20歳の誕生日を迎えた猫のチビ。20歳は、人間で言えば100歳です。
「ぼくって、おじいさんだぁ」
不安げなチビの前に突然現れた鏡の精は、チビはまもなくこっちの世界に来るんだよと告げます。チビは驚き、そしてチョコのことが心配になりました。チョコはチビが飼われている家の女の子。チョコが生まれたときから、ふたりはずっと一緒にいました。自分がいなくなるとチョコは悲しむに違いないと考えたチビは、自分のかわりになる猫を探し始めます。
自分そっくりな猫を見つけたチビ。その猫をチビ2号と名付け、自分のくせや好きなものを教え込みました。そうして、とうとうチビ2号がチョコの前に姿を現すときが来ました。その瞬間をドアの隙間から見つめるチビ。果たしてチビの作戦はうまくいくのでしょうか。
お話を担当されたのは女優の室井滋さん。チビのモデルは室井さんがはじめて飼った猫で、その名もチビ。絵を担当されたカワダクニコさんもまた、チビと同じチャトラの猫を飼っていたそうです。絵本からは、お二人が猫たちを愛し、猫たちもまた愛情を返してきたんだろうことが感じられます。
ちなみに、我が家の猫は13歳。最期のときがきたとしても、きっと私たちのことをチビみたいに心配したりしないでしょう。それでも、私たちが幸せでいることを望んでくれるとは思います。たぶん。
絵本に終わりはあるけれど、最後のページのその先に続いていく物語をぜひ想像してみてください。チビやチョコ、そしてチビ2号はどんなふうに過ごしているでしょうか。裏表紙の見返しも、お見逃しなく。
(近野明日花 絵本ナビライター)
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100歳になる猫のチビは、鏡の中に現れた鏡の精に、「もうすぐこっちの世界へ来るんだよ」と告げられます。
「ぼくがいなくなったらチョコちゃんが悲しむ! そんなのだめだ!」と、チビは自分のそっくりさんを探すため、オーディションを開催します。目が丸くて、おっぽが長くて、鼻がハートのかたちのチャトラのオス猫・・・
ようやく見つけたチビ2号に、自分の癖や仕草、好物などあらゆることを教えこむと、ついにチビ2号をチョコちゃんの元へ送りだすときがやってきます。
チャトラ猫のチビは、室井滋さんが初めて飼った猫。本書は、そんなチビとの別れをモチーフにして、チビの視点で書かれた物語です。
動物と家族のように暮らす人たちにとって、ペットとの死別はつらい出来事です。でもペットのほうでも同じように別れをつらく感じ、また飼い主のことを思いやっているのです。
姿がなくなっても想い続ける気持ちをちょっぴり切なく、でも室井さんらしく、明るくユーモラスに描いています。
保護猫や老猫の問題にも関心を寄せ、愛してやまない猫たちのために活動されている室井滋さんが、今もっとも心から伝えたい物語です。
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