絵本『ねこのミルとねずみのチムニー』制作秘話のご紹介!
こんな可愛らしい絵本があります。
『ねこのミルとねずみのチムニー』
原 裕朗・作 森山杳里子・絵 ブロンズ新社・刊
この作品を出版しているブロンズ新社さんの担当編集者の方が山縣綾さん。
山縣さんがこの絵本の事を語られる時、まるで我が子を見るような視点でおっしゃるのがとても印象的で、思わずこの原稿を依頼してしまったのです。
編集の方の目線を知る機会というものは、読者である私達にとっては意外と少ないものです。
その想いの深さは、作者の方に勝るとも劣らずなのです。
『ねこのミルとねずみのチムニー』の制作秘話、作者の方とのやりとり、本作品のみどころなど普段伺えない貴重なお話から、原さん、森山さんの愛猫のお写真まで見逃せない記事となりました!絵本とともにご堪能ください。
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原さんと森山さんの手がけられた、とある作品を見て
私がご連絡をとらせていただいたのは、
さかのぼること7年前でした。
当時おふたりは、別のプロジェクトを手がけておられ
「絵本を描きませんか ?」という依頼に
こたえていただけない状態・・・難しいというお返事でした。
もちろん、編集者をしていれば、そのような事はあることですから、
その時は、「うう・・・(涙)」と落ち込むけれど、
翌日になれば明るく次へとむかっていく図太さが必要です。
「そう、物忘れの良さも、編集者には必要なのさ・・・」
などとうそぶきながら、
月日は流れ流れて2009年。
突然、その電話はやってきました。
「こんにちは ! 原です ! おぼえてますか ? ?
むかし作りたいとおっしゃっていたような
絵本の作品ができたんですけど、
ブロンズ新社さんでどうかなーと思って。
だいぶ遅くなっちゃったけど」
変わらぬ歯切れのいい、作家の原さんの声。
本当に久しぶりの、うれしいお電話でした。
早速お目にかかって、見せていただいたのが
この『ねこのミルとねずみのチムニー』。
7年ぶりの再会でした。
あまえんぼミルとしっかりもののチムニーが友達になり、
はじめておうちに招待されるところから、物語は始まります。
お花をたずさえてドキドキしながらの訪問。
ところが猫のミルは、小さなねずみのおうちに入れない。
はじめてのご招待を楽しみにしていたミルは、
あんまりがっかりして泣き出します。
「せっかくよんでもらえたのに、中にはいれないよー」
「泣かないで、きっといい方法があるよ」
やさしいチムニーが頭をひねって・・・
そうだ ! と、思いついたのは、
ミルの体をバラバラに招待すること。
ええ! ! 一体どうするの?
・・・というが、物語のあらすじ。
まず、めくりの面白さをいかした
おもしろい構成に目がくぎづけに。
ねずみの家の「中」と「外」の場面をくりかえしながら、
ミルとチムニーの中と外からの
かわいい会話が進んでいきます。
読み聞かせてあげたら、小さな子も楽しめる
楽しいストーリーです。
家の「外」は豊かな自然に囲まれたシーン
ミルの表情が、なんともいえずかわいらしい !
まずは玄関から、おそるおそる前足を入れてお邪魔します。
家の「中」は、楽しいインテリアとチムニーの表情にフォーカス !
前足にそっと触れているチムニーの、
なんとうれしそうなこと。
でもそういえば、小さなころ、
仲良くなったお友達と手をつなぐのって
うれしはずかしの、大切な瞬間だったなぁ。
そんなはじめての友達との間に生まれる
うれしい気持ち、いたわりの心が
この本のテーマ・・・だと思います。
全篇、生き生きとした2匹の表情としぐさが
たまらなくチャーミング。
そして、クラシックな雰囲気の水彩画で描かれた
森の野の花や自然がとても美しい。
植物が大好きな画家の森山さんが
動物たちとのサイズの対比や、季節にまでこだわって
丁寧に描いています。
お話とイラストをいただいてから
さらにディスカッションをしつつ構成を整えて
イラストにも加筆、修正を加え
テキストを何度も見直していただき
最後は色校正で四苦八苦(淡い水彩画は色が出しづらいのです)。
試行錯誤の末、先日・・・
やっとやっと本の形になりました。
早速できあがった本を見に、弊社にお越しくださった
著者の原さんと森山さん。
20ウン年来、コンビをくんで
さまざまにお仕事をされてきたふたり。
一般書や、雑貨・アニメなどのお仕事も手がけてきました。
でも、絵本の仕事は中でも特別。
完成して本当にホッとされたご様子です。
聞けば
作家の原さんは、4匹の猫と3匹の犬たちと、
画家の森山さんは、2匹の猫たちと暮らす
大の動物好きコンビ。
森山さんはハムスターを飼っていらしたこともあるそうで、
猫とねずみの動きや表情の自然な愛らしさに
なるほどと納得させられたのでした。
さてここで・・・
著者のイメージの源である猫たちを
感謝もこめて、特別にちょっぴりご紹介・・・
原さんのおうちの4匹。
森山さんのおうちの2匹。
気ままな2匹はうわさによると
旦那様より大切にされているらしいですよ・・・
実は原さんのおうちには、
さらに3匹の犬たちもいるんです!
そろって何を見ているのかなぁ?
みんな、すっかり家族の一員・・・なんですね。
どのこもそれぞれに個性的で、かわいいです。
さてさて「ミルとチムニー」、
実はすでに第2弾を制作中。
2作目のラフが先日あがったのですが
これがまた、すばらしいできばえ !
ここで、お見せしたいくらいなのですが・・・
それは来春、乞うご期待です。
かわいい2匹が、自然の中をかけまわる
元気いっぱいの作品になりそうです。
シリーズ第1弾『ねこのミルとねずみのチムニー』
子どもから大人まで、楽しんでいただける絵本になっています。
どうぞ2匹と、友達になってあげてください。
編集担当 山縣彩