あなたの「幸せなこと」「怖いこと」ってなんですか?
そう聞かれたとき、自分自身のことしか考えていませんでした。
自分がお母さんになるまでは――。
こんなにも素敵なかたちで、お母さんの愛と強さを描いている作品があるのか、と感動し
たのが本書なのです。
うずらのお母さんが産んだばかりの小さなたまご。
ころころ転がって行方不明になってしまいました。
心配であわてて探し回るうずらのお母さんの前に、へびさんがやってきて、探し物を手伝
ってくれることになります。
でも、「たまごを探していると知られたら、ヘビさんに食べられてしまうかもしれないわ
」
と、お母さんは心配になるのです。
そこで、「ちいさくてまるいものを探しているの」とだけ伝えます。
さらに、カラスさんとオオカミさんが協力を申し出てくれるのですが……。
こんなにハラハラする状況ってあるでしょうか。
うずらのお母さんの心配が、まっすぐに、痛いほど伝わってきます。
大切な小さなたまごはどこに?
そして、へびさんも、カラスさんも、オオカミさんもとても親切だけど、もしたまごを先
に見つけてしまったらどうしよう……という恐怖が拭い去れません。
うずらのお母さんの気持ちがこんなにも切実に伝わるのは、描かれる生き物たちの絵のリ
アルさにあるように思います。
かわいくとか、怖くとかデフォルメするのではなく、生き物そのものの姿を真摯に描こう
、伝えようとしているように感じられる絵なのです。
だから、良い悪いではなく、その生き物の野性そのものが伝わってくるのでしょう。
「食べられてしまうかもしれない」という恐怖を抱いているうずらお母さんの目線になっ
て見ると、へびもカラスもオオカミも怖く見えるのです。
物語の中で、ヘビもカラスもオオカミも、ちゃんと自分が持っている能力を生かしている
ことにも感嘆しました。きっと作者の島野雫さんは、とても生き物が好きで、観察をして
いる方なのだろうなと勝手に想像しています。
小さなうずらのお母さんの大きな愛のお話を、お子さんと一緒に読んでみてください。そ
して、お母さんの気持ちを言葉にして、お子さんに伝えてみてはいかがでしょうか。
(絵本ナビ編集部)
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