フェリシモ出版の「おはなしのたからばこ」シリーズ19巻は、和田誠さんの魅力がたっぷりと詰まった『ポケットに砂と雪』。
「ジョージ・バレル教授は、もう一週間も砂漠の動物を追いかけていました」 何とも味のある書き出しのこの文章に、いきなり物語の世界にぐっと引き込まれてしまいます。 物語に登場するのは、絶滅動物の研究と保護活動を40年間に渡り続けているジョージ・バレル教授と、高山植物専門のカメラマン、ペーター・ケスラー氏、そして、ウサギのぬいぐるみを抱いた小さな女の子。 教授は砂漠で、ケスラー氏は雪山で、ふとした油断から、命の危険に晒されることになります。 もうダメか……と諦めかけたとき、女の子の姿が見えて……。
高い志を持って懸命に活動する最中の2人の男性と、ぬいぐるみを持った小さな女の子の時空を超えた遭遇。不思議が繋がる物語の結末に、心地いい読後感が残ります。
これは現実の物語? それとも夢の世界? どちらが夢のできごと? そんなことを話し合ってみるのも楽しいですね。
(洪愛舜 編集者・ライター)
砂漠と山、別々の場所で、関係のない2人の男が思いがけない災難に遭遇してしまいます。 危機一髪の命を救ったのは、どちらも突然に現れたぬいぐるみを抱いた女の子。 一方、昼寝をしていたカズエは砂漠や山にいる夢をみていたのでした……。夢は不思議。 男たちが夢に入り込んだのでしょうか。それともカズエの夢が男たちを救ったのでしょうか。 迷える大人たちを助けたのは幼い少女なのですね。 和田誠さんらしい洒落た隠し味が絵に文にもたっぷり染み込んだ贅沢な絵本です。
表紙には探検隊らしいおじさんの絵。砂漠に雪が降っている様に見えます。どんなお話か想像しながら本を開くと、そこにはピンクと白で描かれた、なんとも可愛いうさぎの絵。いったい、どんな物語が始まるのだろう…と、ドキドキしました。そして、そのドキドキは物語の終わりまで続きました。
絵も文章も、シンプルなのだけれど、すごく説得力があって、読後の余韻たっぷりな、不思議な味わいの1冊でした。面白かったです。 (こはこはくさん 50代・ママ 男の子13歳)
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