たまごを温めている、だちょうのお母さん。
ピシッ、とたまごにヒビが!
いよいよヒナが生まれそう!
それなのに、あれ?
だちょうのお母さん、そそくさとどこかへ行ってしまいました。
もしも今生まれてしまったら、初めて会った他の誰かを、お母さんだと思ってしまうかもしれません!
そうしてこんなときに限って、たまごのもとを次々と誰かがたずねてくるのです。
お母さん、早く帰ってきてー!
ページを進むごとにヒビは広がり、それでもまだお母さんは帰ってこなくて……
ヤマアラシ、サル、はたまた人間のおじさん??
“もしも、だちょうのヒナが○○のことをお母さんだと思ってしまったら”
トゲトゲのだちょうになってしまったり、木のぼりをするだちょうになってしまったり、奇妙な想像が広がるゆかいな一冊。
それでもやっぱり! ああ、ハラハラ…
おねがいだから、みんなたまごをほうっておいてあげて!
遠くにいるお母さんを呼び戻そうとしている語り口が、はつらつとしていて元気が良く、声に出して読んでみるととっても爽快。
口調は大慌てなのに、「今生まれたらこうなってしまうかもしれない」という想像の内容が可愛らしいせいで、そのギャップにくすりとさせられます。
まったくお母さんったら、いったいどこへなにをしに行ってしまったのでしょう?
でも、その理由を知ったら、とがめる気もなくなってしまうんです。
(堀井拓馬 小説家)
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