満月の夜、ちいさな魔女と、そのおかあさんのおおきな魔女は、北の国のくろい森をめざして飛んでいました。
くろい森は病気で、魔女が来るのを待っているのです。
森におりたつと、そこにはウサギにリスに、野ネズミ、イタチ、キツネ……森の住人たちが集まっています。
彼らが心配そうに見守るなか、おおきな魔女は、「森のくすり」を作りはじめます。
呪文をとなえ、なべをかきまぜつづけ、そうしてできた「くすり」を、毎日、木の根元にかけてまわるおおきな魔女。
けれども、なかなか元気にならない森に、ちいさな魔女は不安な顔をします。
「かあさん、森のびょうきはなおる?」
おおきな魔女はこたえます。
「だいじょうぶ。ゆっくりよくなるの」
そんなある日、南の国の森も病気になったという知らせがきます……。
石井睦美さんの文は、どこか「メデタシ メデタシ」とならない雰囲気を漂わせ、読者を引きつけます。
岡田千晶さんは、ふしぎな力がはたらいて何かが起こりそうな暗闇の空気と、母娘の表情をゆたかに描きます。親子らしい顔と、呪文を唱えるときのちょっとこわい魔女の横顔を。
必死で呪文を唱えるちいさな魔女が、次第に魔女らしい顔つきになっていく場面は見ごたえあり!
結末はわからない。だからこそ、くろい森の魔女のこれからが気になります。
ぜひちいさな魔女になった気持ちで読んでみてくださいね。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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