ぞろぞろぞろぞろ もりへぞろぞろ
何やらちょっと怪しげな響きです。
実は、病気になってしまったいのししを助けるために、
やまじゅうの動物達があつまって、森を目指しているのです。
「病気が治る」と古くから伝えられているその森は、山のずっと奥の方にあって、昼でも暗くて怖いものがいっぱいいるという。「みんなで行けば怖くない」と意気込むものの、やはり森へ入った途端にひんやり、真っ暗。確実に何かいる!!
冷たくて美味しい水を飲んで落ち着いてくると、その“何か”達がとても気持ちのよい風や空気をおくってくれて、だんだん元気になってくるのを感じるのです。それはずっと昔から動かずにそこにいる木々なのでしょうか、それとも森の精霊達なのでしょうか。わかるのは、いつだって命を守る役目を果たしているということ。おおらかな大地の恵みを存分に感じることができるのです。
この絵本がスゴイのは、森に恐る恐る近づく躍動感あふれる動物達、大きくて深い闇を内包する森の木々、そしてその間に気配を感じる精霊のようなものたち・・・それらが全て同画面で同等に描かれているということ!
動物達が森と仲良くなる瞬間、見えるような見えないような、それらの気配たちと楽しんでいる場面の静かな迫力といったら・・・!!とにかくとにかく不思議な場面の連続、こんな作品を見るのは初めてです。
何が起こっているのか、はっきりと説明できないし、動物たちが元気になっていく様子がわかるけど、やっぱりなんか怖い。その「なんか怖い」存在がある絵本。子どもたちが読めば、もっともっと心の奥深くにささっていくに違いありません。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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