本を読むのが大好きなさつまいも。彼の名は「もーさん」。
家にこもって寝ても覚めても読書づけのもーさんを、タコが外へと連れ出した!
なに言ってるのかわからないって? 大丈夫、そんなの誰にもわからない!
表紙からして、長編小説「百年の孤独」をスペイン語の原著で読むさつまいものイラストですから、そこに理屈を求めるのはヤボというもの!
シュールで奇妙も味のうち。『ちくわのわーさん』『うどんのうーやん』など、ユーモラスな作品で知られる「岡田よしたかのたべもの絵本」シリーズ最新刊です。
本作の主人公「もーさん」も、かわいらしいさつまいものキャラクター……ではなく、顔も手足もない、見たままリアルなさつまいも!
タコに連れられて外を歩くもーさんが出会うのも、リアルな干し柿や栗、かぼちゃ。それから、アジのひらきに、サンマのひらきも!? なぜひらいた……
読み進めればそのシュールさにもだんだん慣れてきて、リアルさつまいもが布団と枕でお昼寝してても気にならないし、アジのひらきがポップコーンを食べてても、なんだかなっとくしちゃうし……
でも、どうしても気になるのは、もーさんの家の玄関に靴がならんでいるところ。あのぅ、もーさん、それ何に使うの?
さて、食べもの友だちから、焼いたり、干したり、ふかしたりすれば、もっとおいしくなれるよ、とすすめられたもーさん。意を決してたき火のなかにとびこんだもーさんを待っていたのは、シュールさ爆発の意外な出会いでした。
リアルな食べものが、なぜだかかわいい。一度読んだらクセになる、おすすめの作品です。
(堀井拓馬 小説家)
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