「はじまりは、しーんと、しずか。」
テーマは「音」。
音とは何なのか。どんな音があるのか。
音のかさなりを楽しむこともあれば、騒音のように聞くに堪えない音があり。
私たちの体や生活の中から生まれてくる音があれば、自然の音もある。
次々に登場する音の種類を、絵で解説する科学絵本。そう聞くと、どんなに難しい絵本になっているだろうと想像してしまうのですが、心配はページを開いた瞬間に吹き飛びます。
「なんて美しい、なんて刺激的な絵本!」
音の振動、大きさ、強さ。音色、かたち、感覚。
グラフィックの手法を使い、それら一つ一つが丁寧に賑やかに表現されていき、見たことのない世界が目の前に広がっていきます。
音が見えると感じる子もいるでしょうし、画面から音が聞こえてくる子もいるでしょう。わからないけど美しい、どれだけ眺めていても飽きることがない、という人もいるでしょう。
さらに「聴く」というテーマに移っていき、概念が広がっていきます。
音の捉え方、大きさや高さの計り方、
聞こえる音、聞こえない音。
音を仕事にする人たち、音を使うコミュニケーション。
そして……音がきこえない世界まで。
ブラティスラヴァ世界絵本原画展(BIB)とボローニャ・ラガッツィ賞のダブル受賞をしているこの作品。作者はウクライナを拠点に、絵本を中心に夫妻で活動をするアーティスト、ロマナ・ロマニーシンとアンドリー・レシヴ。彼らがいかに絵本づくりを楽しんでいるか、隅々まで見れば見るほど伝わってきます。
「すっかり音をけして、耳をすまし……」
読み終わってみれば、世界の受けとめ方がかわっている。これはやっぱり絵本なんだと実感するのです。
さあ、声に出して読もうか。一人でじっくり静かに堪能するか。
読むたびに、きっと新たな発見があるはずですよ。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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