絵本作家山村浩二さんのアトリエを訪問しました!
人気絵本『くだもの だもの』に引き続いての名コンビ作品が発売となりました!みずみずしくて美味しそうな野菜たちが準備運動をしている様子が何とも愛らしい表紙の絵本『おやおや、おやさい』です。言葉遊びの達人石津ちひろさんの文章をユーモラスな絵で見事に視覚化しているのが山村浩二さんです。
今回はその発売を記念して、山村浩二さんのアトリエ訪問、インタビューが実現しました。
山村浩二さんは、アニメーション作家として、その作品の国際的な受賞が60を超えるほどの大活躍をされている方なのです。そんな山村さんの絵本の制作方法とは・・・?
『くだもの だもの』、『おやおや、おやさい』のお話を中心に、制作の秘密からみどころなどたっぷりお話をお伺いしました。素敵なアトリエの様子も必見ですよ!
山村浩二(やまむらこうじ)
1964年、愛知県生まれ。東京造形大学絵画科卒業。短編アニメーションを多彩な技法で制作。作品に『パクシ』『年をとった鰐』など。『頭山』がアカデミー賞短編アニメーション部門ノミネート、6つのグランプリ、『カフカ 田舎医者』が7つのグランプリなど、国際的な受賞は60を超える。絵本に『くだもの だもの』『おやおや、おやさい』(福音館書店)『あいうえおとaiueoがあいうえお』(小学館)など。東京都在住。
『くだもの だもの』 石津ちひろ・文 山村浩二・絵 福音館書店刊
▲夏の海水浴場でくり広げられる果物たちの愉快な行動を、ユーモラスな絵で描いた言葉遊びの絵本です。
―― 絵本ナビでも人気の絵本『くだもの だもの』。まず石津ちひろさんの言葉遊びの面白さというものがあって、そこに、山村浩二さんの愛嬌のある絵によって違う世界が広がっていき、子ども達も大喜び。暗記してしまうくらいです。その組み合わせがとても絶妙なのです。まず不思議に思うのが、どうやってその2つの世界が組み合わさっていくのか、という部分です。
最初に石津さんのテキストを頂くんです。その時は構成(順番や組み合わせ)というのは決まっていないんですね。石津さんの案として、果物にまつわる様々な言葉遊びをたくさん頂いて。だから、実は実際に本文に使われている以上の数のテキストがあったんです。
── その石津さんのテキストを最初に見られた時の印象はどうでしたか?
それはもう本当に、楽しいなと思いました。果物たちが生き生きと動いてる様子が見えてくるといいますか。
でもそこで、単純に言葉の絵解きだけの絵本じゃ面白くないかなというのがあったんです。石津さんのテキストを読んでいく中で、たまたま「海水浴」というテーマで、夏とかスイカが出てきたところから一つの情景が浮かんできたんですね。一個一個は、本当にばらばらの言葉遊びなんですけど、「海水浴」という所に関連するところで組み合わせていけば何かストーリー性が出てくるんじゃないかなというのが見えたんです。
「かいすいよくには いかない スイカ」
▲海水浴の誘いに、スイカさんのうちに行く所からストーリーが始まります。
―― そこからなぜかパパイヤのパパが砂浜でパンを焼いたりと、思いもつかない展開になっていって(笑)。
そうなんですよ。これはパパイヤの言葉遊びなんですけど、最初はテキスト的には「海水浴」というのはどこにもなかったわけですね。じゃあ、海水浴場でパンを焼く情景というのはどんなのだろうと考えていって。一つの場を設定することで、言葉遊びだけじゃなくどんどん絵の世界が広がっていって、キャラクター性といいますか、登場人物たちが生き生きとしてくるんですね。そうやって、言葉から情景やシーンをイメージしていうるちに海辺という舞台が見えてきて。そこからだんだんこちらも遊び出すんですね。
── そうやって色々な場面が登場しながらお話として全体が進んでいく一方で、その間のつながりといいますか、サイドストーリーみたいなものも描かれていますよね。そういう遊び的な部分というのは子ども達も大好きですよね。
言葉遊び自体はそれぞれが単体ですが、そこで何かストーリー性を持たせることで絵本に膨らみを出せるかなというのがまず見えてきたんです。それは言葉の順番だけでも変わってくるんですよね。そこの間にうまく関連させて、例えば「ビワのお詫び」の場面にうまくつなげていったりとか・・・色々なシーンを後からパズルのように組み合わせていくことで、だんだん立体的に絵の構成も決まってきたんです。
── その段階で、石津さんとのやりとりというのはあるんですか?
基本的にお任せいただいていました。逆に僕はすごくやりやすかったといいますか、楽しくやらせていただけましたね。
── この作品の大きな魅力、人気の秘密の一つとして登場する果物のキャラクターというのがあると思います。果物に手足がぴょんぴょんって生えていて、キウイの腕は毛むくじゃらだったりとか(笑)。表情もすごく豊か。そのキャラクターはどんな風に誕生したのでしょうか?
『くだもの だもの』では、必ず果物が登場して色々なことをしてるので擬人化していかなければいけないですよね。絵の方法としてどうしようかなという部分は、少し苦労しましたね。
方法としては色々あったと思うんですけど、一つは単純に果物そのものを感じてほしいというのがあって。果物はリアルに描きたい、果物自身を簡略化はしたくないなと。それで、手とか目とかささっと描いたように、わざとちょっと粗くしているんです。しっかり果物から生えている手というふうにはしないようにして。ついでに、ちょっと描き足したみたいな印象にしていこうかなというのは、絵を描いていくうちに思い付きました。それで、例えばキウイだったら毛がいっぱい生えてるから毛深いんじゃないかとか(笑)。果物を見た時にそのキャラクターが浮かぶような感じにしたいなという風に思って描いています。
── ああ、それででしょうか。果物の描写が本当につややかで美味しそう!1~2歳ぐらいの小さな子ども達でも、果物を見て美味しそうというのはわかるんですよね。
しずる感っていうんでしょうか、フルーツなのでみずみずしさみたいなものを感じさせなきゃなというのはありました。だから、普段は空想で描く場合も多いのですけど、本作は全部本物を見て描いたんです。でも、季節的な問題で手に入りにくい果物も随分あって(笑)。秋も深い頃、ちょっと冬に差し掛かっていたのかな。スイカもなかなかなくって。ビワやさくらんぼなどは、贈答品の高級なものを編集部の方に手に入れていただいたりしたんです。スモモもちょっと難しかったですね。種類がとても多いので、これぞスモモという典型的なものにしないとというのがあったりして。
おもしろいのは個体差があるといいますか、同じみかんでも一つずつ表情が違うんですよね、そうすると、やっぱりこの一つのみかんをモデルに描き上げないといけないというのがあって。だから、ラフはちょっとラフで描いておいて、本番が本当に本番なんです。最後に実物を見ながら描いてきちっと仕上げる段階がすごく重要。表情やキャラクターが決まる瞬間ですので。そのタイミングをうまく見計らって。だから、果物ごとに描いていくんです。同じ果物が登場するところはそこの果物だけを仕上げていくみたいに。だから全体にはまだ色が付いていないんだけど、みかんの部分だけは仕上がっていて、こっちのフルーツはまだこれからという感じで。最後のほうで、脇役的なスターフルーツみたいなのを描いて(笑)。でも、スーパーで探すのはすごく楽しかったですね。
―― 絵を描かれる時の素材というのは・・・?
インクと色鉛筆ですね。背景の感じは水性のインクで、キャラクターそれぞれは油性のカラーマーカーで色をつけます。画材としては3種類使って描いています。背景の感じで全体の空間、雰囲気を創っていって、鉛筆で落書き的な手足と、逆にもっと果物の細かいディテールの質感のほうと、うまくつなげて違和感ないようにしている感じです。
── 続いて、今度はフレッシュな野菜がたくさん登場する『おやおや、おやさい』。石津さんも作者の言葉として「子どもの頃の元気でイキイキとしていた野菜に、絵本の中でふたたび出会うことができた」とおっしゃっている通り、山村さんの描く野菜たちはごつごつしていて、張りがあって。そしてマラソン大会を繰り広げるのです。こちらもやはり同じような制作方法で・・・?
『おやおや、おやさい』 石津ちひろ・文 山村浩二・絵 福音館書店刊
▲今日は野菜たちのマラソン大会。「そらまめ そろって マラソンさ」「りっぱなパセリは つっぱしる」韻を踏んだような言葉とユーモアたっぷりの絵が実に楽しい絵本です。
基本的には同じつくり方です。野菜も本物を見ながら描きました。やはり季節柄手に入りにくいものも色々あって、その辺りの苦労は同じでした。
でも、実際に画面上に描き始めてから気がついたんですけど、野菜は比較的長いものが多いんです。セロリだとか、大根だとかもすごく長いわけですよね。全部リアルに描きたいというのが基本的にあるので、小さい野菜と一緒に画面上に収めようとすると・・・「あ、これ、難しいな。うまく収まらないや」なんて(笑)。厳密にいうと実際の大きさの比率は違いますが、それぞれの形の比率は変えないように。うそをつかない様なバランスで、長いものは長いものっていう印象をちゃんと画面に収めるのが結構難しかったです。果物の場合は大体丸いので、あまり意識しなくても良かったんですけど、野菜になってみたら長いのと丸いのと太いのって、すごく形がばらばらなんですね。賞味期限もそうで、ものによってはすぐにしなっとなってきちゃうんですよね。
それから人参の“葉っぱ付き”というのは売ってたようなイメージがあったんですけど、いざ探してみるとこれが売ってないんですよ。大根はまだ時々葉っぱ付きは売ってるんですけどね。それが自分では意外だったんです。でも、そこはちょっとこだわって。子ども達が知ってるのは、この黄色い部分の人参だけだと思うんです。これ、実際は体の一部を切られてるわけですね。それがかわいそうだなと思って、なるべくちゃんと丸のまま描こうと。厳密に言うとツルとかも取られちゃっているんですけど、まあ一体化してるものは付けてあげたいなと。やっぱりキウイなんかも、イメージとしては切られてた緑の中身のほうが、果物として印象深いと思うんですが、やっぱりその切り身のままのキャラクターというのは、こわいかなと思って。浮き輪の柄でらしさを、演出していますね。そういう所はなかなか難しく、面白い部分でした。
── ストーリーの最後の展開で意表をつかれると言いますか、はくさいのこのキャラクターが笑っちゃいますよね。誰かモデルでもいるのかな、と思ったのですが・・・。
モデルというのはいなかったんですけどね。これは本当に、石津さんの「はくさい はくしゅは てれくさい」という言葉から連想して、こういうキャラクターなんだろうなって、自然に出てきて。わーって騒がれたりすると、そっちに気持ちが行っちゃって、本来やってることを忘れちゃうみたいなね(笑)。そんな事をしている間にとうがらしのとうさんが・・・って。この最後の終わり方もストーリー的に、意外性を持たせて(笑)。
―― 『おやおや、おやさい』の隠れたみどころみたいなものがありましたら教えて頂けますか?
全部実在する野菜を描いているんですが、同じような葉っぱの緑の感じで違いを出すのというのが結構難しかったんですね。このシーン(スタートしたマラソン選手達を沿道で沢山の野菜が応援するシーン)なんかは、一番楽しみながら描いたのですが、ここも色々な野菜が出てくるんです。頭の葉っぱの部分しか見えていないんですけど、ちゃんとホウレンソウだったり、春菊だったり、三つ葉だったり。葉の形をよく見て、その違いでわかるように。パセリも葉がもこもこしていて立派です。はちまきができるくらい。そういう意味で、今回は“葉物”に力が入ってるかもしれないです。はくさいにしても。描きがいがありました。
── 言われてみると!これは親子でクイズ遊びが出来そうですね。意外とお母さんも答えに困っちゃったりして(笑)。
―― 素人の勝手なイメージですが、アニメーション作家の方といいますと、どんどんイメージが膨らんでいってとにかく沢山の枚数の絵を描いたり、描き込むのがとにかく好きだったりするのかな、と思ってしまうのですが、絵本ですと場面が限られていますよね。そういう部分で苦労などはありましたか?
やっぱり絵の見せ方が違うんですよね。当然、アニメーションの場合は動きで説明できるので、その動きの枚数を重ねることで展開できるわけですね。だから例えばラディッシュがダッシュしてるんだったら、やっぱりダッシュしてるスピード感というのは現実的な時間として出せるわけです。ところが絵の中だと、停止しているんだけど、この人は速そうに見えるだとか、色々な事を含めて一場面でそれを表現しなければいけない。絵本の中で出来ることというのはまたアニメーションとは違ってくる、という実感はありました。両方の仕事をしていてすごく勉強になっていますね。そのたびごとに発見があります。
―― 違うジャンルでの表現もされているからこそお伺いしてみます。絵本のおもしろさというのは、どんなところにあると感じられますか。
絵本というのは戻れるんですね。サイドストーリーを見つけた時もそうですけど、子どもは気になったらもう1回、「あのキャラクターってなんだっけ」みたいにページをめくって後ろに戻れるわけです。映画は1つのディレクションを僕らが作って、それを見てもらう。それから考え感じてもらうという感じですけど、その体感の仕方というのがまったく違うんですよね。そこはおもしろいですね。
それから、絵本の感想なんかを見ると、すごく親子で読んでくれているんだなと感じます。アニメーションというと、テレビの前で座りっぱなしで見ているという印象があるんだけど、絵本の場合は親子で読んでいるその間、どういうことが起こっているかというリアクションがすごく見えてきて。そこはちょっとアニメーションとは違うのかなという気がしますね。
―― この絵本は親子でどんな風に楽しんでほしいですか?
親子それぞれで色々なストーリーを見つけてほしいと思います。絵本の中では、どのキャラクターがどの辺に、どの場面でどこにいるのかというのを、結構細かくつながりを考えて描いていますから。実はこの辺でこのキャラクターがいたんだ、みたいなのを見つけながら楽しんでもらえたら嬉しいです。
―― ここに出来上がったばかりの最新作『おかしな おかし』があります。(月刊誌こどものとも年少版2010年7月号※)先ほど拝見させていただいたんですが、今度の主役はお菓子!とにかく美味しそうなお菓子が次から次へと登場して・・・本当にどれも子どもたちが泣いて喜びそうな内容になっていますね。「お菓子」という題材は石津さんの方からのご提案ですか?
※こちらは絵本ナビでは取り扱っていない商品になります。詳細・問い合わせはこちら>>>
『おかしな おかし』 石津ちひろ・文 山村浩二・絵 福音館書店刊
いや、お菓子というアイデアは僕なんです。実は最初、石津さんと編集の方から「お魚」で、という話があったんです。今までの絵の作り方は、目鼻のない所にそれをつけてキャラクター化するという方法。ところが、魚はもうキャラクターですよね。鮭なら鮭で。切り身にキャラクターつけるわけにもいかないしなあ、と思って。だから目鼻のない、本当には生物ではないもののほうがいいんじゃないですか、例えばお菓子とかパンとか・・・と提案させていただいて。そこで、石津さんの方からお菓子で行きましょう、という事で決まりました。
―― お魚もおもしろそうですけど、言われてみると確かに・・・。絵を描かれる側の方ならではの発想ですね。ところで、お菓子というと例えばお菓子の家だとか、ちょっとファンシーな感じを思い浮かべるんですけど、こちらは思い切り汗が流れていますね。
石津さんからいただいた言葉の中に、体操という言葉が出てきたのでそこからイメージして。オリンピックだと広がり過ぎてしまうし・・・ということで身近で色々なスポーツが出来るスポーツジムが舞台になりました。プリンやゼリーが飛び跳ねていたり、ドーナツやクッキーがサッカーをしていたりします(笑)。
お菓子は意外と地味でしたね。焼き菓子が多いので、茶系のものが多いんですよ。やっぱり果物が一番カラフルにできましたね。野菜はグリーン系が多いので、爽やかな印象。お菓子はなるべくポップな感じにしたかったんですけど、お菓子そのものは意外と地味なんですよね。でも、そこで「おいしさ」のほうにちゃんと目がいってもらえれば。
やっぱりお菓子も本物を見ながら描きました。それはすごく楽しかったんですけども・・・食べたくなるんです。お菓子は描くものじゃなくて、やっぱり食べるもんだと(笑)。おまんじゅうを見ながら鉛筆で描いてるのはすごく変で、こりゃあ口に持っていくもんだろうって。果物ですと静物画として、まだ冷静に見られたんですけど。お菓子を眺めてるのは、すごく変な感じがしました。
でも娘も喜んでいました。モデルが最終的には食材になるので。果物や野菜の時もそうでしたけど、普段買わないようなものを買うから大変おもしろかったですね。意外と美味しいだとか、料理に入れてみたり。全部食べるようにしてましたね。
―― 1つの作品が完成するまでにはどの位の期間がかかるのでしょうか?
プロジェクトとしては、だいたい1年以上前からお話をいただきます。ラフから進んでいくんですけど、そのラフが固まるまでの時間と、実際色をつけていく作業というところで、トータルでやはり1年ぐらいですね。設定、ストーリーなどを決めるラフのやりとりでは数ヶ月かかかっています。でも、作業自体は比較的早いので、実際色をつけたりしているのは2カ月か3カ月ぐらいで仕上げているんじゃないですかね。
―― 子どもの頃絵本を読まれた記憶はございますか?
実は子どもの頃、僕はそんなに絵本を読んでいなかったんですね。物語絵みたいなものは見ていた覚えはあるんです。世界名作童話集などで絵が沢山ついていると、絵に興味があったりとか、昔話の絵本だとかはすごく読んでいた記憶があるんですけど。漫画世代で、物心ついたころはもう漫画を読んでたほうが、印象としては多くて。
絵本の世界が本当におもしろいなと思ったのは、子どもができてからですかね。例えばエリック・カールさんとかの絵本を見たりして、ああ、おもしろいんだと。子どもに見せながらそういうものに気づいていったというのがあります。
絵自体は見るのも描くのも大好きでしたね。漫画やアニメーションは学生の頃から作っていて、それがいつのまにか今の職業になっていたという感じです。
―― その中で、絵本を描かれる事になるきっかけというのはあったんでしょうか。また、絵本を描く事について興味はおありでしたか?
特に大きなきっかけってあったのかな。アニメーションだけの仕事というのは、なかなか最初のうちはメインではできなかった部分もあって。仕事を始めた頃から挿絵の仕事はやっていました。ガリバー旅行記だとか、シャーロックホームズなんかの物語につけるイラスト。こういう挿絵の仕事は好きでした。テキストからイメージして絵をつくるというのは、結構初めの頃からやってたんですね。振り返れば、児童書の世界には何かしら関わっていますね。
最初の絵本というのは福音館書店さんの『サカナカナ?』(月刊誌こどものとも0.1.2 2002年1月号※品切れ)です。絵本らしい形で仕事ができた最初だった気がします。
絵本を描くということにはすごく興味がありましたね。やはり絵描きの興味として、絵本画家の人たちというのはすごく魅力ある人が多いので、絵を描くという立場からは、絵本を描いてみたいというのはずっとありました。だからといって、最初から絵本作家を目指そうみたいなところじゃなくて、やはり自分の興味の中心がアニメーションにあったものですから、どうしてもそこが中心にはなっていたんですけど。
―― 現在、当然アニメーションの仕事も並行されているんですよね。取り組み方や時間のかかり方は全然違うのでしょうか?
そうですね。アニメーションのほうが、どっちかというとコツコツやっていかないと出来上がっていかなくて。絵本は気持ちをうまく持って行って。もちろんそれなりに両方時間はかかりますけどね。やはりある意味で、同じ絵なんですけど、自分の気持ちが切り替わるので、両方の刺激になるというか。うまくそれぞれの仕事がプラスにできてるんじゃないのかなという気はしています。
―― 絵本や絵本を通しての楽しみ方など、絵本ナビ読者の方へのメッセージをお願いします!
子どもとのコミュニケーションとして、絵本は映像よりも密に親子がコミュニケーション取りやすいのかなというのはありますね。読み聞かせだったり、一緒にページをめくっていったりというところで。
それから、僕自身は絵を描くので、絵本の選び方としては、やはり絵に興味があると見るんです。絵本には色々な要素があるのですが、特に絵の部分、そこには言葉以上の何かがあって、そこに魅力があるからこそ、絵本というのがあると思っているんです。単純に物語の読み聞かせではなくて、その絵から発しているものというのはなかなか言葉には置き換えられないけど、その絵本や画家さんそれぞれの雰囲気というか、独特に発しているものがあるんです。絵を描く立場としてはそういう絵の面白さ、絵が発している魅力みたいなところから絵本を探してみるのもいいのかなという気がします。
子どもにとっても、そこで感受性が養われるのではないかなと。子どもの頃に見たビジュアルイメージというのは、たぶんずっと残っていくと思うんですね。目からの触角といいますか。そういうものが記憶にすごく結びついていくというのはありますよね。大人は言葉や良い物語というので選びたがるところがあるんですけど、やっぱり忘れちゃいますよね。その雰囲気とか印象という方が、強く記憶に残ったりするんです。
自分で表現するにあたっても、そこは難しいところですね。うまくいい気持ちで描けていないと、ちょっとした事で元気な感じが出ていなかったりしますし。同じ絵でもちょっと変わっちゃうんですね。例えば野菜でも果物でも、それと接しているときの自分がうまい具合にいかないと、美味しそうと思っていないと、美味しそうに描けないですよね。単純な話ですけど。
ありがとうございました!
記念にぱちり。
お話を聞いていると気が付くのですが、山村さんにとって制作中の「難しい」や「苦労」というのはイコール「面白い」なんですね。そんなお話をされている時は決まってとても楽しそうな表情をされているのです(笑)。創作絵本にもご興味があるという山村さん、今後どの様に世界が広がっていくのか本当に楽しみです。
★今回、素敵なアトリエにもお邪魔させて頂きました!
この場所から、子ども達を喜ばせてくれる絵本も、世界中で絶賛されているアニメーション作品も生まれていくのですね。
▲これが作品の生み出される机!アニメーションの原画もずらり・・・思わず緊張します。
▲カラーインクやペン、色鉛筆など。主に制作に使われている画材がびっしり。
▲制作の時はいつも音楽を聞きながら。アニメーションの原形フェナキストスコープ(驚き盤)を見つけて、絵本ナビ取材スタッフも福音館書店編集チームも思わず夢中に!簡単な解説までして頂いて・・・。
▲素敵な本棚の間から、ちらりと見え隠れしていたラフ画。どうやら新作絵本の制作も進行中の様ですよ!
▲やはりアトリエの主が座っているとしっくりきますね。サイン本も描いて頂きました!