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2009年10月28日

システム障害のお詫び

10月27日(火)23時30分頃~10月28日(水)9時30分頃

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2009年10月27日

絵本『てんごくのおとうちゃん』
長谷川義史さんにインタビューしました!

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パワフルでユーモアあふれる絵本の数々で、大人気の絵本作家長谷川義史さん。
そんな長谷川さんが、ご自身の「お父さん」をテーマにして描かれたのが今回ピックアップする作品『てんごくのおとうちゃん』。

この度絵本ナビでは、長谷川義史さんへのインタビューが実現しました!講談社創業100周年記念出版の絵本の一冊として制作されたこの作品、どんな想いが込められているのでしょうか。


「はいけい、てんごくのおとうちゃん、げんきにしていますか・・・。」
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『てんごくのおとうちゃん』 長谷川義史・作 講談社
※内容詳細・みどころはこちら>>>

作品の制作の他に、講演会やイベントなどでも全国をまわられている長谷川さん。その合間の貴重なお時間を頂いてのインタビュー、少し緊張しながらの雰囲気で始まりましたが、この作品について、またお父様との大切な思い出について、一つ一つのエピソードをとっても丁寧に語ってくださいました。



■ ずっとお父さんの絵本をかきたかった・・・                                                   

―― 「講談社創業100周年記念出版書き下ろし100冊」の1冊として制作されたこの作品。依頼された時はどう思われましか?

「100周年!・・・すごいなぁ。そんなんやらしていただいていいの?」
最初はそう思われたという長谷川さん。

「どんなんしようかと考えてね。僕の作品には面白いやつ、アホみたいなやつが多いでしょ?それからしっとり系(『おへそのあな』など)。A面B面みたいなもんです。それで担当編集者にどっちでいきましょうかと聞いてみたら、今回はしっとり系がいいかなと言われて。そこからしばらくして僕が『お父さんのことを描きたい』と言ったんです。」


―― 様々な題材がある中、なぜ「お父さんのことが描きたい」と思われたのでしょうか?

「ずっと、お父さんの本を描かなきゃと思ってたんです。」


―― それはいつ頃からですか?

「一番最初の絵本『おじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃん』を作った時はそんなこと思ってなくて。その時はただ絵本を作ってみたかった、自分の絵が全部ページに載っている本を作ってみたかったという想いが強くてね。

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おじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃん
長谷川善史・作 BL出版刊

でも、作った後しばらくすると、読んだ人達から反応が返ってきたんです。そんな事思いもよらなかったんで『絵本って素晴らしいなぁ』と思って。それで絵本の仕事をやり始めたんです。そうして何冊か描いているうちに、お父さんのことを描かなあかんなぁ・・・と思い始めたんですよね。

『てんごくのおとうちゃん』というのは本当の話で、実際僕が小さい時に父が亡くなってるんです。亡くなって随分経って、こんな人(絵本の中のお父さんを指差されて)もう誰も知らないんですよ。身内だって親戚だって亡くなっていくし、こんな人の事をもう誰も知らない。でも、自分にも子どもが出来て、絵本を描き始めて、何かここ(絵本)に描いとけばこの形で残るやん、と思って。誰も知らないんですけど、ここに登場させてあげたらこの人ここにいるじゃないですか。せっかくそれを表現することができる仕事してるんやから、いつかお父さんという切り口で描きたいなぁと思っていたんです。

ちょうど講談社から話があって、こっちとしてはいいタイミングだなぁと思って『お父さんの話を描いてもいいですか?』と提案したんです。」

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―― 普段描かれる時の絵本の取り組み方とは、違う感情が湧いてきたりしましたか?

「違いました。絵本を描くにあたって、絶対にやらないかん使命みたいなものを感じていたので、この作品描いたらもうええんちゃうか、後はもう子ども達が喜ぶようなものを描いたらいいなぁ、みたいに思った。時間もだいぶもらっていたしね。」



■ 『てんごくのおとうちゃん』ができるまで                                 

―― そんな思い入れのある本作品。一つ一つが本当に大事なエピソードなんだろうな、という事がすごく伝わってきます。お父さんの話でいくと決まってからは、内容はすんなり決まっていったのでしょうか?

「お父さんの話で行こうと制作が始まって。最初はこの中の一個のエピソードを中心に話を作り始めていたんです。飛行機のショーを見に行ってホットドッグを食べるくだりがあるんですけどね。それで一個の話を描いてたんです。『ホットドッグ』と仮の題をつけてね。」

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▲完成版にもエピソードの一つとして描かれています。

「その日の出来事を思い出して一冊にまとめて。9割方できていたんですけど、なんかしっくりこない。もうちょっとで出来そうだけど、なんか違うなぁって。
お父ちゃんが飛行機のショーを見に行こう、って言うんです。お母ちゃんは興味を示さないから、ぼくとおとうちゃんとねえちゃんの3人で行って。お母ちゃんなら絶対買ってくれないホットドッグを買ってくれて『やっぱりお父ちゃんってすごいなぁ』と思うんやけど・・・。家に帰ってきて、お母ちゃんはご飯作って待ってるやんか。ホットドッグを食べてきた事なんて知らんとご飯作ってんねん、という絵を最後に絶対入れたいなぁと思っていて。
そんなら、結局お母ちゃんもっていくねん。最後に。(一同笑い)
お父ちゃん、色々やったのに結局最後に母ちゃん(おいしいとこ)持ってくでしょ。

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―― お母ちゃんの絵本になっちゃう!?(笑)

「困った困った、えらいこっちゃえらいこっちゃ、仕事場の中をウロウロと歩いていたら・・・。
『てんごくのおとうちゃん』というタイトルがぴゅーってね、降りてきてん。急に。
天国のお父ちゃんに向けて、というストレートでシンプルなテーマが見えてきて、そうかそうか、これで描けばいいんや!と思って。
そこからすぐに、メモ帳みたいな紙に覚えているエピソードを全部書き始めたんです。お父ちゃんの事でぼく覚えてるエピソードって少ないんですよ。自分で覚えていることをワーっと書き出していったら、30分位で15枚ほどすぐに書けたんです。
それを、この話は先、これは後に持っていこう、これは亡くなる前の話、これは亡くなった後の話・・・順番を決めたり入れ替えたりして、すぐ出来たんです。それが出来上がった瞬間。そんな風にして作ったんです。」



■ 極めて私的な絵本                                             

―― この作品は「お父さんの死」というストレートなテーマがまずあるんですが、例えば私の息子(5歳)は普通に絵本として楽しんでいるんです。その中で「どうしてお父ちゃんは天国にいるの?」「どうして天国にいるはずなのに会えるの?」といった風に自然に質問が来て。子どもって構えるわけでもなく、そうやって目の前の事実を自然に受け止めていくんだなあと感じたんですね。長谷川さんは、実際この作品を描かれている時に、小さい子が読む、子どもが読む、そういう事は想定されていましたか?

「していないです。誰が読むとかは全然考えてなかったです。かえって講談社の人には『こんな個人的なものを出してもええんでしょうか?』と聞いたくらいです。」


―― 絵本を通して読み手に何か伝えたい、という感じではなかったのでしょうか?

「ただ単に父親をここに描いときたい、というのが大きな一つ。反対に、すごい人に言いたいなぁというのがもう一つ大きくあって。

この絵本ってね。人前で読むと自分と重なって泣いてしまう人とかいるんだけど、僕はあんまり悲しく捉えてほしくないと思ってるんです。できるだけ前向きに伝わりたいと。

僕自身、まわりの大人の人や近所のおばちゃんによく『かわいそうにかわいそうに』って言われて、それがすごく嫌やってん。小さかったからだと思うんだけど、たいしてそんなに悲しいこと、というような感覚がなくて。『僕より、死んだ人のがかわいそうやん』というのがすごいあって。それは今もずっと。『死んじゃったらあかんねんで、生きていることがいいんや。生きたいと思っているのに運命で死んじゃう事もあるんだから、生きてるって事ははほんまにありがたいことやねんで。』もしこの絵本で伝えたいとしたら、こういうこと!
死んでかわいそうやなという本じゃなくて、お父ちゃんは死んでしまうんだけれど生きているのがええんやで、というのを結果的に教えてもろているという本。悲しいと言うよりも、子どもはその状況になれば、そんなもんやなって元気に思って生きていくやん。そうやと思う。」


―― 絵本の中の「ぼく」も、いつもお父さんの存在を感じている様子がとても伝わってきます。実際に経験をされている御本人の言葉からは、とても力強いものを受け取ります。子どもにはそういう力があるんだという事が伝われば、肩の力が抜けるお母さん方もきっといるのではないでしょうか。

「別にそんなもんやなと思ってやってきたからね。」



■ 家族って切ない                                               

――とても私的、個人的な内容なのですが、エピソードや描写がリアルであればあるほど自分の中にも共通する切なさというものが伝わってくるような気がします。でもそれは、悲しくて切ない、というのとちょっと違う。自分の親のことを思い返したり、自分の子どもの事を想うとなぜか泣けてきたり、そういう感覚と近いのかもしれません。

「そう、家族って切ないねん。この絵もね、実際家にこんな写真があんねん。

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▲裏表紙の絵を見ながら・・・。
 
これは確か動物園に行った時の記念写真だったと思うんやけど、ただ動物園に行っているだけなのに背広とか白いブラウスとか着飾って。しょうもないことなのに、大変な事みたいにしている。自分もそこに参加しているんやけど、この人たちを客観的に見たら、なんかね。それこそ、ようわからんちっこい幸せみたいなもんですよ、これ。それを一生懸命やっている、そういうのが切ないねんな。
今、親になってみると自分もそういう切ない事をしているんだろうなあと思うこともあるし。」


―― 家族って切ないという捉え方もあるんだなぁとしっくりきました。そういう家族への想いみたいなものが全ての作品を通して根底に流れている気がします。

「そんなことないんですけどね(笑)。」




■ 小さい頃から・・・                                             

―― 他の絵本でもそうですけど、長谷川さんの作品というのは、登場人物の表情や風景など本当にしっかり描かれています。『てんごくのおとうちゃん』では当時の時代の雰囲気まで蘇ってくるようで。普段からよく観察とかされているんでしょうか?

「観察は好きなのかもしれない。やらしい人間やねん(笑)。
子どもの頃からそうだったね。あの人こんなんやで、あそこでこんなんあったよとか。例えば先生の絵を描いて、それを誰かに見せて誰かが喜ぶという、そういうのが好きで。自分で絵を描いてのめりこんでいくというより、描いたやつを人に見せて反応が返ってくるのが好き。今やってることと同じ様な事を、小さい頃からやっていたんやね。」

―― お父さんの記憶が鮮明なのはそのせい?

「でも本当にこのくらいしか覚えてないんですよ。」


―― その時に感じた感覚とか、見ていた風景とかすごく伝わってきます。

「やらしい子やったんかな・・・。詳しくは描いていないけど、お葬式の前後の事ってすごい覚えてんねん。思ったこと、考えたこと、周りの人の様子とかも。とんでもないことが起こっているという感覚はあったけど、わりと冷静で。そんな事を思い出します。僕だけじゃなくて、一年生くらいの子って、そんな風にすごいいっぱい考えてるんやと思う。」


―― ある日おとうちゃんとふと再会するシーンがありますが、実際にも?

「あれも本当にあったこと。身内にも誰にも言ってなかったエピソード(本邦初公開だったそうで!)。急に知らんおっちゃんに言われてん、『ぼく、だいじょうぶか?』って。一瞬にしてすぐ思ってん、『あ、お父ちゃんや』と。全然知らん、関係ないおっさんやろうけども、なんかそう思ったことをよく覚えてるんです。」

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―― 絵本を作っているうちに子どもの頃の記憶が鮮明になっていく、そういう事ってありますか?

「描く時は、思い出して鮮明になっていったりするんですけど・・・『てんごくのおとうちゃん』なんかは、リアルな絵にして一個の話にしているから、描き終わってなんか頭ごちゃごちゃになってる。本当にあった思い出なのか、創作がだいぶ入っているのかわからんようになっている、と言うのがほんまのところあるんですよね・・・。」


■ 本が完成してみて                                            

―― 完成した時の感想はどうでしたか?

「ほっとしましたよ、出来て。」

―― 改めて、この絵本をどんな風に読んで欲しいというのは?

「楽しむ絵本じゃないしなぁ・・・。」

―― どんな絵本か、と言うとすると?

「子どもってこんなんやで、元気に生きていくで・・・ということかな。

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大人は自分がいなくなったらこの子は生きていけない!とか、すごい悲観したりするけど、置いてったらいいねん。どないでもなると思う。大変かもわからないけど、別にそれでやっていくんで。ごっつい幸せになること自体がそないええことなんかなと思ったり。僕みたいに物を作る人間なんかは、いろんな事が起こった方が良かったりもするでしょうしね。
かわいそうだけど、例えばそんな事になったりしてもそれは一つの運命。その子にはとって好きな人っていうのは一生続く。死んだからといって、そこで忘れるわけではない。大好きなままずっといるでしょ。全然子どもは大丈夫なんですよ。

自分に子どもが出来て、その立場になってみて特に思うんですけど、この人(お父さん)つらいやろな、子どもを残してつらいやろうな、と。子どもは「元気にやってますよ」と笑っている、何やかんやあったけど、こんな感じで笑っているんです。」



■ 絵本作家長谷川義史さんについて                                   

――絵本作家長谷川義史さんについて少しお伺いさせてください。長谷川さんの作品を子どもに読んでいてと思うのは、子ども達が喜ぶツボみたいなものを知っているというか。子ども達の気持ちがリアルに描かれていたり。なんでわかるんだろう?と驚いたりします。子育てや日々の子ども達との触れ合いなどから影響を受けられているのでしょうか?

「自分の子どもからも勿論影響は受けてますし、イベントなんかで子ども達に言われる事も影響は大きいですね。
いいからいいから』という作品なんかは、まだ全然絵本になる前に、ライブ紙芝居と言って、みんなの前で大きな紙に絵を描いていっていたんです。それを3回くらい見に来た子がいて『絵本にして欲しい』と言うんです。
子どもって何でこれ面白いの?って言うのがあるでしょ。大人が考える理屈で面白いとかじゃなくて。僕も、自分でやりながら、こんなん面白いかどうかわからなかったんです。でも子どもは面白いと言う。それが絵本になったきっかけ。」

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いいからいいから』 長谷川義史・作 絵本館刊


―― 絵本を作られていて、楽しい瞬間ってどんな時ですか?あるいは、絵本作家になって良かったなあと思われる事はありますか?

「絵本作家になって良かったなあ、というのは本当に思う。自分の思ってた事を、みんながいいとか悪いとか反応を返してくれる。絵だけ描いていた時は、そんな反応なんかが返ってくるという事はなかったからね。それが一番嬉しい。
描いている時は、そんな楽しいとかはあんまりないです。ちゃんと描けるんだろうかとか、プレッシャーの方が大きいかもしれないです。出来上がったら、例えば絵本ナビとかみたいに感想を寄せてくれたり、記事なんかで取り上げられたりして。一人で世の中に出て行く成人した子どもみたいなもんですね。そういうのがすごく嬉しい。」


―― 絵本ナビ読者の反応も喜んでもらえているんですね!

「よく見てんねん、僕は。」


■ 最後に・・・                                                

―― 絵本ナビ読者へ、一言メッセージをお願いできますか?

「つくっている方は精一杯なので・・・5つ星くださいね!」(笑)


―― 長谷川先生も実は気にしてらっしゃる!?

「気にすんねん!
新刊出てしばらくしたのに、星どころか誰も反応を示してないと・・・あれもまたつらいものがあるねん(笑)。(レビューについて)こっちが思ってもない様な事が書いてあったりする時があってね。ああ、こういう風に捉えるねんなあ・・・とか。そんな事考えてないのになあとか。それもまた面白いねんな。」

最後に本当に嬉しいコメント、ありがとうございました!

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★おまけエピソード
2009年の12月、講談社は創業100周年を迎えられるそうです!これを記念して、「100人の作家による100冊の書き下ろし作品刊行」という企画を遂行中。昨年11月にその先頭を切って、絵本の部署からは「100年読み継がれる絵本」をコンセプトに、『エゾオオカミ物語』『えほんのこども』『とうさんのあしのうえで』『てんごくのおとうちゃん』の4作品が出版されました。

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 あべ弘士さん      荒井良二さん      いもとようこさん      長谷川義史さん
エゾオオカミ物語』  『えほんのこども』  『とうさんのあしのうえで』 『てんごくのおとうちゃん
※講談社HP特集ページはこちら>>>

そのうちの一冊が長谷川さんの作品なのです。
「締め切りも迫っていてこの作品を早く描かなきゃと思っていた頃に、ちょうど荒井(良二)さんがテレビ出てこの100周年の作品描いてはってん。(荒井良二さんの特集番組にて)それが、次から次へと出来ていくねん!3枚くらい。こっちはまだ1枚も出来てなかってん。ごっつ落ち込んで・・・(笑)。」と長谷川さん。すると、編集の方も同様に落ち込まれたそうで・・・「荒井さんあんなに進んでる!」って(笑)。
そんな思いもされながら(!?)完成されたこの作品、皆さん是非じっくりと読んでみてくださいね。

↓『てんごくのおとうちゃん』に寄せた、長谷川義史さん手描きメッセージをご紹介します!
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(C) 長谷川義史 (講談社「子どもの本通信dandan19号」より)

子ども達や読者の方の反応がとても嬉しいと、笑顔でおっしゃる長谷川さん。一方、制作について語られる時はとても真剣な表情に。その二つのお顔がとても印象的で、長谷川さんの作品や子ども達に向かわれる姿勢の様なものを少し感じる事が出来た気がします。
今後はどんな「あほうな」作品が生まれてくるのでしょう。子ども達同様、楽しみで仕方がなくなってしまいました!


100年愛される絵本展のお知らせ

■ 100年愛される絵本展                                  

■タイトル:
「100年愛される絵本展」

講談社の創業100周年記念企画のひとつとして、昨年出版した『エゾオオカミ物語』『えほんのこども』『てんごくのおとうちゃん』『とうさんのあしのうえで』の4作品の絵本原画が一堂に揃う原画展が実現します! あべ弘士、荒井良二、長谷川義史、いもとようこ各先生方の渾身の作品をぜひご鑑賞ください。会期初日には、長谷川義史、荒井良二両先生のギャラリートークも催されます。

■会期・時間:
11月3日(火・祝)~11月20日(金) 会期中無休/入場無料
10:30~19:00 (初日は18:00、最終日は15:00閉館)

■会場:
コニカミノルタプラザ ギャラリーB&C (フルーツ新宿高野4F)

■スペシャルイベント:
長谷川義史さん・荒井良二さんのとっても愉快なギャラリートーク+サイン会
11月3日(火・祝)参加無料 
長谷川義史さん 14:00~14:30  
荒井良二さん 16:00~16:30

詳細はこちら>>>

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2009年10月21日

絵本ナビ ユーザーグループインタビュー参加者募集のお知らせ

募集は締め切らせていただきました。
ありがとうございました。

2009年10月18日

絵本『きょうのそらはどんなそら』
作者のふくだとしおさんにインタビューしました!

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新刊『きょうのそらはどんなそら』の発売を記念して、ふくだとしおさんが絵本ナビにいらしてくださいました!今回は今までの作品とちょっと雰囲気が違うような・・・その辺りも含めてたっぷりお話を伺いました。

この取材が行われたのは8月の終わり。思いのほか日焼けをされているふくだとしおさんの登場です。聞けばこの夏は1歳8ヶ月(取材当時)になられた娘さんのベランダのプール遊びに付き合っているうちに焼けてしまった「ベランダ焼け」だそうで(笑)・・・そんな愛らしいお話などを伺いながら和やかな雰囲気でインタビューはスタートしました。

Ehon_29586_1.jpg ※みどころはこちら>>>
きょうのそらはどんなそら』 ふくだとしお+あきこ accototo ・作 大日本図書


<新刊『きょうのそらはどんなそら』制作秘話>


■ 『きょうのそらはどんなそら』での初めての試み                                     

―― とにかく色々な空が登場するこの絵本。空をテーマで絵本をつくろう、と思われたきっかけなどはあったのでしょうか?

かつて、ふくだとしおさんがご自身のHP上で、娘さんの誕生日に「その日の、各地の空の写真を送ってください」と募集されたことがあったそうです。

「日にちを告知して募集したら、本当に色々な都市や外国の空まで集まって。すごく面白かったんです。それを見た(担当編集者の)山本さんが『空の本をかきませんか?』と声をかけてくださったのが直接のきっかけですね。僕自身もともと小さい頃から空が好きだったこともあり、お話を頂いた機会にじゃあちょっとやってみたいな、と。」

目の前に『きょうのそらはどんなそら』の油絵で描かれた原画をずらっと並べてくださいました!

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▲何とも深い味わいで思わず見入ってしまいます。

―― 今回の作品は今までの作品とガラッと雰囲気が変わって油絵という技法を使って描かれています。背景や空をじっくり描かれる為に素材を変えられたのかな、とも思ったのですが・・・?

「そうですね、実際に空とちゃんと向かいあってじっくり描きたい、というのはありました。」とふくださん。

「最初は油絵で描くつもりじゃなく、いつもと同じように水彩で・・・と思っていたんです。でもどんな絵本にしていこうかと話している中で『油絵はどう?』と奥さんが言い出して。油絵だったら面白いんじゃないかな、と思えてきたんです。より空の雰囲気や奥深さが出るんじゃないか、と。
同じタッチじゃなくてもいい、という話をもらっていたこともあって描いてみることにしました。

油絵というと、今までも自分では描いてはいたのですが、絵本で使うのは初めてだったんです。
でもずっと水彩で描いてきていて、ちょっと慣れてきちゃっているなあ、という思いもあって。画材を変えることで完成図がみえなくなる、そういう状態で描ける面白さの方に惹かれました。自分自身が楽しめるんじゃないか、と。」


―― そうして新境地に進まれる事を選んだふくださん、今回は更に原画のサイズを決めないで描かれたそうなのです。

「キャンパスのサイズは決めないでください、と申し出たんです。とにかく自由に楽しく描きたいから、と。後はデザイナーさんに調節してもらって(笑)。
というのも、以前ジョン・バーニンガムの原画展を見に行った時にびっくりしたんです。実際の絵本と原画が全然サイズが違ったり、同じ原画なのに、サイズが全然違ったり、切り取って貼っていたり・・・もうむちゃなくちゃなくらい。
でも、絵を描く側の目から見たらそんな風なのが自由で楽しいなぁと感じていたんですよね。だから一度(原画のサイズを決めないで描くということを)ちょっとやってみたいと前から思っていたんです。」

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―― 実際描かれてみてどうでしたか?

「油絵を絵本にするということは、水彩と違って上から塗り重ねたりできるのでより自由に絵を変えられるんですよね。だから僕自身の気持ちは結構楽でした。大きさのこともあって、硬くならずにより自由に描けたような気がします。
こういう広い空を描く時に、表現がちまちまならずに良かったなぁ、と思ってます。」


―― 結構時間がかかったのでは?

「いや、結構早いですよ。乾く時間を考えなかったら一日一枚描けちゃうくらい。もともと描くのは早い方なんですけどね。
制作中に立ち止まってしまった、といったことはなかったです。全部の絵を同時に進めて描いていくんです。それを引き出しに入れておいて、それぞれに手を入れたり、また並べてみて眺めたり。そうやって常に全体を見ながら描き進めていきました。
原画を描く段階にくるまでは色々と変わったりしてそれなりに時間はかかったんです。描きたい空のイメージが固まるまでは何となくずっとふわふわしていて・・・。でもあるシーンが固まってからは早かったですね。」


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▲アイデアを練るためのラフ。小さいサイズでも本の形になっているのです。 可愛い!
 何種類ものラフが繰り返し制作されています。最初のものとはかなり違う内容になっています。


■ 主人公は子猫のプチュ                                  

―― 実はこの絵本の主人公である子猫は既刊『ぴっちゃんぽっちゃん』で登場する子猫<プチュ>なのだそうです。だから続編とも言えますね。そんなプチュに空を見させると何とも空の大きさが際立つ様です。一日中空を見て過ごせるのもプチュだからこそ?いい生活だなぁ、なんて(笑)。最初からプチュに空を見せようと思っていたのですか?

4477019459_c.jpg>※みどころはこちら>>>ぴっちゃん ぽっちゃん』 ふくだとしお+あきこ accototo ・作 大日本図書刊

「そうですね。こんな風に一日を過ごすのは、いたって猫らしい行動ですよね。
僕の実家で飼っている猫も3日間帰ってこない、ということがあります。どこかで別の名前で呼ばれていたりして。だから気ままに空を見てても違和感ないと思うのです。
人間の子どもが同じようにしていたら『ごはん食べているのかな』『トイレどうしているのかな』なんて気になっちゃう様な気もしますしね(笑)。」


―― 『ぴっちゃんぽっちゃん』でプチュはとても小さな世界の中での発見を描き、今作でのプチュはとても大きな世界との出会いを描かれているような気がします。特に暮れかかった大きな空のなかにたたずむプチュの小さな姿の場面がとても印象的です。

実はラフスケッチの3番目くらいで夕日の場面というのが出てきたそうなのです。それを見て編集の山本さんが「ふくださんが描きたいのはこれじゃないかな。」と思われたそうで・・・。

「なかなか定まらなかったイメージをうまく拾って頂いた、という感じですね。そこからどんどんと広がっていきました。その後は早かったですね。」


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▲見る者の胸にぐっとくる夕日の場面。プチュの小さなシルエットも何だか切ない気がして・・・。

「この夕日の場面についてはさみしい感じがするのではないか、と言う話もあったんですが、僕は子どもにとってそういう感情はとても重要だと思っているんです。
『さみしいな・・・』とか『かなしいな・・・』とか、そういう深刻ではない位の軽い『さみしさ』や『かなしさ』みたいなもの。或いは夕日をみて切ないと感じたり。今から振り返ってみると、そういう感情ってすごく豊かな気がするんですよね。そういう切ないなぁという感情を子ども達にも大切にして欲しいと思っています。

自分で改めて見ていても(この場面は)さみしい気がします。でもこういうのもいいんじゃないかなぁと思ってます。」


■ 記憶の中の空を探して・・・                                

―― 夕日の場面の切なさと合わせて、この絵本に描かれている風景というのも特に知っている訳ではないけれどとっても懐かしい感じがします。

「僕は小さかった頃、団地に住んでいたんです。
背景として描く場所をどうしようかと、小さい頃に住んでいた所と似たような場所を探していたところ、すごくイメージに近いところがあったんです。その辺りをぶらぶら歩いていたら、子どもの時の具体的な記憶じゃなくて<匂いのような記憶>といった感じのものがふわーとでてきて・・・。
この団地とか、この辺りを描きたいなと思ったんです。
なんかいいんですよね、団地って・・・(笑)。

大人の方が見ても、具体的な記憶をたどりながら『ちょっと懐かしいなぁ』と思ってくれるといいですよね。『あーこんな空見たことあるなぁ。』なんてゆっくり空を見てもらいたいな、というのもあるんです。」

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―― この絵本のために実際に空を探しに行かれたりはなさったんですか?

「実際に空を探しに行ったり、というのはしていません。具体的にこの空というのは決めてないんです。思い出の中に残っている空の印象が強いので、逆にそれを大切にしたかった、というのがあります。一応描く為に、夕日の色や青い色などは見て参考にしてはいますけど、具体的な場面というのではなく、今見ているものと自分の記憶を合わせながら描いていくという作業でしたね。ほとんど想像です。
雲のかたちもイメージなんです。(表紙にも登場するもこもこ雲とか)実際にはあんな雲はないとは思うけど、自分の子どもの時には本当に実際にあったような気もしたりして。それは自分が作り出しているだけなのか、本当なのかどうかはわからないけど、イメージの中には確かに残っているんですよね。
風景にしても団地があって、フェンスがあって、工場が遠くにあって・・・こういうのも記憶の一場面なんですよね。」


■ 最終的に完成するまでに                                

―― そんな風にイメージが固定していってから、更に完成するまでにはちょっとだけ苦労されたそうで・・・。               

「今回文章はちょっと悩んだかもしれませんね。
テキストは随分変わりました。最後にはかなり削ったりもしています。最終的に決定するまで、ちょっと違うなというのがずっとあって・・・。じっくり考えるというのではなくて、自分の心を広げて余裕をもたせた上で考えたいなと思ったんです。
そこで・・・旅行へいこう、と。
僕が好きな沖縄の小さな島へ一泊しに行きました。昼過ぎに着いて、夕方空を見てボーっとして旅館の部屋で文章を考えて。」

編集の山本さんがある日もらったテキストがあまりにも違っていて、それが凄く良かったのでふくださんに尋ねたら「旅行に行ってきました。」と答えられたそうなんです(笑)。

「真摯に空と向かいあってみたいなあと思い、家の中ではなく、ちょっと外に出て自然に言葉が浮かんでくるような状態、環境をつくったんです。」

結果的に読んでいる人の想像力や懐かしい記憶を喚起させるような、とてもシンプルな文章が出来上がったのです。


―― 作家ふくだとしお+あきこ accototoとして、奥様のあきこさんといつもお二人で制作されているそうですが、今回でいうと具体的にどんな作業分担になったのでしょうか?

「通常はストーリーは二人で考え、色づくりは奥さんです。『あたたかさを感じる茶色』といったふうに、イメージを伝えます。今回は自分の記憶を呼び起こしてながら一気に表現したかったので、この作品に関しては色も含めて僕が主体となって制作しました。奥さんは、構想とか絵本全体のながれを考えたりとか、今回は一編集者的な役割りでしたね。」



■ 子どもの頃に見た空の記憶は宝物。                         

―― この作品をこんな風に楽しんで欲しい、というのはありますか?

「今の子どもたちを見ていると、(ゲームをやっていたりして)ちょっと目線が下向きの様な気がするんです。もっと空を見てほしいなと思いますね。空って本当に毎日違いますよね。勿論似たような空もあるんですけど、厳密にいったらやっぱり絶対違う。

僕自身が子どもの時、あるきっかけがあって『ああ、空好きだな』と思ってから結構空を見るようになったんです。近くにあったマンションの一番高い所に登っては、兄とお小遣いを出しあって買ったカメラでしょっちゅう空を撮っていました。その12階でいつも撮っているうちに、そこに住むおばさんとも知り合いになって『今日はどう?』なんて聞かれたりしてね。そんな会話ですごく仲良くなったりもしました。ライフワークみたいになっていましたね。それって本当に豊かだったなぁと思うんです。

言葉では何も語らないけど、空は語ってくれるんです。嫌なことがあったら空を見て、より悲しくなる場合もあれば、そこから回復することもあったり・・・。幼いながらに空と向き合っていて。例えばきれいな夕方を見れば早く写真を撮りに行きたいなぁと思ったり、元旦だけは兄と分かれてそれぞれ朝日を撮って見せ合ったり。そんな興味を毎日自然に感じていました。
子どもも大人も、もっと空と向かい合って欲しい、そこかららもっと感じて欲しいなぁと思いますね。」


―― お話しを伺っているだけでもソワソワしてきます。何だか毎日空を見ていないのが損した気分!?になってきたりして。

「例えば子どもが凄いものを発見したかのようにキラキラした目で『おかあさん、雲が動いているよ!』なんて言ったりしますよね。子どもにとっては大発見です。親は流さないで一緒に付き合ってほしいですよね。
また大人になると当たり前になっている事でも、時間を巻き戻して子どもの気持ちになってみるとそれはすごい感動するっていうことは沢山あると思うのです。そういう薄れていく感動というのを大切にして欲しいな、と思います。」

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「子ども達だけでなく、お母さんやお父さんにもこの絵本を一緒に見て欲しいですね。これをきっかけに空を見ながら色々話したりしてくれたらこの作品を描いて良かったなと思えます。」



■ ご自身について伺いました。                                         


<子ども、家族と絵本の関わり>

―― 『うしろにいるのだあれ』を始めふくださんの作品は「ひとりじゃないよ」と、とても大きくて温かい愛情を伝えてくれていると思うのですが、最近ではもっと具体的なテーマ、例えば『みんなにこにこ』の様にお友達との関わりだったり、心の変化が描かれていたりする気がします。お子様が誕生されて、制作にも変化がうまれたのでしょうか?

「子どもにあたえる、という気持ちは強くなった気がします。例えば食べものでも安心感のあるもの、からだにいいものをと考えるように、描く側としてはやっぱりからだにいいもの、心にいいものをあげたいなと思いますね。

今までは作品のダミーを机の上で声に出して読む程度だったのですが、今は子どもを膝に乗せて読んでみたり。反応が見られるので、実験ではないけれどそういう役割りを担ってもらってはいますね。

言葉の重要性、音としての言葉、リズム感、そういうものを以前よりも意識するようになったかもしれません。色に関しても発見が多いですね。絵を並べて描く事が多いのですが、子どもが反応するかなと思って塗った色がそうでもなかったり。明るい色にぱっと反応するけど、じっと見ているのは意外と暗い色だったりするんですよね。

大人が思う『子どもはこうだ』という枠みたいなものは、実は存在していないのではという事がわかってきたんです。子どもはもっと広い範囲でものを感じているんですよね。
だから、もっと僕自身は自由に描けたらいいなと思うようになりました。子どもが誕生して、自分の世界を広げてもらったような感じがするんです。」


―― ふくださんのアトリエはリビングと仕事場が隣合わせ、そして奥様も一緒にお仕事をされるので境界がないそうです。それはとっても大変な事ですけど、家族にとってはとても密な時間、そして作家としてもとても影響を受ける事は多いのでしょうね。

「子どもには仕事って言う感覚がないので、わたしにも描かせろ!と言わんばかりにクレヨンを持ってきて描こうとしたり(笑)。」

やっぱり大変!?

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<絵本作家としてのふくだとしおさん>

―― 絵本作家になられて一番よかったな、たのしいなと思われる瞬間はどんな時ですか?

「絵本をつくる、それ自体がすごく楽しいです。だから、それが今できているという事が嬉しいですよね。仕事っていう感覚があまりなくて、好き勝手に絵本がつくっていられて、それが仕事になっている・・・という感じ。もちろん、制作している際には迷ったり悩んだりという事があって、それは言い換えると苦しいという事になるかもしれない。でも、僕はそれも含めて楽しいと感じます。わからないからいいのであって、逆にゴールが見えていて、それに向かって作っていくのは何だか面白くないと思うのです。ああでもない、こうでもないと言いながら出来上がったものを後で見て、その過程も含めて楽しいなと。
原画が出来上がっちゃうと、もういいや、次の作品!ってなってしまいます。そういう意味ではちょっと無責任かもしれませんね(笑)。」


―― ずっと絵はお好きだったんですか?

「そうですね。もともと絵は好きで、その頃から感覚は変わってないですね。一枚の絵と、文章を含めた何枚かの絵のつながりで表現するという違いはありますけど、基本的にはあまり変わってないです。一枚の絵の良さもあるけど、絵本というのは絵を何枚も連ねて展開していって一つの作品にします。表現の幅が出ますよね。その作業自体が面白くて自分自身が楽しんでいるんだと思います。」


―― 今後こういう絵本が描きたい、というのはありますか?

「次にこういう絵本が描きたいな・・・と思って描き留めているノートは結構たまっています。だからアイデアはたくさんありますね。今後こんな絵本をつくっていきたい!というよりは、その時その時自分の中で出てくるものを、ちょっと時間をおいて熟成してみて、いいものになりそうかなと思ったら出していきたいな、と思っています。

絵本を通して何かを具体的に強く伝えたいというわけではなく、また面白ければ何も伝わらなくてもいいと思っている訳でもないんです。大切なものがちょっとあればいいかな、と。具体的に言葉でいう場合もあるけど、そうじゃなくて空気みたいなもので語れたら一番いいなと思ってます。
子どもは言葉じゃないところで通じ合えるところがあると思うので、(今回の本も)そういうものが伝わればいいですね。」


■ 最後に・・・                                        

――絵本ナビ読者の方へメッセージをお願いします!

「子どもと絵本を読む時、はっきりいっちゃえば僕はどんな絵本を選んでもいいと思うんです。
親子で読んでいる雰囲気が一番大切です。
親がぎすぎすしていたり、忙しそうにめんどくさいなと思って読んでいるのは例えどんないい絵本でもよくないと思うんです。あまりいい本じゃなくても、親がその子にすごく楽しませたいなとか、読んであげたいなと思うと、多分それは子どもに伝わると思うんですよね。
絵本というのを親子の楽しい時間をつくる道具として使ってもらえればそれだけで充分です。
親も余裕を持って絵本を読む時間というのを本当に大切にしてもらいたいですね。絵本を読んでいるというだけじゃなく、違うコミュニケーションが存在していると思っています。」


ありがとうございました!
制作について話される時と、お子様について話される時と同じくらい楽しそうな優しい笑顔がとても印象的なふくださんなのでした。

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絵本制作は全てが楽しくて仕方がないとおっしゃるふくださんですが、それはもしかしたら新しい事に立ち向かう時の答えが見えない時の不安や悩み、それさえも楽しんでしまえる大らかな心と才能の持ち主だから出てくる言葉なのかもしれません。改めて天性の絵本作家さんなのかもしれないなぁと感じてしまうのでした。
きっと子育てに対しても同じ姿勢で取り組まれているに違いありません。
今後も御本人の中の好奇心がなくならない限り、ずっと私達を楽しませてくれる作品を生み出されていくのだろうという確信がもてて、何だか嬉しくなりました。

★絵本ナビ読者の方へ向けて素敵な直筆メッセージを描いてくださいました!

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2009年10月13日

『わたしのワンピース』誕生40年!
西巻茅子さんのアトリエを訪ねました!

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わたしのワンピース』が出版されたのは1969年。なんと今から40年も前のこと。
その間にこの絵本がどれだけたくさんの子ども達を楽しませてくれたのでしょう。
そしてこれからも小さな新しい読者がどんどん生まれていくのでしょうね。

絵本ナビでは『わたしのワンピース』生誕40年を記念して作者の西巻茅子さんへのインタビューが実現しました。
子どもの頃に読んでいたというファンの方へ、これから読まれるという方へ改めて絵本『わたしのワンピース』の魅力をお伝えしたいと思います。

西巻茅子さん プロフィール
1939年、東京に生まれる。東京芸術大学工芸科卒業。学生時代からリトグラフ、エッチングを手がけ、日本版画家協会展新人賞、同奨励賞受賞。「子どもが画をかくときの気持ちや大胆さを大切にしたい」と語るとおり、のびやかな線と明るい色調で描かれるその世界が、子どもの心に自然に受け入れられている。代表作『わたしのワンピース』は親子二代にわたるファンも多い。『ちいさなきいろいかさ』(もりひさし文/金の星社)で第18回産経児童出版文化賞受賞。『えのすきなねこさん』(童心社)で、第18回講談社出版文化賞絵本賞受賞。その他作品多数。

鎌倉にある素敵なアトリエ兼ご自宅に住まわれる西巻茅子さんを訪ねてお話を伺ってきました!

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■ 子どもが選ぶ絵本『わたしのワンピース』                        

―― まず最初に、『わたしのワンピース』という絵本が誕生するまでのエピソードをお伺いできますか?


この絵本が出版されたのは40年前、その頃はオリジナル絵本(作家さんが絵と文章、両方描かれている絵本)がほとんど出ていなかった時代だったんですね。ほとんどの絵本は物語(名作や民話など)があってそれに絵をつけるというかたち。
私は物語じゃない絵本をつくりたいと思ったんです。絵が変化していくことが面白くて、その変化を楽しめる絵本。要するに絵そのものを楽しむ絵本をつくりたい、と思っていたんです。例えば児童文学と言われるものや長い物語を短く簡単にして絵本をつくる、という様なものはつくりたくないなあと。
それでとにかく沢山絵を描いていって生まれたのがこの『わたしのワンピース』なんですよね。

ehon134.jpg 『わたしのワンピース』 西巻茅子・作 こぐま社


―― 読者の方には、「ミシンカタカタ」と楽しそうにワンピースをつくる場面や、色々な柄のワンピースを着せ替えのように楽しむ場面にとっても興味を持たれている方も多いかと思うのです。西巻さんご自身の小さい頃の体験に基づいている部分もあるのでしょうか?


小さい子どもの頃の体験の影響がすごくある、ということは後から気づくんですよね。描いている時はあまり意識していなかったんです。いたずら描きしているうちに絵が出来ていって、ストーリーと言いますか、全体の枠組みが自然に生まれてきたんです。

本ができ上がってからね、小学校からのお友達が言うんですよ。
「あなたの小学生時代そのままじゃないの!」
その時は「えー??」と思ったんだけど、確かに私の家は父が絵描きなので、大きなアトリエがあって、そこには沢山絵があって。私が遊ぶというとそこで絵を描いて遊んでいたんですよね。それに母が洋裁をやっていて、朝から晩までミシンの音をさせていたんです。父のアトリエの半分はミシンと洋裁の台で埋まっていて、布やきれが散乱しているような家だったのよね。仕事をした後の残りきれがいっぱいタンスの中に入っていて、それを引っ張り出して遊んでいたり。多分、絵を描いているうちに子どもの時に遊んでいた様な事が全部出てきたんでしょうね。


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―― そうして出来上がった『わたしのワンピース』。でも出版された当時は、なかなか大人には評価されなかったそうですね。


その頃の時代は、「子どもとはこうあるべき」「ためになるおはなし」といったものをいい絵本、心が打たれたお話と言って紹介される事が多くて。私の中にはちょっとした反発心もありました。
そういう事もあって出版された当初、大人は評価してくれなかったなという思いはありますよね。絵を見て「なにこれ?何が言いたいの?文字がほんの少ししかないからわからない。」なんて言われたりしましたよ。
でも出版されてから5~6年経ってくると、徐々に子ども達がこの絵本を好きだという事がわかってきたんです。子どもが自分で選んで本棚から借りていってしまうから「本棚にはいつもない絵本」。そうやって図書館の方が新聞の記事で紹介してくださったんです。いつもは名作と言われる絵本を「よい絵本」として評価している欄だったのに、こういう内容を記事として紹介されたので私はすごく嬉しかった覚えがあります。



■ 子どもの絵を描く力の確かさ                                             

―― 確かに絵本ナビのレビューでも「子どもが先に夢中になって」という意見が多いのが印象的ですよね。それは何と言ってもこの絵本の「絵の力」、西巻さんの作品を見ていると、子ども達の絵を描くときの楽しいという感覚にあふれていて想像力を凄く刺激されるような気がしてくるのです。プロフィールにも記載されている「幼い子どもたちの絵を見る目、絵を描く力の確かさ」という言葉もとっても気になります。その辺りも絵本作家になるきっかけとして影響しているのでしょうか、お伺いしてみました。


絵本の仕事を始める前に幼稚園の子ども達を集めてお絵描き教室を開いていたんです。そこで子ども達が教わらなくても素晴らしい絵を描くんですよね。自分達で夢中になってどんどんいい絵を描いていく姿にとてもびっくりしました。何年が続けているうちに、子どもというのはみんな絵が描けるんだ、絵が好きなんだ、ということがわかったんです。描くのも見るのも好き。あまりにも一生懸命絵を描くその姿に「絵との関係」というものが大人よりもずっと親密な感じがして。
だから子どもの絵本を描くという仕事を選んだような気がするんです。

版画家になるという道もあったのですが、子どもから大人までもっと沢山の人に見てもらえるこの仕事がいいと思ったんですね。また、こぐま社さんの絵本の制作方法がリトグラフという当時私が使っていた版画の技法に限りなく近い形の印刷方法だったのも良かったんだと思います。


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■ 人気の秘密                                                       
 

―― 例えば表紙の絵や花模様のワンピースを着ているうさぎさんの絵。個人的に子ども心にとても印象に残る場面です。書店などで並んでいる表紙を見ると安心感があるというか、「あ、これこれ。」と思える。実はすごくデザイン性があるのではないかと思ったのですが。


私は大学でデザイン科の専攻でしたので。大いにデザインを意識して表紙をつくっていますよ。またページをめくるたびに布の四角やワンピースの三角の形が大きさを変えながら何度も登場してくる場面づくりなどもね。でも実はそういうことをなかなか誰も言わなかったですね。
本が出来た時は「なんでワンピースは花模様になったの?」と、言葉の世界の事での批評をすごくされた覚えがあります。絵画的、デザイン的な視点で絵本をみるという人があまりいなかったんですよね。だから「どうして?なんで?」と言われてなかなかOKが出なくて。私は絵本を理屈で描いているわけではない、という気持ちがあったし「絵が楽しければいいじゃない」と。子ども達は、この絵本を見てぱっと惹きつけられて手にとっていたと思うんですよね。当時はそのまま支持してくれた大人はほとんどいなくて、子ども達だけが支持してくれた、って感じはありましたよね。

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―― 子どもにとってワンピースは永遠の憧れですよね。大人が思っている以上に子ども達はこの絵本を夢のあるファンタジーとして受け止めていたのではないでしょうか。


そうだと思います。私も子どものころ着せ替え人形遊びをしょっちゅうしていました。そのころはリカちゃん人形なんかはないので、紙で洋服を切り抜いてつくったりして。
まさにこの絵本そのままですね。そういうのは子ども達みんなの日常の遊び。女の子はそういう遊びが好きよね。大人になってもおばあさんになっても変わりませんけどね(笑)。だから受け入れられたのでしょうね。


―― 「ラララン ロロロン」「ミシン カタカタ」「にあうかしら」などの言葉も、読者がこの絵本が好きな理由としてあげられています。


この絵本を作っているとき、最初は絵だけで言葉はありませんでした。「絵を見ているだけでわかるでしょ?」と。言葉は後から付けたんです。だから童話になっていないんですよね。絵を見せていく為の応援歌、伴奏みたいなものかな。
だから絵と一緒になって印象に残るのかもしれませんね。


―― この絵本を制作された時は子育てをされていたんですか?


いいえ、まだ子どもが生まれる前でした。だから子どもっていうものは私にとってまだよくわからない存在だったんですよね。でも「すごくセンスがあって、絵を見る能力があって、あの素晴らしい絵を描くのが子ども」だという事は知っていたから私も本気で絵を描かなくちゃ、と当時は思っていました。絵を描く時の芯の部分って言うのかな、子どもと共通の感覚で絵を描きたいと思ったんです。

私は学生時代から絵の勉強をしているし、絵もいっぱい描いていたので流行のファッションや絵のことはよくわかっていました。子どもはそんなこと何もわからないですよね。人間が絵を描きたいと思う、そういう基本的な気持ちだけで描くんです。目の前にクレヨンや紙があればただ絵を描きたくてぐっと気持ちを集中させて描くのです。

私もそんな風に描きたいと思ったから、いわゆるデッサンなど習ってきた技法は全部捨てて、そういうものを使わないで絵を描こうと思ったの。だからこの頃は、子どもの為に絵本を描くということではなくて、私自身の表現が子どもの表現に近づけようと思っていましたね。
それが子ども達の感覚とフィットしたのかもしれません。


―― この作品が40年経った現在も子ども達が同じように楽しんでいる、という状況についてどうお感じですか?


描いている頃はね、そんなことになるとは夢にも思っていなかったですよ。今は「やったー!」と思ってます(笑)。

その頃の私は普遍性に向かって仕事をしようと思っていたと思うの。子どもの絵を見て「これが人間が絵を描く時の本当の形だ」と思って感動して、こんな風に「絵を描きたい」という普遍性を持って仕事をしていけば通用するんだろうと考えていたんです。
若い時っていうのは色んな事を考えるんだけど、その通りにいくことってほとんどないんですよね。でも私は40年続けてこの絵本が受けれられているという事は、あのとき私が考えて感じて仕事をしたことは良かったと思えるんです。子どもが「良し」と言ってくれたことはとてもありがたいと思っています。



■ 他の作品についても伺いました。                                             
  
 
―― 子どもの持つ本来の優しさが感じられる「まこちゃんのおたんじょうび」や「ふんふんなんだかいいにおい」という作品もとても好きなんです。

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まこちゃんのおたんじょうび』『ふんふんなんだかいいにおい


(一般的に)親が子どもに色々教えたり諭したり教育したりするものだと思われていますけど、私は子どもが生まれた時にはあんまりそういう風に思わなかったんですよね。「やっぱり子どもはすごいな」と思ったんです。
子どもの中には「自分が食べているものがおいしかったら半分あげましょう」という気持ちをみんな持っているんです。「わけてあげよう」という気持ちというのは誰の心にもあって、それが大きい子もいるし、小さい子もいるし。その気持ちは普遍性があると思うんですよね。だから自然と「みんなでわけあって」という社会が生まれたのだと思うのです。立派な考えだからそうしなさいとか、誰かに言われたからそう決めて生まれた訳じゃない。子どもを育てていてつくづくわかったんです。人間の中にあるものの良きところ、お互い認め合った部分、その感覚が社会化されて社会というものがうまれてきたんだなと思うようになったんです。

私の本は、お説教でもなく、「優しくしてあげましょうね」と言っている訳でもないです。みんなの心の中にあるもの、私の心の中にあるもの、そういうものが行き交えばいいんじゃないかなと思ってます。良き部分を皆さんも、と言うのではなくてね。
楽しむというのは自分の中にもあるから楽しめるんですよね。物語の楽しみってそういうものだと思うのです。

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―― 西巻さんの作品と言えば、可愛らしい動物たちがたくさん登場します。何かこだわりがありますか?また、その中でも猫さんは具体的に描かれている事が多いというか西巻さん御自身を見ている感じもしますね。


動物は特にこだわりはなくて、何の動物でもいいの。でも「わたしのワンピース」のうさぎは子どもの頃によく描いていたうさぎ、そのままですね。
(後から伺った話ですが、絵本の完成までには本当にたくさんのうさぎを描かれたそうですよ!)

猫はね。モデルがいるからね。わりと便利に使わせてもらっていますよ(笑)。物語の進行役として活躍してもらうこともありますね。『おもいついたらそのときに!』なんかでは、原稿には猫はいなかったんですけど描きたくて描いたんです。
えのすきなねこさん』もね、猫でなくてもよかったんですけど。子どもの時から猫がいつもそばにいたから表情なんかが描きやすいんですよね。


―― その『えのすきなねこさん』もとても楽しい絵本なのですが、絵描きさんの心情も垣間見れるような気がして・・・こちらもとても好きな作品です。お父さまが絵描きでいらっしゃったというのも関係あるのでしょうか?


そうですね。この作品は父を描いたんです。父が亡くなった時、絵を描く道具をいくつかアトリエから引き取ったんです。その道具を見ているうちに描いてみようかな・・・と。自然にできあがったのがこの絵本でした。父は朝から晩まで絵を描いていましたからね。

Ehon_2247.jpg 『えのすきなねこさん

 


■ 読者の方からの質問です!                           

―― 『わたしのワンピース』の「ラララン ロロロン」をどういう風に読んだらいいのか教えてください。

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(困ったわね、と笑われてから)「読んでください」とよく言われるんだけど・・・。
一度馬場のぼるさんの横で『わたしのワンピース』読んだ事あって、馬場さんはご自身の絵本をとても面白く読むんです、味があってね。
でも私は基本的に人前で気取って読むのは恥ずかしくて、ぱっぱぱっぱ普通に読んだら後から馬場さんが、
「ああいう読み方もあるんですよね。いいんですよね、西巻さんのよみかたで。」
優しく微笑みながら無理におっしゃってくださって(笑)
そんな風で私は結構素っ気なく読むんです。

でも読む人が楽しそうに読んでくれる、それはそれでとってもいいですよね。
例えばお母さんが楽しそうに歌を歌いながら読んでくれるのもいいです。
そういう所で、お母さんという個人と子どもという個人の交流が生まれる。私の絵本を通して交流があるというのがとっても素敵だと思います。そこにその人らしさがあるというのがいいんですよね。そうするとまた自分の子どもにもお母さんの記憶を伝えていったりしてね。


―― 影響を受けた絵本作家さん、或いは画家さんはいらっしゃいますか?


影響を受けた絵本作家というのはいなかったんですけど、絵を描き始めた当時にレオ・レオニの絵本『あおくんときいろちゃん』を見た時に「あ、これでもありだ。」と思えましたね。抽象というものを子どもが理解できる、という一番原点的な本だと思います。「あおくん」と名づければそれが「あおくん」になる・・・これでもいいんだな。「わたしのワンピース」をつくりながらそう思った事を覚えています。

画家で言えば・・・20世紀の近代絵画のピカソ、マチス、クレー、シャガールなんかはみんな好きでした。ちょうど絵を勉強している学生時代はそういう素晴らしい画家た沢山活躍していて。すごくいい時代でしたね
だから影響は受けていると思います。


―― どういう時にストーリーを思いつくのでしょうか?


今も四苦八苦してますよ(笑)
若い頃はふっとあふれ出てくる感じでしたけどね。40年やってくると色々な知識もついちゃうし、でも自分の中にあるピュアで子どものような心の中からぽっと出てきた様なものでつくりたいと思っていますし。そうやってうろうろしながらふっと出てきて出来上がることもあります。締め切りがあってこれこれと手順を踏んでつくっていってと言うのは無理ですし、そういう風にはつくりたいとは思っていないですね。


―― ご自身の作品の中でも思い入れのあるものは?


やっぱり『わたしのワンピース』ですね。


―― 娘さん(絵本作家の西巻かなさん!)と仕事のお話をしますか?

あまりしないですね。彼女の個性の中から生まれてくればいいと思っているので。できたものについてお互い話すことはありますけど。私も彼女が子どもの頃、自分の作品を見せて意見をしつこく聞いたりしていましたけどね(笑)。

 
―― 絵本作家になって一番楽しいと感じる時は?


やっぱり絵を描いている時が一番好きなのね。だから楽しいのは絵を描いているときです。
絵本の組み立てが決まって、後は描くだけのとき。それはすごく楽しい!
だからって朝から晩までずっと描いているといい絵がかけるとはかぎらないんですけどね。


―― オリジナル作品と他の作家さんと組まれて描く作品との違いはありますか?


作家さんと組んで描く絵には基本的に締め切りがありますし、原稿を読んでから描きます。オリジナルは絵が先に浮かんできて創作します。だから作業内容は全然違って、特に原稿がある場合は文字にとらわれるという意味ではそれなりに苦労したりもします。でも、それはそれで両方やってて良かったと思っています。だから楽しい絵本も出来てくるし、自分の絵が変化していったり、発想が広がっていくのが楽しみでもあります。


―― 絵本との関わりかたなど、絵本ナビ読者に向けて何かメッセージをお願いできますか?


子育てしているお母さんは、人生の中でいちばん充実している時だと思います。
充実している時間をほっとできる時間にするために絵本があるような気もするんです。
だから、大人も子どもと一緒に絵本を楽しんで欲しいですね。


―― 子ども達へは・・・?


子ども達へのメッセージは絵本です。
楽しんでくれればいいですね。



■ 最後に・・・                                     

<取材を終えて>

『わたしのワンピース』『まこちゃんのおたんじょうび』など、お子様が誕生される前に生まれた名作が多いというのも意外な気がしますが、

「子どもが生まれてから描き始めなくて良かったと思っている。子どもの好みに寄り添いたくなっちゃうし、喜ばせたいと思ったけどうまくいかなかった。私の個性もあるのだと思うのですがそこに創作の不思議さがある。自分の子どもに向かって行けば、普遍性から離れていくという事もあるでしょうし。」

そう語ってらした姿がとても印象的でした。

「絵本は見て楽しければいい!」そう言い切る西巻さん。でもその為には本当に真剣に子ども達と向かい合わなければいけないという覚悟が垣間見られるのです。
絵本作家である前に、一人の芸術家としての側面も見せて頂いた様な気がしました。


★★おまけ画像★★

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▲とっても素敵な雰囲気。お父様のパレットやイーゼルなどもさりげなく飾られて・・・

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▲「ワンピース」のぬいぐるみ発見!可愛いこけしちゃんは形が「ワンピース」にそっくり。お友達が見つけてくれたそうですよ。


とても明るくて本当にさばさばとはっきり語って下さる西巻さんのお話に魅了されて、あっという間に時間が経ってしまいました。
「年を取ってくると大変なのよ。」なんておっしゃっている姿も何だかとっても楽しそう。
今も「何かいいものがうまれないかな。」と毎日一枚は必ず絵を描いているそうですよ!

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ありがとうございました。

西巻茅子さんが絵本ナビ読者の方に向けてこんなに素敵な直筆メッセージを描いてくださいました!

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2009年10月07日

鈴木のりたけさん「続・しごとば」制作日記 その8

鈴木のりたけさんの「続・しごとば」制作日記は移行しました。
「続・しごとば」制作日記 その8
鈴木のりたけ「続・しごとば」制作日記


「続々・しごとば」PR日記公開中!
鈴木のりたけ「続々・しごとば」PR日記

『ゴリララくんのコックさん』発売記念!
ユーモア絵本のすすめ

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とにかく笑える絵本、面白い絵本をと、たくさんの「ユーモア絵本」を生み出されてきたのが出版社絵本館さん。
大人になった自分は「笑っている方が楽しいに決まっている」って事を知っているのに、子どもが絵本を読みながら笑ってばかりいると不安になる・・・なんて、考えてみれば不公平な話ですよね。

絵本館さんが今オススメしたい!という作品がきむらよしおさんの最新刊ゴリララくんのコックさん。もちろん思いっきり笑える絵本です。
この特集記事では、きむらよしおさんの作品の魅力とともに「なぜユーモア絵本なのか」というテーマまで含めて絵本館編集長有川裕俊さんの言葉をお借りしてご紹介したいと思います。
きっと子ども達と一緒に「面白い」絵本をもっともっと読みたくなるに違いありません。

    
 ■ この面白さ、ただものではありません。                               


きむらよしおさんの最新作がこちら!

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ゴリララくんのコックさん』 
きむらよしお・作 絵本館
※内容詳細、みどころはこちらからどうぞ>>>

★作者のきむらよしおさんにコメントを頂きました!

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きむらよしおさん
『ゴリララくんのコックさん』へのひとこと

アナは空間だけではアナになりません。
アナというものは何もない中空を囲っているカベを含めていうのでしょうが、その囲われた空間は何もなくはなくて「何もない」があるともいえます。
ちくわやパスタ類を食べるときは、その「何もない」、つまりアナも一緒に食べています。でも、アナを食べているという感覚はありません。本当はアナも食べているのですが、カベだけを食べていると思っています。


★更に絵本ナビ読者の方へ向けて直筆メッセージも描いてくださいました!

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★絵本館編集長有川さんがその魅力について語ってくれました。


「きむらよしお・絵本の魅力」 絵本館 有川裕俊

知ってるかな、車のハンドルにはクリアランスというものがある。止まっている車のハンドルを持つと少し動く。つまりハンドルにはゆとりというか余裕がある。
一般的には「ハンドルのあそび」といっている。そのあそびの機能がないと事故になる。ハンドルにあそびがあるから車は真直ぐ走る。遊園地のゴーカートのような車が街を走ったら大変。事故だらけ。あそびは車にとってなくてはならないものだ。

人間の精神も車と同じであそびがないと大変。なにより生活がギスギスするし、つまらない。人間らしく暮していくためにも心にあそびがないと、他人とすぐぶつかってしまう。トラブルだらけ。

気むずかしくて、ギスギスした仏頂面の家庭、会社。
考えただけでもぞっとする。

それにひきかえ、あそびやユーモアが、子どもというか人の一生にどれほど資するか、はかりしれないものがある。
平安時代『梁塵秘抄』の昔から「遊びをせんとや生れけむ」と日本では言ってきた。もうすこし日本人も伝統を重んじたほうがいいのではないか。


俳画というものがある。芭蕉も画いたそうですが、代表者、完成者は与謝蕪村。
『ほろにがい人生の悲しみ、心のそこからわきでる感情、それをおもてだっては表現しない日本人の感性、その境地を蕪村は俳画の世界で表現するようになった。
その俳画に「ベタづけ」と「匂いづけ」という言葉がある。
蕪村以前の俳画は、絵と句のつながり方が直接的だった。そういうベタづけをきらって、蕪村は匂いづけという絵と句をはなしてそこをやわらかく連想でつなげるようにしている。蕪村の俳画は絵と句が響きあうそういうやわらかい構造になっている。
見る人が読みとるたのしさ。見る人が参加していく参加型のジャンル。省略のきいた絵で句の意味とつかずはなれずあらわされている。』
この俳画についての長い引用は学習院大学小林忠先生の言葉です。

これはまさに絵本にたいする言葉でもあります。
今の絵本はほとんどが「ベタづけ」。子どもはわからないことが多い。だから説明してあげねばと思う。そんなおせっかいな、というか野暮な大人がつくった絵本が多い。なにごとも絵解き、説明だからおもしろいわけがない。見る人に読みとるたのしさがない。
「匂いづけ」絵本では「おもしろい」が第一。まず子どもが感覚的、直感的におもしろいと感じなければ想像力も湧いてこない。そのためには、なにより作家が絵本を創ること自体、おもしろくなければ、はなしにならない。


きむらよしおさんは、この「匂いづけ」絵本を創れる稀な絵本作家。『ゴリララくんのコックさん』という絵本には、きむらよしお的なあそびがちりばめられている。
その広大なあそびのフィールドのかなたにちくわの穴とちくわという虚と実が交錯している。『ゴリララくんのコックさん』に続く『ゴリララくんのしちょうさん』、『ゴリララくんのおぼうさん』は、更に「虚と実」「匂いづけ」が色濃く躍動している。
こんな絵本は今までなかった。

シリーズとは別の『はしれ、はしれ』という絵本に至っては「疾走する虚空」と言いたくなるほどの世界が描かれている。あるいは「静と動」それとも「虚空のなかの哀愁」かな。
しかしすべてのベースにあるのが愛嬌。そこにきむらよしお絵本の魅力がある。
ほんとうにすばらしい。絵本もここまできたか、という気持になれてうれしい。
こうした絵本を多くの子どもたちが楽しんでくれると、ことのほかではあるのだが。

最後にぼくのすきな蕪村の句を一つ。
「學問は 尻からぬける ほたるかな」


★きむらよしおさんの人気作品

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ぎょうざつくったの』              『ねこガム
 


■ 「ユーモア絵本」のすすめ                                       

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いいから いいから
長谷川義史・作 絵本館刊

冒頭でも述べた通り、絵本館の絵本はどの作品もとにかく面白い。笑える。
そしてのびのびしているのです。
これは「こだわり」なのか、「偶然」なのか。
ユーモアを愛する絵本館編集長の有川さんにちょっとお話を伺ってみました。


「なぜユーモア絵本なのか。」  絵本館 有川裕俊


心ひかれる。すきな言葉です。なにごともおもしろいから、
あるいは気になるから心ひかれる。
絵本選びも心ひかれるが基本です。

読書にとって、おもしろいが子どもも大人も大前提です。
ところが現実はおもしろいだけでは不安になってしまう大人が多い。大人たちは「人間、おもしろいだけでやっていける訳がない。へたをすると人間としてふぬけになったり、ふざけた人間になりかねない」と考えているのではないか。

反対に役に立つとか、ためになるとかそんなことなど考えずに、ただただおもしろいので夢中になって本を読む。
すると言葉に対するセンスとか、考え方にはいろいろな道筋があることとか、人とコミュニケートする能力とか、気持を明るくさせる方法とか、知らず知らず身につく。気づいたら役立っていたり、ためになっていた。
これがいい。
読書とは本来そういうものです。そうおもいませんか。

人間そういった経験を何度かするうちに、あるものが身についたりする。それを教養といいます。
なにごとも夢中になってやっていると、力も自然とつく。
おもしろいをマイナスに考えるのはやめましょう。


子どもが自ら考え行動する癖を身につけるか、つけないか。
これはその子の人生にとって重要なことです。
そのためには大人が心しなければならないことがある。子どもがなにか夢中になっているとき、大人はそのじゃまをしないことです。

絵本にかぎらず、ついつい大人はなにごとも教育的な見方で子どもをみてしまいがちです。考えて考えてなにが子どもに役立つだろうかとおもってしまう。
しかし、おもしろくなければなにごとも長続きしません。本もおもしろくなければ次を読む気がおこらない。読書にかぎらず、子どもにとっておもしろいがすべての行動の原動力・エネルギー源なのです。
どんなに高い車でもガソリンがなければ走りません。あたりまえです。同じく、どんなに世評高い良い絵本を与えても、子どもにおもしろいという気持ちが生まれなければ読書の習慣は身につかない。
すべてはおもしろいがスタート。

そんな笑える絵本、ユーモラスな絵本を子どもと一緒に
みなさんたのしんでください。
そのためには、まず大人のあなたがおもしろい、ユーモ
ラスだと思った絵本を読んであげることです。
くれぐれも大人のあなたがおもしろいとおもった絵本です。
子どもの年齢とか理解力を気にしてはいけません。


※更に有川さんのコラムを味わいたい方はこちらで楽しめます!>>>


★そんな絵本館の作品はこちらから

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 「本当に太っ腹(メタボ)で困ってます。トホホ」(有川)


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※絵本の内容詳細は画面をクリックしてください!

更にこちらの特集もどうぞ
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「笑いがとまらない!ユーモア絵本」特集はこちらから>>>


それでは皆さん、思いっきり笑ってくださいね。
 

2009年10月04日

鉄道の日記念『乗り物ひみつルポ・新幹線と車両基地』 
モリナガ・ヨウさん乗り物おはなし会

◆丸善丸の内本店で行われるイベントのお知らせです。

・鉄道の日記念『乗り物ひみつルポ・新幹線と車両基地』 モリナガ・ヨウさん乗り物おはなし会


■タイトル:
モリナガ・ヨウさん乗り物おはなし会

10月14日が「鉄道の日」ということで、鉄道の日記念

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乗り物ひみつルポ・新幹線と車両基地
モリナガ・ヨウ・作 あかね書房刊

モリナガ・ヨウさん乗り物おはなし会を、丸善丸の内本店で開催することになりました。

■日時:
2009年10月11日(日)午後2時~

■場所:
丸善・丸の内本店 3F児童書売り場

■参加:
自由
※モリナガ・ヨウさんのとっておきのお話と、乗り物クイズもあります!
※『新幹線と車両基地』をお買い求めの方に、サインをいたします。

■問い合わせ:
丸善・丸の内本店 TEL03-5288-8881
詳細はこちら>>>


【同時開催】

『新幹線と車両基地』原画展も開催します。

2009年10月6日(火)~10月19日(月)
丸善丸の内本店3Fと中央エレベーター前にて

2009年10月01日

絵本「おばけのばむけ」佐々木マキ 原画展

◆ブックハウス神保町さんから原画展のお知らせです。

・ 絵本「おばけのばむけ」佐々木マキ 原画展


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作 佐々木マキ  刊 教育画劇

お気に入りの扇子をなくしてしまった女の子、きのこ は
扇子を探しているうちに「おばけのまち」へ迷い込んでしまいました。
そこへ、一つ目のおばけ、ばむけがやってきて・・・。

かわいいおばけと人間の子どもの愉快な交流を描いた「おばけのばむけ」。ハロ
ウィンにもぴったりの絵本です。
絵本作家・漫画家・イラストレーターとさまざまな顔を持って大活躍中の佐々木
マキさんの原画展、いよいよブックハウスに登場です。期間中はサイン本販売や
読み聞かせイベントを開催します。

詳細はブックハウスまで>>>

■会期:
2009年10月1日(木)~11月3日(火)

■定休日:
毎週水曜日(祝日の場合は営業・10月28日は臨時営業)

■時間:
午前11時~午後6時30分

■会場:
ブックハウス神保町ギャラリー (東京メトロ・都営地下鉄神保町駅 徒歩1分)
■入場無料

※関連URL:http://www.bh-jinbocho.jp

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