『現代と保育 71号』連載 子どもとあそぶえ・ほ・ん vol.4
連載 <子どもとあそぶえ・ほ・ん> vol.4
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『小さな心に芽生えた友情』
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「働くママ」という立場上、保育園にいる時間がとっても長い息子。園生活というのは、現場の
先生方にほぼお任せになってしまっているのが現状です。それでも、大好きなお友だちと毎日
いっしょに楽しそうにあそんでいるようで、安心していました。
ところが、四月から年中さんに・・・・・・というその直前。仲よしのお友だちが違う保育園に移っ
てしまうと聞かされ、親子でぽかーんと立ち尽くしてしまいました。まだ「お別れ」なんて縁のな
い話だと思っていたので、親のほうが動揺。「大丈夫かな?」「四月からちゃんと楽しく過ごせ
るかな?」
でも考えてみれば、「お友だちと離れ離れになって悲しい」―そういう気持ちを持つようにな
るほど成長した、ということなのですよね。小さく見える子どもたちの心の中にも、「友情」とい
うものがそれなりに育っているようで。
『おんなじ おんなじ』は最初のお友だち絵本です。いっ
しょに遊ぶのうれしいな、お揃いってうれしいな。息子の友情と言えば、まだまだかわいいこん
な感じ?
でも、ふと同じクラスのまわりを見まわす、(とくに女の子は)もうちょっと複雑なことになってい
たりして・・・・・・先を行っているのですね。そんな繊細な気持ちが伝わってくるのが『コッコさん
のともだち』。
「たろうのともだち」
友だち作りって、年齢に関係なくけっこう大変。心細かった気持ちを思い出して、ちょっぴり
切なくなったりします。だからこそ、永遠に絵本のテーマとして扱われるのですね。ヒントがたく
さん隠されています。たとば『たろうのともだち』。
「まずはあいさつをしてみる」
「いやなことははっきり言う」
「小さい者や弱い者に威張らない」
なるほど、これならスムーズにともだちが作れそうな気がしてきます。なにより、こんな関係は
すがすがしいですね。男の子らしい世界なのかもしれません。私も実践、実践。
さて四月がすぎて、ふと気がつけば、お迎えに行ってもなかなか帰らないほど、新しいお友だ
ちと楽しそうに遊んでいる息子。「なーんだ、取り越し苦労だったのね」。でもちょっと様子が違
うのは、しょっちゅう取っ組み合いのケンカをして転げまわったり、どちらかが泣いていたり。と
ころが次の日になると、くっついて笑っていたり。今度はケンカ友だち?意外と立ち直りが早い
のが子どもです。ちょっと安心しました。それにしても、どうせ避けては通れない、この「ケンカ」。
先生方が、それを良しとしてくれるのが頼もしいかぎりです。
「けんかのきもち」
迫力のあるケンカのシーンをみごとに描いた『けんかのきもち』。くやしい気持ち、抑えられな
い怒り・・・・・・まわりのおとながこの気持ちをどう扱うかでどんなふうに成長するかが決まってく
る、そう思うと緊張感も感じる一冊です。男の子を持つ親としては、覚悟を決めることが大事な
のかもしれませんね。
そして、そうは言っても時々「○○ちゃんに合いたいな」とつぶやいたりもする息子。そんなと
き、さびしい気持ちの対処法に一役かったのが「お手紙」でした。何を書くか、一生懸命考える
姿は健気です。受け取ったお友だちも喜んでくれて、大満足。相手にしっかり気持ちを伝える、
こういう経験はとても大事にしてほしいのです。
「きもち」
『きもち』という絵本があります。自分の中に生まれては消えるいろいろな「きもち」のことを考
える。ひとの「きもち」との違いを考える。多くは語らずとも、この二つだけで、子どもたちはどれ
だけ大きな成長を遂げるでしょうか。大きくなっても、くり返し読んでほしい一冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
※季刊誌『現代と保育』(ひとなる書房)にて<子どもとあそぶえほん>というコーナーを連載中です。主に子どもの生活との関わりから絵本を紹介しています。
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