ヒグチユウコさんが描く、摩訶不思議な「ギュスターヴくん」の絵本。
顔は愛らしいネコ、手はヘビ、足はタコ……。
「きみはネコなの? ヘビなの? タコなの?」と蝶ネクタイをしたワニくんに話しかけられます。
ギュスターヴくんは本に夢中で、ワニくんに生返事。
「んー ネコかな」と答えたり、
「んー じゃあ ワニかな」と答えたり。
同じテーブルでそれぞれマグカップを傍らに置き、2人は仲がよさそうです。
ワニくんはウロコびっしりでいかにも爬虫類らしい風体なのに、目が黒々ときゅっとして賢そう…。
赤いブーツに半ズボンがおしゃれです。
さて、ギュスターヴくんが読んでいる本は、じつはギュスターヴくんが自分で描いたものでした。
どのページにもギュスターヴくんばかり!
本を逆さにしてバサバサと降ると、ボタボタ、ギュスターヴくんがいっぱい落ちてきて……!?
クラシックな線画で描かれた魅惑的な生き物たち。
ウロコや毛が一つ一つ描かれ、多種の生き物がくっいて一つになった存在感。
見ているだけで不思議な世界に迷い込んでしまったみたいです。
カタツムリかと思ったら足らしきものが生えていたり、犬かと思ったら下半身は魚だったり。
哺乳類、甲殻類、爬虫類、植物、鳥、魚。混ざった生き物たち。
どんどん、増えていく、増えていく。本から出てくる、出てくる。
ちょっとひんやりした可愛らしさが全開です。
しばらく眺めているだけで、この世を忘れていられそう。
絵の中にどっぷりつかりたい。そんな人には老若男女問わず、一度ひらいてみてほしい絵本です。
凝った絵にふさわしく、巻末にはぬいぐるみ作家の今井昌代さんと共同制作された凝ったページが登場します。
本から飛び出してきそうな、質感のミスマッチを楽しんでくださいね。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
続きを読む