朝目覚め、縁側で息を吸い込む「おいなりさん」。朝一番にやることは、身なりを整えること。でもその方法がかなり独特! 砂糖を溶かしたしょうゆに、生姜汁を混ぜたローションをシュッシュッシュッと頭全体にかけて……。んん? なんだか変。実は「おいなりさん」、頭がいなり寿司のヒトなんです。
おいなりさんは優しくて面倒見の良い書道教室の先生。近所の人や子どもたちにも人気です。ただ、頭が重いことで、ちょっとしたハプニングが多発してしまい……。
日本家屋に住み、着物を身にまとって、日本茶をすする。おいなりさんの生活は、昭和のにおいが漂う懐かしい雰囲気がします。おいなりさんのていねいな暮らしぶりをのぞいていると、なんだか優雅な気持ちになってきます。こんな隠居生活に憧れる大人も多いのではないでしょうか?
作者は『すっぽんぽんのすけ』(鈴木出版)や『ふってきました』(講談社)など、数多くのユーモア絵本を手がける、もとしたいづみさん。そして、この愛すべきキャラクターを品よくかつユーモラスに描くのは、僧侶にしてイラストレーター、「だいぶつさま」シリーズ(アリス館)で人気の中川学さんです。この作品を作るにあたり、作家さんたちが実際「昭和の暮らし博物館」に出向き、モデルになる家や生活の知恵などを取材したそうです。見返し部分には「おいなりさん」の家の全景図や間取りのほか、暮らしの知恵なども描かれているので、そちらもぜひチェックしてくださいね。
(出合聡美 絵本ナビライター)
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