つるんと白く、見事なフォルム。それは、どこから見ても完璧なたまご。だけど、その体からは、細くて繊細な手足が伸び、何とも言えない目鼻口の表情が浮かびあがっている。そして言うのです。
「やあ、こんにちは。わたしはたまご。
今から、わたしのはなしをするからね。」
一目で心を掴まれてしまった読者に向かって、たまごは、自分が目を覚ました瞬間のことから、はじめて歩き、はじめて話をした時の事を語ります。そして、マシュマロに出会い、巻き込みながら、一緒にキッチンの台を降り、リビングにまで足を運ぶ話へと続きます。
注目の絵本作家、しおたにまみこさんの初めての絵童話。その独特な感性は、絵だけではなく、思考回路にあるのでは……と、改めて驚かずにはいられません。動くこと、話すこと、伝えること、当たり前だと思っていたことに光を当て、会話の中では胸がすくようなことを言い放ち、じっくり考えることで身体のコンディションを整えていく。収録されている3つのお話は、どこを切り取っても不思議で面白く、刺激にあふれているのです。
年齢を問わず、一話ずつゆっくりと。たまご哲学やマシュマロ哲学、味わってみてくださいね。私は「帽子に誰も気が付かなかった話」に大賛同ですね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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