どこまでもシンプルな「あいうえお」の絵本です。
ページの左側には、スカイブルーの背景。その上に緑の額に縁どられた絵画のような「あし」のイラスト。
ページの右側には、作者オリジナルの書体で書かれたやさしい「あ」の文字。その下には鉛筆に似た書体で「あ」の書き順も載っています。
「あ」から「を」までの全46文字。まだ文字の読めないあかちゃんから、文字に興味を持ちはじめた小さなお子さん、はじめて文字を書こうとする子ども、そして、長い年月を過ごしてこられたご年配の方まで。
出会った年齢によって、違った新しさ、発見があるのではないでしょうか。
パラパラとページをめくってみるのも楽しいですし、お気に入りの文字をジーっと見つめ続けるのも面白い。
「て」のページで「手」の絵に自分の手を重ねる子もいれば、「せ」の「セミ」をつかまえる子や「い」の「犬」をなでる子、
文字に指を添えて、なぞる真似をする子もいるでしょう。
シンプルであるからこそ、楽しみ方は読者にゆだねられている……そう感じる作品です。
本作は、作者・戸田幸四郎さんの絵本デビュー作であり、出版社・戸田デザイン研究室の誕生のきっかけとなった作品でもあります。
これからも長く子どもたちのそばにずっとあり続ける、はじめての、やさしい、とてもシンプルな「あいうえお」の絵本です。
(木村春子 絵本ナビ編集部)
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ひらがなを伝える絵本はたくさんありますが、戸田デザイン研究室が大切にしているのは“お勉強”のためだけではなく、子どもたちの好奇心や感性が育つこと。
その思いを形にするため、デザインの美しさ・楽しさを徹底的に追求して作られています。
まず目を奪うのは、ページいっぱいに大きく記された美しいひらがな。
この絵本のためにデザインされた、オリジナルの書体です。書き順を示す文字も、子どもたちが正しく美しいひらがなを書けるようにと、すべてデザインされたもの。トメやハネなど、細かい部分に至るまで考え抜かれています。
もちろん、絵もとってもキレイ!まるで1枚のポスターのようです。子どもたちの色彩感覚も大いに刺激します。
見開きページにひとつの絵、ひとつの文字というシンプルなレイアウトは、子どもたちに絵と文字のイメージを繋げやすくします。
美しくデザインされた形、色、印象。それは、単なる文字という知識を超えて、豊かな感受性を養い、想像する力や考える力の源になります。
1982年の出版以来、たくさんの親から子へと読み継がれた本作は2019年にはGOOD DESIGN賞も受賞する名作となりました。
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