ある日、おじいちゃんのうちに、おきゃくさまがやってきました。
ほわほわ白くて小さくて、とても可愛いおきゃくさまです。
なんだか、ぼんやり透けてるみたい?
「とうとう来たね、まってたんだよ!」
おじいちゃんは、大喜びで迎えます。
このおきゃくさまが たずねてきたら、たびのしたくを しないとね。
おきゃくさまは、お金も服も必要ないと言いますが、おじいちゃんは、あれもこれもと旅の支度をします。
「むこうについたら おくさんが むかえに来てくれますよ」
そんな言葉にいそいそおめかししたりして。
そして次の朝、支度の整ったおじいちゃんとおきゃくさまは出発します。
雲ひとつない、旅に出るのにぴったりのいいお天気……。
これは、死を描いた物語。
けれども、なんて軽やかなのでしょう。
おじいちゃんの表情、言葉は、私たちを心穏やかに、安心させてくれます。
さみしくも悲しくもありません。
だって、向こうで大好きな人たちに会えるんですから。
誰にも訪れるその日を、幸せな「旅」として描いた、韓国発の絵本。
主人公のおじいちゃんも、旅のおともの「おきゃくさま」も、何ともチャーミング。
ところどころに韓国のお国柄が伺えるのも味わい深いです。
満開の桜に見送られるおじいちゃん。
こんな風に旅立ちの日を迎えられたらいいなあと、思わずにはいられません。
ラストでは涙がこぼれてしまうのですが、胸にはきっとあたたかなものが残ります。
子どもたちに肯定的に死を伝えられる絵本であり、大人の心も慰め支えてくれるような、
いろいろな年齢の人に手に取ってほしい一冊です。
(掛川晶子 絵本ナビ編集部)
続きを読む