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『カバサンチとアドバルーン』 『ブリと虹のほのお』 阿部行夫さんインタビュー

今回のスペシャルインタビューは、今、売り出し中の新人絵本作家・阿部行夫さんをご紹介します。阿部さんの描く細やかなタッチと深みのある世界観や一度目にしたら忘れることの無い魅力的なキャラクター、次々と物語が展開していくスピードの速さ…。まるで映画を見ているようなストーリーが特徴の絵本作家さんです。…それもそのはず、実は阿部さんの本業はアニメの美術監督。それも「シリウスの伝説」、「ルパン三世 ルパンVS複製人間」、「ジャングル大帝」、「あらしのよるに」などを手がけている、日本アニメーション界を代表する美術監督なのです。そんな阿部さんが、絵本を描くようになったのは何故か? 絵本の魅力は? アニメの美術監督ってどんなお仕事?…など質問に答えていただきました。

コンセプトは「家族一緒なら何でもできる!」

カバサンチとアドバルーン

カバサンチとアドバルーン
作・絵:阿部 行夫
出版社:文溪堂

コビトカバのトトは、家族仲良くくらしていました。ところが、ある日嵐で家が飛ばされ、海の上へ…。家族大好き一家のほのぼの絵本。

─── 今日はよろしくお願いします。お会いする前に息子と一緒に絵本を見せていただいたんですが、『カバサンチとアドバルーン』の最初の見開きページでもう息子の目が釘付けになっていて! カバサンチのお店に並んでいるものの細かさを見て、一気に世界に引き込まれていきました。

僕は『ブリと虹のほのお』でデビューしたんですが、1作目は年齢を少し高めに設定していたんですね。なので2作目の『カバサンチとアドバルーン』はもう少し年齢を下げて、5、6歳の子どもに楽しんでもらえるよう、意識してお話を作りました。

─── 意識というと?

ひとつはコンセプトをしっかりと定めたこと。『カバサンチとアドバルーン』のコンセプトは、「家族」なんです。「家族がいればどんな困難なことでも乗り越えられる」ということを伝えたいと思って描きました。

─── 絵に関して、意識した部分はありますか?

そうですね、何度も楽しんでもらえるよう、絵の中に小さなしかけをちりばめました。
例えば、この小さなペンギンは全てのページにいるんですよ。

─── 本当だ! しかもページによって顔のペイントが少しずつ変わっていて、可愛いですね。

あとは、ベッドの脇にいるカバの置物が微妙に変わっていたりします。
その他にもページの中に隠れアイテムを色々描いたのですが、本人が忘れてしまっているものもありますね(笑)。読者の方に見つけてもらえたら嬉しいです。

─── このカバサンチは「コビトカバ」という種類の動物なんですよね。コビトカバが主人公の絵本ってとても珍しいと思うのですが、この動物にした理由はありますか?

従来のカバよりも大人しいし、コロコロしていて可愛いところが絵本のキャラクターにぴったりかなって思ったんです。コビトカバって、三大珍獣のひとつなんですよ、知ってましたか(笑)。

─── 知りませんでした!
阿部さんの作品の魅力には、次々と変わる展開の早さがあると思うんです。森の峠に住んでいたカバサンチが、嵐に巻き込まれたり、海を漂流したり、色々苦難が起こるじゃないですか。でも何とか町へ到着する。町の人たちにも歓迎されて、めでたしめでたし…かと思ったら、町の暮らしに飽きてやっぱり元に戻りたいと思う。

それはアニメーション出身者特有の癖なんですよね。次々にアクシデントを起こしたり、舞台を変えるためにキャラクターを移動させたくなる…。

─── 移動する手段としてカバサンチが取った行動は、とても壮大で迫力満点ですよね!

これに関しては一言言わせていただきたいのですが、カバサンチバルーンを「"カールじいさんの空飛ぶ家"みたい」っておっしゃる方がいるんです。でも、僕の方が先なんですよ!

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児童書出版社さん、周年おめでとう! 記念連載

阿部 行夫(あべゆきお)

  • アニメーション美術監督として、映画「あらしのよるに」、TVアニメ「スティッチ」等、数多くのアニメ作品を手がけるほか、各種イベントのデザイン、CFデザイン、出版のイラスト等、多方面で活躍。
  • 1990年には、総監督としてヒューストン国際映画祭監督賞を受賞する等、国内外で高い評価を得ている。現在、宮沢賢治の「グスコーブドリの伝記」(杉井ギサブロー監督)の美術監督としても忙しい毎日を送っている。
  • そんななか、『カバサンチとアドバルーン』は描くだけで 多忙な毎日の癒し になった。完成した現在は、次回作の構想を練りつつ、カバサンチフィギュアを手作りしている。
  • 他に、壮大な世界観をもつファンタジー絵本「猫(マオ)の森のブリ」シリーズ『ブリと虹のほのお』。

作品紹介

カバサンチとアドバルーン
作・絵:阿部 行夫
出版社:文溪堂


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