり、だいぶ足腰が弱くなった今もなお、原爆ドームと向き合う毎日を過ごされています。また24歳の時に原子爆弾で全身にやけどを負い、苦しい人生を送りながらも核兵器の廃絶を訴え続けてきたという片岡津代さん。おしゃべり好きのとても素敵なおばあちゃんという印象があった片岡さんは、想像以上に老いが進み、今回会田さんが訪れた際には話をすることができず、ただ手をにぎり目を見つめるだけの状態となっていました。さらに本書では、福島で起きた原発事故の後、全村避難が決まった飯館村から避難中の佐藤さん一家7人の暮らしについても詳しく紹介されています。飯館村に帰るのか帰らないのか今も答えの出ない葛藤の思いが伝わってきます。
原爆から70年たった今、それぞれのやり方でその苦しい体験と平和への思いを強い意志で語り継いでいる被爆体験者の方々。本を開くまでは辛いことばかりを想像してしまいますが、本書では若い人に平和のバトンをつなぐ、明るい希望も見ることができます。それは広島市の高校が始めた、被爆者の記憶に残る光景を「原爆の絵」として残すというプロジェクト。被爆者と高校生がいっしょになって絵を描くことによって、被爆体験を若い世代へと継承していく試みです。
「核兵器がなくなってほしいという想いや、平和を想う気持ちは、憎しみを超越するのです」
「たとえ世の中から戦争がなくならなくとも、核兵器がなくならなくとも、私たち被爆者はあきらめるわけにはいかないのです」
という被爆者の方の言葉を、本を手にした私たちはどれぐらい自分の中に落とし込んで考えることができるでしょうか。また、被爆者の方々の深みある表情からどれだけのことを想像し、感じとることができるのでしょうか。
『被爆者 60年目のことば』と合わせて、世代を問わず多くの人に手にとってほしい1冊です。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
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