クマタは、『かいがらのおくりもの』という絵本が大好きでした。毎日毎日声に出して文を読み、 ゆっくり絵をながめ、うなずきながらページをめくります。絵本の中には、主人公のキツネの子が、仲良しのリスの子に、1番気に入っている貝がらを、悩んだ末にあげる場面が出てきます。クマタはキツネの子に、「キツネちゃん。きみは、えらいね。ぼくだったら、いくらなかよしでも、いちばんすきなものを あげたりはできないよ。」と話しかけます。
しかし、そんなクマタに、絵本と同じような場面が訪れます。3日3晩大雨が降り続いて山のむこうのふかみどり村が水びだしになり、大人たちが手伝いに行くのを見て、クマタのともだちが「ぼくたちの本もおくろう」とつぎつぎに自分の本を持ってきたのです。もちろんクマタも自分の絵本の中から1冊を選ぶことにします。けれど、汚れや傷がない本は大好きな『かいがらのおくりもの』だけ。そこでクマタは、クマタにとってとても大きな決断をします。
誰かにおくりものをする時、何をあげようか、どんなものが喜ばれるかなどいろいろ悩みますよね。しかもクマタのように自分が大切にしているものを手渡す場面に出くわしたら、どんな選択をすることが正しいのでしょう? クマタは大雨の被害で困っているまだ知らない相手に対して、汚れのある本をおくるなんてとてもできない、と考えます。クマタにとっても大切な本をおくったからこそ、その思いがまっすぐ相手に届き、代わりに思いがけない喜びがクマタに届いたのでしょう。
小学1年生ぐらいからひとりでも読める易しい幼年童話。親子でおくりものについて話しながら読んでみませんか。大人でもじんわり考えさせられるものがありそうです。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
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森山京による心温まる童話
クマタは、『かいがらのおくりもの』というえほんが大すきです。
まいにちまいにち、こえにだしてよんでいました。
よみおえるたびに、えほんの中にいるキツネの子に「ばいばい、またね」とはなしかけ、ほんとうのともだちのようでした。
ある日、山のむこうに大あめがふりました。
あちらでは、いえが水びたしになるなど、たいへんなことがおきている。
そうきいたクマタは、いてもたってもいられず、ともだちとそうだんして、えほんをおくることにしました。
一ばんたいせつなえほんをおくったところ、クマタにおれいのおてがみがとどいて……。
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