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クルミ森のおはなし①『クルミおばばの魔法のおふだ』
作者末吉暁子さん、画家多田治良さんにインタビューしました!

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「ぞくぞく村のおばけ」シリーズ「きょうりゅうほねほねくん」シリーズ、「ざわざわ村のがんこちゃん」シリーズ(テレビ版脚本、読み物)等々でユニークな作品をたくさん生み出されている作家末吉暁子さん。末吉暁子さんの作品はこちら>>>
そんな末吉さんが新たに取り組まれたのが「クルミ森のおはなし」シリーズ。その第1弾が発売されました!

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クルミおばばの魔法のおふだ
作・末吉暁子 絵・多田治良  ゴブリン書房

夏休み。コータとお姉ちゃんのユカは、おじいちゃんに「クルミ森」につれてきてもらいました。セミ採りに夢中になったコータは、みんなとはぐれてしまい、木と葉っぱの手足をした女の子・クルミっこと出会います。コータはいつのまにか「クルミおばばの森」へ迷いこんでしまっていたのです・・・。(小学校初級~)続きはこちらから>>>                            

クルミ森の豊かな自然を舞台に繰り広げられる、ちょっぴり不思議でゆかいな物語です。
そして、物語をより奥深く、より魅力的にみせてくれる絵を描かれているのが多田治良さん。
「おばけ屋」シリーズのおおらかで大胆な絵が魅力的な画家さんです。

そんなお二人が、発売を記念して絵本ナビオフィスにお越しくださいました!
作家さんと画家さんのおふたりに同時にインタビューというのは初めて。
物語はどの様に生まれてくるのでしょう、絵本を制作される時との違いはあるのでしょうか、
大変貴重なこの機会にちょっぴり緊張しながらも・・・「クルミ森のおはなし」シリーズについて、またお二人御自身の話、読者に向けてのメッセージなど沢山お伺いしました。


■ 「クルミ森のおはなし」誕生のきっかけ

―― このお話は何と言っても、大きくて立派なクルミの木がとても印象的。そんな木のあるこのクルミ森を舞台に物語を書こうと思われたきっかけというのはあったのでしょうか?

末吉暁子さん(以下敬省略):「たまたま去年の秋頃、うちの夫が子どもの頃、戦争で疎開していた、高尾山の麓の小仏峠という所へ出かけたんですね。そうしたら、そこへ到る途中に森があって、それがとてもいい感じだったんです。更に、他にも色々な出来事や思い出があった場所をまわったりしながら、疎開していた家にも行ったんです。戦時中なので60年以上も前だったのにも関わらず、当時子どもだった方々が夫の一家の事を覚えていて下さったんですよね。
そんないろいろな事があってから、また森の風景を見ると全然違うように見えたんです。ああ、こんな森が舞台になった物語を書いてみたいなぁと思ったんです。ただ、そこにクルミの木そのものはなかったんですけどね。」


―― ではクルミの木は想像されて書かれたんですか?

末吉:「そうですね。ただ、実際にはその森の入り口付近に大きな美しい紅葉の木が立っていてとても印象だったんです。
そこで物語としては、クルミの木の実、木の精、そういうものがクルミおばばに繋がるような象徴的なものとして思い浮かんだので、森の入り口に立つクルミの木というものを想像して書いたんです。小川の風景や渓谷、森の印象などはそのままです。クルミの木は(絵を描かれた)多田さんが実際に近くで見に行って来てくださったんですよね。


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 またこの物語にはおじいさんが出てきますよね。おじいさんの話を通して疎開や戦争などの話も伝えたいというのもあるんです。ただ、最初からそういう事を言っても今の子はピンと来ないだろうという事もあって、最初は面白いお話をつくったんです。
これからシリーズが進むにつれてそういう事も伝えられたらいいなとは思っています。」

―― (多田さんにお伺いします)見返しにはクルミ森の地図も描かれていますね。こういう地図などは末吉さんと多田さん、お二人で決めながら描かれるのですか?

  多田治良さん(以下敬省略):「いいえ、すでに末吉さんの文章が最初にありました。そのストーリーを読みながら僕の中で、クルミ森とはこういう森でこういう小川が流れていて、クルミの木はこういう木かな・・・など想像しながら描いていきました。
  近くの目黒区の林試の森公園という所にクルミの木がありまして、そこでスケッチしたりして。それをまた末吉さんにぶつけてみて、いやここにはこういうのがあった方がいいというやりとりがあったりして。そんな風にして出来上がっていきました。」


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―― 絵を描かれる方はそんな風に実際に取材をされる方も多くいらっしゃるかと思うのですが、末吉さんも物語を書かれる時に実際に見られたものからインスパイアされる事は多いのですか?

末吉:「そうですね。頭の中だけでつくっちゃうとなんとなくリアリティがなくなっちゃう、という事もあるんですよね。また、実際に風景を見たことで内容ががらっと変わった、ということもありました。

以前、林明子さんと組んで書いた絵本『もりのかくれんぼう』という作品なんですが、最初に思い描いていたイメージは真っ黒い森のイメージだったんです。
  林明子さんはもともときちっと取材をされて絵を描かれる方なので一緒に軽井沢の森の方へ見に行ったんです。紅葉の真っ最中で、金色がとってもきれいだったんですね。それで文章はころっと変わりましたね。<きんいろにけむったような秋のもり>というイメージになったんです。」

 ★1977年に長編第1作として書かれた「星に帰った少女」の舞台となった場所を、リニューアル出版の機に再び訪れている取材記録が末吉さんのHPに掲載されており、こちらも作品と合わせてご覧になるととても興味深い内容なのです!こちらから>>>
  


■ キャラクターの魅力

―― 末吉さんが書かれる物語の魅力の一つはそのユニークなキャラクター!例えば「ぞくぞく村のおばけ」のユニークなおばけ達、破天荒で子どもらしい性格の「がんこちゃん」や一風変わった登場人物などなど。今回も架空の世界と現実の世界の橋渡しをしてくれるくるみっこを始めとして色々なキャラクターが登場しますね。


末吉:「そうですね。やんちゃな男の子コータだったり、ひきがえるのヘータロだったり、おばばだったり。特にクルミおばばについては「森の守り主」と言っていいような、超自然的な存在というものを一度描いてみたかったというのがあるんです。ちょっと怖いような、でも親しみがあるように人間くさいような部分も出してみて。顔もくるみの殻をちょっとずらした感じのカスタネットみたいな感じで・・・なんて言ったら多田さんがイメージ通りにキャラクターを描いてくださって!とても気に入っているんです。」

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―― そんな独特な性格を持つユニークな登場人物を多田さんが描き出されたんですね・・・

多田:「末吉さんの文章から、おばばはこんな感じかな、コータやくるみっこはこんな感じかなと想像しながらキャラクターをつくっていきました。僕が考え出したものを末吉さんや編集の津田さんに提示して、また練り直したりして。それなりに色々と時間はかかりました(笑)。」


―― 確かにこの物語の中で、クルミおばばとくるみっこのその姿は物語の印象を決めるとっても大事な存在こんなやりとりの中で生まれていくのですね。

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▲そして生まれたクルミおばば!確かに性格がにじみ出ているような。

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▲おばばの部屋。細かく見れば見るほど魅力的!
切りかぶのテーブル、細い草の葉で編んだテーブルかけ、ひょうたんや貝殻のおちゃわん、
木のいすやベンチなど、眺めていると更にその物語の世界を深く楽しめるのです。

末吉:「今制作中の2巻目には、おじいちゃんのちょっと不思議なことが描かれていますよ。」

そういえば、最後の方の終わり方には色々な含みがあるような(おじいちゃんの思い出、とかね)。一体どんな展開になるのでしょう。



■ 森の四季の移り変わりを描く

―― 「クルミ森のおはなし」はシリーズを通して春・夏・秋・冬と森の四季を描き出される予定なのだそうです。最初に登場した第1作目の季節は「夏」。随所に夏ならではの魅力にあふれた表現が登場します。生い茂る緑の木々は見ているだけでも気持ちよく、今にもセミの大合唱が聞こえてきそうです。そしてクルミおばばが作るかんろ水、ひんやり冷たくて美味しそうにみえますね・・・。

末吉:「そうですか?かんろ水は読者の方に飲みたいかどうかは微妙、と書かれた事がありますよ(笑)。確かに色々なものが入っていますし、特に極めつけの秘伝のたれがね。」

―― そういえば、見た目は何だか美味しそうなのですが、想像のつかない色々なものが入っているんです(詳しくは読んでみてね!)
じゃあ、さすがに実際につくってみたなんてことは・・・?

末吉:「そこまではしませんよ(笑)。架空の飲み物なので実際には手に入らないものをわざと持ってきてるんです。どんな味なのかなぁと、読んでくれる人が想像してもらいたいですしね。でも、しそジュースとかは最近ちょっと凝っているんです。しそを煮て、こして砂糖と酢を入れて出来上がり。すっとして美味しいですよ。」

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―― クルミ森の四季を描きながら、子ども達に感じ取って欲しいことは何かありますか?

末吉:「自然や森が生かしているものは人間だけでなく、小さな虫から小さな動物、それから大きな動物まで全部ひっくるめて生態系として森の中でめぐりめぐって生きているんです。人間だけが生かされているわけじゃない、そういう部分が描けたらと思っています。」

―― そういう自然というものを絵にするのは難しいですか?

多田:「僕は東京の下町育ちなんです。だから田舎の森で遊びまわった体験というのはあまりないんです。どちらかというと森は憧れの存在ですよね。それは大人になった今も子どもの時も変わらないですよね。森の中を走り回ったり、動物に出合ったり、その時の驚きなんかを体験したかったなぁと思うのです。例えば、大人になって子どもと一緒にキャンプに行ったりしても、うっそうとした森の奥を見てしまうとちょっと怖くてそれ以上は立ち入れなくてくるっと引き返してしまったり(笑)。そういう部分も含めて表現したいなあとは思ってますよね。」


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―― 1巻目が「夏」と言う事は、2巻目は・・・?

末吉:「秋の森が舞台です。秋のクルミまつりが行われるんです。紅葉の美しい森と、お祭りに集まってくる森の新しいキャラクターが沢山登場してきます。」

多田:「そうなんです。新しいキャラクターは沢山描きました!あ、今日はちょっと持ってきていますよ。」


今まさに制作の真っ最中とのこと。そのラフをちょうど持っていらっしゃったという多田さん、編集の津田さんも初めてご覧になるというその貴重な場面にラッキーにも居合わせてしまうというハプニングもありました。(遠くからその様子を拝見させて頂きました。)

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▲紅葉の場面の美しさに目を奪われます・・・。まだ未決定なので完成品は発売を楽しみにしてくださいね。


■ 『クルミおばばの魔法のおふだ』のみどころを伺いました!

―― これから読まれるであろう方に向けて、おふたりに改めてこの物語のみどころをお伺いしてみました。

末吉:「クルミっこ達と一緒に歌ったり楽しんでもらえたら嬉しいですね。
例えばいつもちょっと不機嫌なヒキガエルのヘータロや、こわいところもあるけど豪快で人間味のあるおばば、やんちゃなコータなどのキャラクターも、例えば声に出して読まれるんだったら声色を変えてみたりして楽しんで欲しいですね。」

―― 歌も沢山出てきますよね。
末吉:「以前、テレビ版がんこちゃんの中でもよく途中で歌が入っていたんですね。それで子どもたちが嬉しそうにしているのがいいなあと思って。それからは読んでいる子ども達が喜んでくれるように、機会があれば歌の場面を入れたいなぁと考えるようになったんですね。」

―― 楽しい詩が印象的。メロディーもあるんですか?

末吉:「リズムやメロディーなんかは特に考えていないので、読んでいる人が好きなように適当に入れて楽しんでくれると嬉しいです。」

―― (多田さんにお伺いします)特にここは見てもらいたい!という場面を教えてください。

多田:「おばばの家の場面(※上記参照)や、おばばの家の入り口の場面なんかですね。(※クルミの殻が並べて飾ってあったりして、こちらもとても愛らしいんです。)
後はやっぱりおばばなり、くるみっこなり、コータなりのキャラクターですね。」

―― 今回の多田さんのタッチは、既刊「おばけ屋」シリーズの絵のタッチと驚く程違いますね!

多田:「今回はタッチをがらっと変えてください、という要望もあり細い線で細かく描いています。」

(※編集の津田さんよりこのあたりをご説明いただきました)
ファンタジーの中でもこの本のように骨子がしっかりしていて、リアリティーの延長線にあるファンタジーであるという事や、コータが現実と架空の森を行き来するという事もあり、リアルさを保ちつつ異世界に行くという意味でも今回はこのような細密なタッチでお願いしました。

確かに森の様子や、部屋の様子、表情など細かい部分まで描かれていることが、子ども達にとってもかえって安心して架空の世界を楽しんだり思いっきり想像したりできるのかもしれませんね。
更に、森の木々の大胆で大らかな表現と線描とのバランスも独特で面白いのです。更に2巻目からの表現方法も楽しみになりますね。


■ 末吉暁子さん御自身について伺いました。

―― 今後こんな物語を書いていきたい、というのはございますか?

末吉:「今まで小さい子向きの童話から高学年向けの児童文学まで色々な物語を書いてきました。でもやっぱり小さい子が喜んでくれると嬉しいんですよね。

先日もね、「ぞくぞく村のファンです」って近所の幼稚園に通っているという女の子がお母さんと一緒にお手紙を直接自宅に置いていってくれたんです。小さい子が自分で読んで面白いって言ってくれるのがいいじゃないですか。親から勧められたり課題図書で選んだという訳でもなく自分で選んで読んでくれたのが嬉しいですよね。

だからこれからも、こんな小さな子達が喜んでくれる様な物語が一番書きたい!と思っています。また、絵本というのは全然つくり方が物語とは違うものだと思うのです。だから、やっぱり小さな子でも読める物語というものを作っていきたいですね。」

―― 「ぞくぞく村」は特にテレビ絵本(NHK教育テレビ)になって放映されてからの反響も増えたのでは?

末吉:「そうですね。最近また反響が増えたように思います。テレビ絵本がきっかけとなって、また本を読んでくれたらそれはとても嬉しいですよね。
このテレビ絵本というのは、ナレーターの人の感じで大分印象が変わったり、ちょっと動いたり、そのバランスが結構面白いですよね。」

―― 最後に絵本ナビ読者に向けてメッセージをお願いできますか?

末吉:「親子で一緒に楽しめるというのは低学年向けの童話ならではだと思います。
子どもと一緒に読みながら、親の世代の人もちょっと童心に返ってストーリーの楽しみを共有してもらえたらと思います。

また小さい子向けの童話にとって、絵はとても重要なんです。
「クルミ森のおはなし」なんかも絵を見ただけではちょっと笑ってしまう、なんて場面があると思います。
そういうところは絶対親子で共有できると思いますね。

そんな風に本を読みながら親子で一緒に共有(笑ったり楽しんだり)できたらいいですよね。」


★末吉暁子さんが絵本ナビ読者の方へ向けて素敵な直筆メッセージを書いてくださいました!

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■ 多田治良さん御自身について伺いました。

―― 多田さんはずっと広告やイラストの仕事を手掛けられてきたそうですね。「おばけ屋」シリーズでの大らかで大胆なタッチはずっと児童書を手掛けられてきた方と思うくらいのびのびと魅力的な絵だと思います。児童書、絵本を描かれるようになったきっかけというのはあるんですか?

多田:「学生の頃から絵本の世界には興味があったんです。仕事をしている時は広告の仕事が多かったので、なかなか機会がないという事もあったんです。
それで、粟田と(デザインスタジオで一緒に仕事をされているあわたのぶこさん)そろそろ始めますか・・・と児童書の創作に取りかかりました。「おばけ屋」シリーズの時は、墨と筆ではみ出すような感じで描こう!とはじめたものです。」

※現在は、あわたのぶこさんとのコンビで数々の作品を発表されている多田さん。多田さんの作品はこちらからどうぞ>>>

―― 絵本も読みものも制作されているそうですね。今回の「クルミ森」のように物語の絵を描かれる時の楽しさはどんな所でしょう?

多田:「やっぱりストーリーですね。ストーリーの世界の中でどういう絵にしようかと考えたり、流れを断ち切らないようにしながらどう描いていくかと考えながら制作していきます。

広告の仕事の時は一枚で完結させていく事が多いのですが、こんな風にストーリーのある世界をつくっていくのはまた全然違ってそういう流れを感じながら、という部分が楽しいですね。」


―― 最後に絵本ナビ読者に向けてメッセージをお願いできますか?

多田:「本をじかに手にしてページをめくる楽しさ。次に何が出てくるのか期待する感覚。
そういう手触り感というのは子どもには必要なんだと思います。
本に触れることでそんな経験をたくさんして欲しいと思いますし、子ども達が思わずめくりたくなるもの、楽しさで惹きつけられるものをつくりたい、というのは常にあります。
僕は、これからもそんな風にものをつくっていきたいと思っています。」

★多田治良さんが絵本ナビ読者の方へ向けて素敵な直筆メッセージを書いてくださいました!

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このまま一つ絵本が出来上がっちゃいそうですね。


■ おまけ画像!

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▲末吉暁子さんが特製「がんこちゃんせんべい」を送ってくださいました!可愛い。
  「がんこちゃん」らしくなかなかの歯ごたえでした(笑)。


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▲こちらは多田さんの近刊絵本です!また雰囲気が全然違いますよね。
(書店では流通していないものの為、残念ながら現在は購入できません。)

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▲最後に記念にパチリ。

末吉暁子さん、多田治良さん、ありがとうございました!

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