『ようかい川柳』って……?
題名だけじゃ、何のことやらわかりませんよね。
横に小さく“ようかいも生きていくのはたいへんだ”と書いてあるので、どうやら、妖怪たちのちょっとした苦労を綴ったものかな?と想像します。
あれ、サラリーマンの悲哀や悲喜こもごもがしたためられた「サラリーマン川柳」というのがありますよね。
ああ、あの、妖怪板!?
……なんて納得するのは大人だけ。
子どもは、へんてこでかわいい妖怪たちに目を奪われるばかり。
彼らの何が大変なのか、ページをめくってみなくちゃわかりません。
さあ、いったんもめんに誘われるまま、「五・七・五」でいってみよう!
起きたばかりの布団の上で、ぼーっとした顔のろくろっくび。
「あさおきて まくらのいちが わからない」
身支度をする妖怪たちの中で……
「てぶくろを つけたとたんに すぐやぶれ」と、かまいたち。
「ランドセル こうらがじゃまで きゅうくつだ」と、かっぱ。
つい「当たり前!」と突っ込みたくなりますが、彼らの顔を見ると、そりゃ破けちゃうよね、きゅうくつだよね、と同情しちゃいます。
道を歩けば……
雨が降れば……
それぞれ困ったり嬉しそうだったり、照れたり慌てたりと、にぎやかな妖怪たち。
石崎なおこさんが描く妖怪はかわいらしく、ちょっととぼけています。
日常的な場面で次々繰り出される、妖怪ゆかりの「五・七・五」。
つい読者も「ようかい川柳」を作りたくなっちゃうかも!
「川柳」とは、日本に昔からある「五・七・五」のリズムで、ちょっと滑稽なことを綴る、定型詩。
俳句とちがって「季語」がなく、誰にとっても気楽な、口語で書かれることが多いのも特徴です。
この本で「川柳」に親しむもよし、妖怪たちの姿をおもしろがるもよし、言葉と絵の組み合わせを、楽しんでくださいね。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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