「パウカー(はじめるよー)」
「パカワー(はーい)」
といってはじまるアフリカの昔話。東アフリカはタンザニア、ザンジバル島の民話です。
むかし むかし、あるところに、しんぞうと ひげが おりました。
しんぞうも ひげも びんぼうで、いつも はらを すかせておりました。
心臓とひげは、食べ物を手に入れられず、21日間も水だけでおなかを満たしてすごします。
そんな飢えたふたりがばったり出会ってしまったから、さあ大変。
心臓を食おうと飛びかかるひげと、逃げる心臓。けれども、どちらも腹ペコで体に力が入りません。
この奇妙なお話、いったいぜんたいどうなっちゃうの?
それは、読んでのお楽しみ。
見たこともない主人公、思わず大笑いしてしまうユーモラスな「しんぞう」と「ひげ」の絵を描いているのは、ティンガティンガ・アート(タンザニアの絵画スタイル。アフリカを代表する現代アート)の大御所モハメッド・チャリンダさん。
チャリンダさんは、日本の子どもたちに、タンザニアのことをいっぱい知ってほしいと、名産のカシューナッツやマンゴー、動物たち、そして、色鮮やかな腰巻布「カンガ」など、たくさんのタンザニアの風景を登場させているそうです。ぜひ、自由で楽しい画面構成やモチーフ、のびのびとした筆遣いを楽しんでくださいね。
この物語を再話されている著者のしまおかゆみこさんのあとがきを抜粋します。
「このお話は、たんに不思議とか、おもしろいというだけではなく、全体を通して、おなかがへる、飢えるということに焦点をあててみると、アフリカの生活がリアルにみえてくると思います。
とはいえ、アフリカの人たちは、貧しくても、生きて今日をむかえられたこと自体がありがたい、という人間の基本をわかっているから、日々笑顔でおおらかに暮らしています。アフリカの人々のたくましさや心意気をこのお話から感じ取っていただければと思います。」
お話は、こんな風に終わります。
「きょうの はなしは、これで、おしまい。
ほしけりゃ、もってきな。いらなきゃ、海に すてとくれ。」
なんとも味わい深いアフリカの民話。お話会にもおすすめの一冊です。
(掛川晶子 絵本ナビ編集部)
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