「ぼくのうちが、どこかわかる?」
一体どこから呼びかけているのでしょう。広がっているのは、様々な形をした家や大きな庭、そして川や牧場まで見える魅力的な町。どうやら世界で一番大きな庭があると言うのだけれど……あ、いたいた! 赤い服をきた男の子、それがこの物語の主人公。これからお母さんに頼まれたおつかいに行くんですって。
「そんなのかんたんって、思うでしょ?」
でも、それはどうやらとっても遠くて危険な道。ドラゴンが住んでいたり、大男が眠っていたり、おそろしいくまが潜む洞窟や、おまけに人食いザメや海賊のいる海だって通らなくちゃいけない! 果たして彼は、無事に帰って友達と川で遊ぶことができるのでしょうか…。
オランダではロングセラー絵本として読み継がれているこの絵本。誰にでも経験のある日常の出来事の中で、だけど同時に果てしなく壮大な冒険の物語が始まるのです。とてもユニークなのは、読者の視点。主人公の「ぼく」がとてつもなく小さく描かれおり、子ども達は彼を探しながらも、今何が起きているか、どこに何がいるのか、「ぼく」に教えてあげなければいけません。つまり、自分からどんどんお話に参加していくことで、さらに絵本の世界が豊かになっていくのです。
大人が素朴で美しいオランダの村にうっとりしていると、子どもたちは知らないところで真剣な戦いの真っ最中。想像するだけで素敵な時間ですよね。でも眺めてばかりいないで、大人だって絵本の中に隠れている沢山の物語を探してくださいね!
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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