マドレーヌさん

ママ・30代・兵庫県、男の子8歳

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マドレーヌさんさんの声

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なかなかよいと思う 誰の心にも   投稿日:2025/10/06
ジェーンとキツネとわたし
ジェーンとキツネとわたし 文: ファニー・ブリット
絵: イザベル・アルスノー
訳: 河野 万里子

出版社: 西村書店
居場所のない現実世界と、本の中の「ジェーン・エア」の世界。少女エレーヌにとって、読書は趣味ではなく、心を閉ざして自分を守るための、切実な「戦術」でした。

本作がグラフィック・ノベルという形式をとる意味は、ページをめくるほどに伝わってきます。現実と物語の境界が溶け合うような美しい描線が、言葉以上にエレーヌの繊細な心の揺らぎを、痛いほど雄弁に物語るのです。

孤独の頂点であったはずの合宿での、一匹のキツネとの静かな出会い。それは全てを解決する魔法ではありません。しかし、固く閉ざされた彼女の世界に差し込んだ、一条の確かな光でした。

言葉のないラストシーンが映し出す風景の色彩は、エレーヌの未来そのもののように感じられます。辛い時間を過ごす全ての人の心に、物語という名の灯火をそっと灯してくれる。静かで、深く、そして限りなく優しい傑作です。
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自信を持っておすすめしたい 一家に一冊   投稿日:2025/10/06
まなぶ
まなぶ 文・写真: 長倉 洋海
出版社: アリス館
テストの点数、クラスでの立ち位置。あまりにも身近な学校という世界の物差しだけで、私たちは日々の価値を測ってしまいがちです。この本は、そんな凝り固まった日常に、静かに、しかし力強く揺さぶりをかけてきます。

写真家・長倉洋海のレンズが映し出すのは、世界各地の多様な「まなび」の風景です。灼熱の太陽の下にある青空教室、道具も揃わない中で探求心に輝く瞳。そこには、私たちが忘れかけていた学習の根源的な喜びと切実さが満ちています。

そもそも「まなぶ」とは何なのか。整備された校舎で机に向かうことだけが、その全てなのだろうか。一枚一枚の写真が、当たり前だと思っていた私たちの前提を、根底から問い直してくるのです。

答えを教えてくれる本ではありません。しかし、読み終えた後、自分のいる世界の小ささと、学ぶことの普遍的な尊さを同時に突きつけられます。日々の風景が少し違って見えるようになる、そんな視野の広がりを与えてくれる一冊です。
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なかなかよいと思う わたしだけではない   投稿日:2025/10/06
ひみつのビクビク
ひみつのビクビク 作: フランチェスカ・サンナ
訳: なかがわ ちひろ

出版社: あかつき教育図書
誰もが心の中に抱える、言葉にならないもやもやとした不安。この絵本は、その正体不明の感情に「ビクビク」という愛らしい名前と姿を与えてくれます。それだけで、少しだけ自分の心と向き合える勇気が湧いてくるようでした。

私を守ってくれるはずの小さな友達が、環境の変化によって自分を閉じ込める巨大な存在に変わってしまう。この巧みな描写は、不安という感情が持つ二面性を見事に捉えており、胸に迫ります。

孤独のどん底で出会った男の子。彼にもまた、寄り添う「ビクビク」がいる。その発見の瞬間に、世界の見え方が変わります。「私だけじゃなかったんだ」という静かな安堵が、頑なだった心をゆっくりと溶かしていくのです。

これは、不安を消し去るための本ではありません。自分の弱さや臆病さと共に生き、他者の痛みに寄り添うことを教えてくれる本です。心に「ビクビク」を飼う全ての子どもと、かつて子どもだった大人へ贈られる、優しい処方箋のような一冊です。
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なかなかよいと思う あべ弘士さんの世界   投稿日:2025/10/06
クマと少年
クマと少年 作: あべ 弘士
出版社: ブロンズ新社
同じ母の乳を飲み、兄弟として育ったアイヌの少年と仔グマのキムルン。その絆は、友情という言葉では表しきれないほど、魂の深い場所で結ばれていました。

しかし、彼らの世界では、クマは最高の神「キムンカムイ」。愛しい兄弟は、やがて天上の神々の世界へ送り返さねばならない、尊い存在でもありました。

慈しみ育てた神を、自らの手で天へ還す儀式「イオマンテ」。成長した少年が、愛する兄弟に矢を放たねばならない宿命の重さに、胸が締め付けられます。これは、自然への畏敬と共に生きたアイヌ民族の、壮絶で美しい祈りの物語です。

旭川で生まれ育ったあべ弘士氏だからこそ描ける、北の大地の魂。単なる伝説の紹介ではなく、その地に生きる者の視点から、命の循環という厳しくも崇高な理(ことわり)を、静かに、そして真摯に伝えてくれる一冊です。
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自信を持っておすすめしたい 若冲の絵を子どもと   投稿日:2025/09/23
若冲の絵本 み〜つけた! 小学館あーとぶっく(16)
若冲の絵本 み〜つけた! 小学館あーとぶっく(16) 作: 結城 昌子
出版社: 小学館
相国寺の美術館で出会った、伊藤若冲が描く圧倒的な生命感。いつかこの感動を我が子と分かち合いたいと願いつつも、その世界の深遠さに「まだ早いだろう」と、どこかで諦めていました。

そんな時、この絵本の存在を思い出しました。本書は、国宝「動植綵絵」を、生き物たちの壮大なかくれんぼの舞台として見立てます。この素晴らしい発想の転換が、私の躊躇いを吹き飛ばしてくれました。

親子でページをめくりながら「ニワトリ!」「トンボはここにいた!」と声を上げました。緻密に描かれた命の数々を、子供は遊びとして発見し、私はその画力に改めて感嘆する。同じ絵を前に、親子がそれぞれの視点で楽しみを共有できました。

専門的な解説書ではなく、アートとの「遊び」を提案してくれる本書は、大人の感動を子供の喜びに繋ぐ、架け橋となってくれました。
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なかなかよいと思う 命ある生き物として   投稿日:2025/09/23
たべることはつながること
たべることはつながること 作: パトリシア・ローバー
絵: ホリー・ケラー
訳: くらた たかし ほそや あおい

出版社: 福音館書店
まるで、かこさとしさんの科学絵本を読んでいるかのような、丁寧で優しい語り口にまず安心感を覚えました。食物連鎖という複雑なテーマを、子供たちの日常にある「食事」から解き明かしていく導入が見事です。

特に、タカの体内に鳥が、その中に虫が、さらにその中に葉が描かれる断面図には感嘆しました。「タカにも葉っぱが必要」という、一見すると繋がりのないもの同士の関係性を、一枚の絵で直感的に理解させてくれます。

ただ、その連鎖が頂点の捕食者で終わってしまう点には、少し物足りなさを感じました。命が土に還り、新たな養分となる「循環」の視点まで描かれていれば、より生態系の本質に迫れたかもしれません。

とはいえ、人間によるラッコの乱獲が生態系を崩したケルプの話は、非常に説得力のある実例です。私たちの行動が自然界に与える影響を、幼い読者にも分かりやすく伝えてくれます。

一部に科学的な補足は必要かもしれませんが、それを差し引いても、子供の思考力を育む優れた一冊です。親子で対話し、学びを深めるための「考える絵本」として、素晴らしい役割を果たしてくれるでしょう。
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なかなかよいと思う アメリカ版「窓際のトットちゃん」   投稿日:2025/09/23
がらくた学級の奇跡
がらくた学級の奇跡 作: パトリシア・ポラッコ
訳: 入江 真佐子

出版社: 小峰書店
読み終えた時、これはアメリカ版の「窓ぎわのトットちゃん」だと感じました。学校という社会の片隅に置かれた子供たちを、一人の教師の眼差しが救い出す、作者自身の体験に基づいた感動的な物語です。

「がらくた学級」とレッテルを貼られた子供たち。型破りなピーターソン先生は、彼らの中に眠る才能の原石を見抜き、本物のがらくたから飛行機を創り上げるという壮大な夢を与えます。誰にも期待されなかった子供たちが、一つの目標に向かって輝き始める姿に胸が熱くなりました。

生徒たちが後に各分野で大成したという事実は、私たちに大きな希望を与えてくれます。しかし同時に、現代においてもなお、子供たちが同じような環境に置かれている現実を思うと、胸が締め付けられます。

この物語は、単なる絵本の枠には収まりません。子供一人ひとりの個性をどう見つめ、その可能性をいかに引き出すか。教育に携わる全ての人に、その重く、そして尊い問いを投げかける必読の書です。姉妹編の「ありがとう、フォルカー先生」と併せて読んでみようと思います。
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なかなかよいと思う 命を後世に残す力強さ   投稿日:2025/09/21
オオサンショウウオ
オオサンショウウオ 写真: 福田 幸広
文: ゆうき えつこ

出版社: そうえん社
「オオサンショウウオ」の産卵から子育てまでを追った、世界初の写真絵本を読みました。謎に包まれた生態の中でも、特にオスが子育てをすることに驚きました。

良い巣を探して長い距離を旅し、他のオスと闘って巣を守り抜く。そして夏の終わりから春先まで、飲まず食わずで卵と子供たちを見守り続けるお父さんの姿に、命を後世に残すことの力強さを感じ、胸を打たれました。

息子も「お父さんが赤ちゃんを育てるんだね」と感心していました。動物の世界の多様性と、父親の深い愛情を学べる貴重な一冊です。生命の神秘と家族の絆について、親子で話す良いきっかけになりました。
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自信を持っておすすめしたい あの風景をもう一度   投稿日:2025/09/21
干し柿
干し柿 文・写真: 西村 豊
出版社: あかね書房
ページをめくるたびに、干し柿の甘い香りと晩秋の澄んだ空気がたちのぼってくるようでした。オレンジ色に輝く柿がずらりと軒先に並ぶ光景、農家の方の節くれた手、やがて白い粉を吹く柿の様子など、一枚一枚の写真がまるで一篇の詩のようです。作者が4年以上もかけて追い続けたというだけあり、そこには圧倒的な時間の重みと温もりが写し出されていました。

私自身、幼い頃に祖父母の家で見たこの風景に、懐かしく温かい記憶がよみがえりました。しかし、効率や便利さが優先される現代の暮らしの中で、我が子にこの手間ひまかけた豊かな食文化を実体験として味あわせてあげるのは、残念ながら非常に難しいのが現実です。

だからこそ、この絵本は単なる記録以上の大きな価値を持つのだと感じます。体験できない世界を想像力で補い、日本の食文化の奥深さと、自然の恵みと共に生きる人々の営みを次世代に力強く伝えてくれます。「昔の人はすごいね」と呟いた子どもの言葉が印象的でした。

食べ物が私たちの口に届くまでの長い時間と多くの人の手を、美しい写真を通して実感し、感謝の気持ちを育むことができる。親子で大切なことについて深く語り合うきっかけをくれる、一冊です。
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なかなかよいと思う ちょっと立ち止まりたいときに   投稿日:2025/09/21
ホイホイとフムフム たいへんなさんぽ
ホイホイとフムフム たいへんなさんぽ 文: M・W・シャーマット
絵: バーバラ・クーニー
訳: 福本 友美子

出版社: ほるぷ出版
1975年から読み継がれているロングセラーと伺い、時代を超えて愛される物語の魅力を知りたくて、8歳の息子とページを開きました。「散歩とは何か」という素朴な問いから始まる、哲学的な香りのするユーモラスな設定に、親としては大きな期待を抱きました。

しかし、せっかちな性格で、物語の展開を早く知りたい息子には、この作品に流れるゆったりとしたリズムが合わなかったようです。「それで、どうなったの?」と先を急ぐ彼にとって、ホイホイとフムフムの少し噛み合わないのんびりとした対話は、もどかしく感じられたのかもしれません。言葉の定義をめぐる面白さは、もう少し幼い年齢か、逆にもっと物事を深く考える年齢の方が楽しめるように思え、8歳という年頃には少し幼く映ったようでした。

この本は、明確な起承転結を追うのではなく、友人と過ごす何気ない時間の豊かさや、物事の過程そのものを味わうことに価値を見出す作品なのだと感じます。効率やスピードが重視されがちな毎日の中で、あえて「立ち止まること」を描いているのでしょう。

今回は息子の好みとは少し異なりましたが、この読書体験を通して「うちの子は今、こういう物語を求めているんだな」という個性や成長段階を再発見できました。なぜ退屈に感じたのかを話し合う、良い対話の機会にもなりました。
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