春、夏、秋、冬。私たちは普段、それぞれの季節がやってくるのを当たり前のように待っていますが、新しい季節ってどうやってやってくるのでしょうか? スウェーデンを代表する絵本作家ベスコフによるこの絵本には、冬という季節の楽しみと、春の訪れのようすが夢いっぱいに描かれています。
6歳の少年ウッレはお誕生日に新しいスキー板をもらって、嬉しくてたまりません。クリスマスの2週間前、ようやく雪が降り、なにもかもがふかふかの雪に包まれました。はりきって森の中に出かけたウッレは、不思議な霜じいさんに出会い、冬王さまのお城に連れて行ってもらいます。
りっぱな氷の玉座に座った王さまに会ったあと、広いお城の中を見てまわったウッレは、そこで冬に必要なものや、冬を楽しむためのものをきびきびと作る不思議な職人たちの姿を見るのでした……。
ウッレはとっても元気な男の子で、寒さなんかに負けません。その元気な姿を見ていると、鼻の頭がツーンと冷たくなるけど、ほっぺたも気持ちもほかほかとあったかい、冬の外遊びを思い出します。
冬王さまのおしろで、思いっきり遊ぶウッレの楽しそうなこと! 急な下り坂をすべりおりるスキー、カチカチにこおった池でスケート、雪だるまや雪のとりで作り、もちろん雪合戦も! 読んでいるこちらも、この季節ならではの遊びをめいっぱい楽しもう、という気持ちになります。
季節の変わり目にやってくる霜じいさん、雪どけばあさん、そして春の王女さまの存在も印象深いです。季節が変わるさまは、まさに妖精たちの仕事のようでもありますね。
物語を楽しみながら、冬の夜明けの静けさや、雪どけの甘い水のにおい、生命力にあふれた土の手触りなどが体じゅうに満ちてきます。クラシカルで繊細な絵も味わい深く、寒い冬の季節にゆっくりとページをめくりたい1冊です。
(光森優子 編集者・ライター)
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