●●よしながこうたくさん「飼育係長・制作日記」●●
【3】動物園に取材へ!
独特の世界の中にも、不思議とリアルな雰囲気をかもし出しているこうたくさんの絵本。
こんな地道な取材活動に基づいていたんですね・・・。意外?
今回も、その場の雰囲気がばっちり伝わってくる日記ですよ。
◇◇編集者瀬尾さんより・・・
絵に説得力を持たせるために、
必ずストーリーの舞台へ取材をお願いしているのですが、
シャイなこうたくさんは毎回苦労しているようです。
2007年8月16日 ひとり動物園へ。
帰福後、ストーリーの荒ラフ作りに専念し、流れだけはほぼ完成。
あとは飼育関係者にお話を伺うだけとなるが
世は夏休み。
小学校は閉まっており、
福岡市動物園の園長さんも多忙との事で、アポ取り難航。
ひとり動物園へ事前潜入を繰り返す。
園長さんに会う前に知りたいのはただ1つ。
番長達がどの動物を連れて帰るか?
条件として考えたのは
・ふれあいコーナーでふれあえる動物
・小さい時は可愛いけど、大きくなったら可愛くなくなる動物
・子どもと大人とでは姿、形が異なる動物
そして最も困難な条件。
・連れて帰っても気付かれん動物・・・
しかしふれあいコーナーにはうさぎ、モルモット、アヒルしかおらず。
「君たちは大きゅうなっても可愛か。そもそも小学校におる!」
うむ〜〜…やはりトラか、ライオンか…
園内の食堂でビールを飲みながら一服しつつ考え込む。
さては食堂のおばちゃんなら良いアドバイスばくれるやもしれん!
こうたく「ぁ〜〜〜〜〜…おばちゃん、ちょっと訊きたいっちゃけど…」
おばちゃん「はい?」
こうたく「ぁ〜〜〜〜〜…この動物園でおらんごとなっても気付かれん動物って知らんかいな?」
おばちゃん「……は?」
こうたく「いやいや、怪しい者じゃなかとよ!ちょっと参考までに…もし! 子どもが連れ帰ったりした場合たい」
おばちゃん「…… はぁ。おらんとじゃないですかね…」
こうたく「…ですよね」
やはり…園長さんに直接訊くしかないな…
8月23日 飼育係長に出会う!
つに園長さんとお会い出来る日が来た。
応接間にて園長さんと対談。
動物との接し方や信念、抱いてる夢を伺う。
動物園には、狭い檻に入れてかわいそう等の避難もあるが
見たり触ったりする事で、動物の皮膚感や心音、臭い等で命の尊さを教えてもらえる。
だから動物園では
“動物は野生からの親善大使”
として丁重に迎え入れ、ちゃんと接待し、快適に過ごしてもらえるように努力している。
「それは人間同士でも同じ事ですよ」
さすが現場で長年やっておられる方には信念と哲学がある!
なにか、子どもたちに伝えるべきものが見えたような気がします!
こうたく「ところで園長…1つ訊きたいんですけど…」
園長「なにか?」
こうたく「…この動物園でいなくなっても気付かれない動物っていないですかね?」
園長「…いませんよ。どの動物にも名前をつけてますし、毎日点呼とってます」
こうたく「ですよね…すみません…いや、悪気があるわけじゃないんですが、ええ」
こうたく(この質問は動物園関係者にはタブーですよ、瀬尾さん!ぼかぁいったいどうしたら…!!?)
園長「では、園内の案内は飼育係長の者がしますので何でも訊いて下さい」
こうたく「え!? 飼育係長って役職は本当にあるんですか!! 知らんかった…」
↑ぼくの好きなラクダさん。いつもボーとしてらっしゃる。
↑ぼくの戦場。こども動物園!
↑左:飼育係長 中:園長 右:こうたく
9月12日 給食の人。
番長出版以来、久々に裏の小学校に取材へ行く。
給食番長取材初日は不審者扱いだったボクも
今では校長先生も給食室の先生達もすっかり仲良くしてくれる。
校内新聞の影響で、子どもたちは相変わらず
「あーーーーーーー給食の人やーーーーーー!!!」
と指をさす。少し間違っている。
飼育小屋は記憶の通り、やはりモノトーン。
その周りで子どもたちがウサギやチャボを出して遊んどる。
この頃には何の動物を連れて帰るかは決まっとったので
子どもたちの真っただ中でイメージを膨らませながら写真をパシャパシャ。
大ラフの締め切りも近い…集中、集中…
しかしカメラを前にするとはしゃぐのが子どもの習性。
ちゃちゃをいれてきたり、叩いてきたり、写真になんとか写ろうとしたり…
「こらぁぁぁぁ!!! 大人の邪魔ばせんとぞ!!!!」
などとは言えず、
「先生、後日放課後に来ていいですか?」
大人然とした美しい態度でその場を去りつつ、
絵本出して以来、子どもと関わる事、多くなったなぁ…
と、人生が予想だにしない方向に進んでる事を実感するのであった。