ひとり暮らしのレミーおばあさんのおうちに、小さなタンスがありました。
おばあさんが大切にしているそのタンスの一番下のひきだしに、何が入っているのかというと……?
ほら、耳をすますと聞こえてくる、楽しげなささやき声。
声の主は、ひきだしの住人たちだったのです。
ここには、空っぽになった空き瓶やブリキ缶、セーターだった毛糸玉や、花束を結んでいたリボンが入っていました。
そこへ “宝石みたいなチョコレート”を彩っていた茶色の小箱が新しく加わります。
みんなは、次の活躍の場が訪れるのを待っているのでした。
春の終わり、ひきだしの隙間から光がさしこみ、レミーさんの手が入ってきます。
取り出された丸っこい空き瓶は、いちごジャムをたっぷり入れられてうれしそう。
夏は背高のっぽのガラス瓶が取り出され、夏野菜のピクルス入れに。
金色のリボンも、ほどけかけた端をレミーさんに整えられ、子ねこの首を飾ります。
でも……。
小箱は“いいなあ”と、暗いひきだしの中でため息をつきます。
何かに使ってもらえるチャンスがなかなか訪れないのです。
「わたしなんて……」と落ち込むのですが、そこへ町はずれに住むレオおじいさんがやってきて、ひきだしから選び出したのは……!?
閉められたひきだしの暗闇、レミーさんが伸ばし入れる手、光あざやかな外の世界が交互に展開する、コントラスト。
“次は私?”“ああ、また私じゃなかった”
不安と期待を胸いっぱいに、待ちつづける小箱に、読者もドキドキ。
装いを新たにした仲間たちを羨ましがる気持ちが切ないです。
文章は『はるとあき』に続きタッグを組んだ斉藤倫さんとうきまるさん。
四季の移り変わりの美しさと、ささやかな交流からあたたかい幸福感が生まれるストーリーが光ります。
本作が絵本デビュー作となる、くらはしれいさんの、異国情緒漂うレトロな絵の愛らしさ、大人っぽい色使いにうっとり。
かわいい小物の再利用にときめく心は、子どもからおじいさん・おばあさんまで同じですよね。
後半の粋なストーリー展開にも、ぐっーと引き込まれて……。
子どもはもちろん、大人にもおすすめしたい、良質の映画のような絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
続きを読む
耳をすますと、聞こえてくるのは誰の声?
レミーおばあさんのたんすのひきだしには、かつて活躍したたくさんの小物たちがしまわれています。
ある日そこに、チョコレートを宝石のように彩っていた小箱が仲間入り。周りのみんなは、次はどんな役割を与えられるか、ドキドキしていました。時が過ぎるにつれて、小物たちはレミーさんに新しい役割を与えられ、嬉しそうに、次々とひきだしの中から旅立っていきます。だんだんさびしくなっていくひきだしの中で、次第に不安になる小箱。
そんなとき、レオおじいさんが訪ねてきました。
【編集担当からのおすすめ情報】
このお話にでてくる小物たちは、かつて大活躍した小物ばかり。今は役目を終えて、ひきだしの中にしまわれていますが、みんな、次はどんな役割を担うのか、不安と期待でいっぱいなのです。
なんだか、自分に置き換えてしまいそうです。まだ見ぬ未来の自分に希望を持つ小物たちを、応援したい気分になりました。
物も人間も、人生はいいことと、そうでもないことのくり返しなのかも知れませんね。前作『はるとあき』に次ぐ斉藤倫+うきまるワールドを、絵本デビューとなるくらはしれいさんの、少しレトロで異国情緒漂うかわいい絵で彩ります。たくさんのみなさんに読んでいただけたら幸いです。
続きを読む