食べるとばける、ばけたくんは、ふんわりキュートなおばけの子。
大人気シリーズ9作目は夜のお出かけから始まります。
友だちのいったんもめんの「たんたん」と「かさじろう」とお月見に出かけた、ばけたくん。
まんままるのきれいなお月さまを眺めながら丘の上まで来ると、雲がもくもくわいてきて、ぽつぽつ雨まで降り始めました。
せっかく来たのに、残念!
でもそこは、食いしん坊のばけたくん。
「あまやどり しながら、おべんとう たべようよ」と焼き芋を食べると、おなじみの焦げ焦げの焼き芋にまるごと変身です。
そのとき「ピカッ ゴロゴロ―!」大きな音がして、「どっすーん!」。
落ちてきたのは、かみなりの子!?
「かみなりちゃん、だいじょうぶ?」と聞いても最初は泣くばかりだったかみなりちゃんでしたが、ばけたくんたちが、お空の上へ戻してあげようと奮闘するうちに元気になってきて……。
さあ、かみなりちゃんは無事に帰れるのかな?
みどころは、やっぱり、食べてばかりのばけたくん。
食べながら雨宿り、食べながら作戦会議。その変身ぶりが相変わらずおいしそうなんです。
2009年にシリーズ1作目『ばけばけばけばけ ばけたくん』誕生以来、愛されてきた、ばけたくん。
作者の岩田明子さんにとってのデビュー作で、当初はシリーズ化の予定はなかったそう。
ところが、もともとは息子さんへ寝る前の物語として語っていた中のキャラクター、ばけたくんの生き生きとしたかわいらしさ、「ばけばけばけばけ……」と舌をかみそうなナンセンスなおもしろさで、瞬く間に子どもたちの心をつかみました。
初期のシンプルな展開の作品から、絵探しが楽しめるもの、物語色の鮮やかな作品までシリーズにはいろいろありますが、食べたいものに素直なばけたくんの存在感は変わりません。
シリーズを追うごとに、家族や友だちが出てきて、ばけたくんのことをますます知りたくなっちゃいます!
どの絵本から読んでも楽しめますが、今作はおばけらしい夜の散歩と、新しい友だちとの出会い、あたたかい読後感が、はじめてばけたくんに会うお子さんにもおすすめです。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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