« 鈴木のりたけさん「続・しごとば」制作日記 その16 | トップページに戻る | 絵本『うんこ!』
作者サトシンさんが遊びに来てくださいました。 »

100202_butanotane_468_120.jpg

ぶたが木にたわわの名場面を生み出した佐々木マキさんの大人気作品『ぶたのたね』
それから16年が経って続編『また ぶたのたね』が再登場した時は本当に驚きました。
今度は(わずか?)4年の時を経て再々登場の第3弾『またまた ぶたのたね』!!


ehon299_2.jpg ehon8527_1.jpg Ehon_34510_q.jpg
 「ぶたのたね」       「また ぶたのたね」   「またまた ぶたのたね

あれからおおかみはぶたを食べることができたのでしょうか・・・?
※各絵本の内容詳細は表紙画像をクリックしてください。

今回、その最新作の発売を記念して「ぶたのたね」シリーズ作者の佐々木マキさんよりコメントを頂くことができました!!

また、「ぶたのたね」シリーズを始め、佐々木マキさんの魅力的な絵本を数多く出版されているのが絵本館さん。その絵本館編集長有川裕俊さんが、『またまた ぶたのたね』の発売までの貴重なエピソードや佐々木マキ作品の魅力について熱く語ってくださいました。

絵本ナビ読者の皆さんに、是非じっくりと読んで頂きたい興味深い内容となっています。お楽しみください!


■佐々木マキ(ささきまき)
1946年神戸市生まれ。絵本に『やっぱりおおかみ』『まじょのかんづめ』『おばけがぞろぞろ』『くりんくりんごーごー』(以上福音館書店)、『変なお茶会』『ピンクのぞうをしらないか』『はいいろこくのはいいろひめさま』『ムッシュ・ムニエル』シリーズ(以上絵本館)、『やまからきたペンギン』(フレーベル館)、『ねむいねむいねずみ』シリーズ(PHP研究所)、『おばけのばむけ』(教育画劇)など。童話に『なぞなぞライオン』『おれはレオ』(以上理論社)などがある。

※佐々木マキさんの作品一覧はこちらから>>>



■ 作者佐々木マキさんにいくつか質問をしてみました!         


―― 『ぶたのたね』から20年、『また ぶたのたね』から4年!そして待望の第3弾『またまた ぶたのたね』。最新作について、「ここがポイント」というのがございましたら教えて頂けますか?


〈読者に楽しんでもらえるかどうか〉毎回これがポイントです。
私は絵本を子どものための娯楽と考えていますので、
おもしろいものを作るのが私の仕事です。



―― 今も変わらず大人気の『ぶたのたね』。誕生のエピソードなど教えて頂けますか?


なにか軽くて、ばかばかしいものを作ってみたかったのです。
あまりチカラをいれずに気楽にかいたのですが、20年のあい
だに思いがけず多くの読者を得ることができました



―― 『やっぱりおおかみ』からの<佐々木マキオオカミ>ファンです。
佐々木マキさんにとって、オオカミというのはどんなキャラクターと考えていますか?


『ぶたのたね』シリーズのおおかみは、しくじったり、ひどいめにあったりするのですが、そのわりにはあまり可哀そうとか気の毒という気がしてきません。それにめげないだけの強さと〈そのうちいいこともあるさ〉という楽天性を持っているからでしょう。
作者としては、とても使いやすいキャラクターです。


―― 絵本ナビ読者の皆さんにメッセージをお願いできますか?

sasaki_blog1.jpg


佐々木マキさんから直筆メッセージを頂きました!
・・・感激です。そして、4作目も期待しちゃっていいんですね?


■絵本館編集長有川裕俊さんに佐々木マキ作品の魅力についてお伺いしました!   

佐々木マキさんの魅力的な作品を数多く出されている出版社絵本館さんの編集長
有川裕俊さんの文章をご紹介します。



またまたぶたのシンフォニー            
              
                   絵本館 有川裕俊

佐々木マキさん。
ガロ世代の方には漫画家として、
村上春樹ファンには
村上さんの本のイラストレーターとして
お馴染みです。
ちなみに村上春樹さんは学生時代から
佐々木マキさんのファンだったそうです。
村上春樹の世界、佐々木マキの世界、
相通ずるものがあるわけです。
そして絵本作家としての佐々木マキさんは
子どもから大人まで、
その独特な世界へといざなってくれる
水先案内人でもあります。
絵本館には、そんな佐々木マキワールドを
たのしめる絵本がたくさんあります。
変なお茶会』や
ムッシュ・ムニエル』シリーズ。
そして、今回の『またまた ぶたのたね』の
前作、前々作にあたる『また ぶたのたね』『ぶたのたね』などです。

実は、この『ぶたのたね』は今から二十何年も前に、
今は作家として活躍の湯本香樹実さん(『夏の庭』『くまとやまねこ』など)から
「おもしろい絵本があるのよ」と教えてもらったのがきっかけで
出版することになった絵本です。
一見して「おもしろい!」と思いました。
ところがというべきか、うまいぐあいにというべきですね、
その出版社は一般の書店では
この『ぶたのたね』を販売していないとのこと。
それなら絵本館で出版させていただこう、ということで
絵本館版『ぶたのたね』が誕生したのが1989年。
以来、重版をかさね、今では親子2代で
楽しんでいただく人気絵本となりました。

2005年の夏の終わり、マキさんから
「有川さん、ながらくおまたせしました。
『ぶたのたね』の続編の構想が
やっとまとまりました」
という電話が入ったのです。
16年もたち、すっかり続編のことはあきらめていたので、
その時の社内のよろこびは大変なものでした。

『またまたぶたのたね』は、16年もたたず
2009年秋に原稿をいただきました。
『ぶたのたね』が1989年。
『また ぶたのたね』が2005年。
そして『またまたぶたのたね』が2009年。
だんだん間隔が短くなっています。
まるでブラームスのシンフォニーのようです。
ブラームスは第1シンフォニーを仕上げるのに20年かかりました。
ところが、第2、第3はあっというまだったそうです。
なにか堰を切ったようにということが芸術家にはあるのですね。

今回も、とてつもなく走るのが遅いおおかみが主人公。
なんとかぶたをつかまえて食べたい。
そこできつね博士から
「ぶたのたね」というものをもらいます。
ところが結末はというと・・・・。
このあとの展開は、
みなさん絵本を手にとってたのしんでください。
マキさんファンはもちろんのこと、
たくさんの子どもや大人が
たのしめる絵本がまたまた誕生!
と相成りました。

実は、こういったユーモラスな絵本をつくれる作家は
とても少ないのです。世界的に見ても少ない。
意外かもしれませんが、それでも日本は特別に多い国、
だと思います。
でも10人はいないかもしれません。
佐々木マキさんは、そんなユーモアやナンセンスを
絵本で表現できる数少ない作家のひとりです。

「ユーモラスな絵本やナンセンスな絵本を読んで
子どもに何が身につくのですか?」
と真面目な方から問われることがあります。
ぼくの答えは簡単です。
「子どもがユーモアや冗談をたのしめる人に
なってくれるといいな」です。
ユーモアって心の余裕、ゆとりです。
ナンセンスはいろいろな角度から
物を見る訓練に最適なものです。
おもしろいとおもっている、その上こんな余禄が
ついているんですから、いうことありません。
グリコではないけど、二度おいしいです。

真面目を金科玉条にしている人と生活するのは
つらいものです。
家庭でも学校、会社でも、ユーモアや冗談で
笑いがたえない生活がいい、とぼくはおもっています。
まあ、人それぞれですが。

大人はユーモアやナンセンスの絵本を見て
「大人のわたしがおもしろいとおもったのだから
子どもには無理だろう」とおもいがちです。
ところが、大人が考えるより子どもの
おもしろいものに対するキャパシティはずっと広い。

あたりまえですが子どもはおもしろいものに貪欲です。
それにおもしろくなければ長つづきしません。
読書にとっての肝心要はおもしろいです。
役にたつとか、ためになるというのは、
おもしろいとおもったあとに自然についてくるものです。
「なにごとも熱中してやれば自然となにかが身につく」
そんな気楽な気持ちで、子どもと絵本のことは考えるといい。
知識も教養も、人それぞれのおもしろいから生まれるものです。

これをとりちがえている大人は多い。
ここが絵本だけでなく、子どものことに関するボタンの
かけちがえのスタートです。
かわいそうですがとりちがえた人は、
あと混乱がまっているだけです。
つまり子どもに絵本を読んであげながらイライラすることに
なりかねません。
そんな話だとおもいませんか。  

繰り返します。
読書にしてもなんにしても、子どものおもしろいをおろそかにしない。
つまり興味や関心が芽生えたのですから、それを見まもる。
長つづきのためにもおもしろいがすべてです。
そして、気づいたら知識も教養も身についていた。
身についてこそ教養です。

なによりもおもしろいが最優先です。
子どもだけでなく、大人のあなたも
おもしろいが重要です。
大人のあなたがおもしろいとおもった絵本を
子どもにすすめる。なんの問題もありません。
言ったように子どものおもしろい絵本にたいする
キャパシティは大人が想像するよりずっと大きいのです。
このことは自信をもって言えます。
理由は、毎日届く愛読者カードです。
様々な「声」を日々読んでいるのですから
「おもしろいと思う気持に年齢は関係ない」
と、確信させられます。

たとえば『変なお茶会』。
「なぜなのでしょう、2歳の子どもが気に入って、おどろきました」
などというお便りがたくさんきます。
シュールな絵本。意外でしょうが、これがけっこう子どもには人気なのです。
ためしに子どもと見てください。
おもいもよらないことでしょうが、『変なお茶会』には
子どもの大好きなものがたくさん登場します。

わたしの子ども(すでに30歳すぎています。)、それに姪たち、
いまや孫たちにも人気の絵本です。
「子どものときも気に入っていたけど、
大人になった今もすきだなあ」。
姪のことばです。

最後にナンセンスの本領をあますところなく表現した
俵万智さんの文章をご紹介します。


子どもと私が手にしている絵本のラインナップを
見た友人が、「とてもいいけど、足りないものがある。
それは、ナンセンス系だ!」と言いました。
で、彼のオススメの中の一冊が、『ぶたのたね』でした。
何気なく読みはじめたのですが、まさか、ほんとうの
ほんとうに「ぶたのたね」だとは思っていなかった息子と
私(つまり、それほどまでに常識というものにしばられて
いたんですね)。
ぶたの実が、たわわになっているページを開いたときの
衝撃は、今も忘れることができません。
「ぎゃははははは、ぶただ、ぶただ!」
「ほんとうに、ぶたのたねだったんだ!」
二人で、こわれたように笑い続けました。その爽快感。
かたくなった心の筋肉が、ほぐされていくようでした。
ナンセンスの力というのは、こういうことなんですね。
後に本屋さんで、息子が『またぶたのたね』を見つけた
ときの目の輝き、それも忘れることができません。


俵万智さんの息子さんへ『またまたぶたのたね』を
ご紹介したくなる文章です。

子どもに絵本を選ぶなら 絵本ナビ 子どもに本・教材を選ぶなら まなびナビ