良夫さんが酒屋のおばあさんからあずかったつぼの中には、おいしい菊酒をつくる小人の家族が…。
「きつねの窓」に代表的される安房先生の文体が好きです。
昨年10月の6年生のお話会では「10月の風鈴」を読みました。
生徒たちから思わぬ反響があり、ぜひ本を貸して欲しいと駆け寄られました。
幻想的なお話が多いのですが、日本的な空気を保ち続ける独特の安房ワールドです。
この作品(読み物)もタイトルに惹かれ読みました。
郵便配達の良夫さんが、かつて大きな造り酒屋のあったらしい人気の無さそうな家へ手紙を届けに行くと、中から紺の絣の着物を着たおばあさんが、・・・。
お酒(菊酒)を造る小人(妖精)が出てくるつぼをあずかった良夫さん。
約束ごとが二つ。
“お酒をつくるところは、誰にも見せちゃいけない”
“このお酒で、金儲けをしようとかんがえちゃいけない”
ところが、不思議なお酒造りに夢中になり、約束を破ってしまった良夫さん夫婦は、・・・。
お酒造りの小人がハンカチの畑の上で、菊の花を育てる様子が目に浮かんでくるような素敵な文です。
後半の、ミステリアスな展開に、安房先生のお話としては珍しいドキドキ感があります。
読後、狐につままれたような不思議な感覚におそわれました。 (アダム&デヴさん 50代・ママ 男の子12歳)
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