児童書の挿絵や、挿画、漫画で活躍する大庭賢哉さんの、初めての絵本。
「きをつけていってらっしゃい」とお母さんに送り出されて出発したのは、トマとエマのきょうだい。
となりの国のおじいさんとおばあさんへ、とどけものに行くところです。
おにいちゃんのトマのリュックははちきれそう!
トマとエマ、何をとどけに行くのかな?
樹のうろにある扉を出て、大きなキノコがにょきにょき生える道をてくてく歩いていく2人。
昆虫のそばを歩き、カエルと言葉を交わし、時にはタンポポの綿毛につかまって空を飛ぶ。
トマとエマは人間よりも小さい、小人みたいな存在ですが、さらにずっと小さい郵便配達員らしき人もちらほら絵の中にあらわれて、とってもふしぎな世界です。
本書はすべてのページの絵がひとつながりに描かれたファンタジー絵本。
トマとエマが歩いて行く道は、ページをめくれば、次の道にちゃんとつながっていて、終わりまで途切れることはありません。
大きな風景の中で豆粒みたいに描かれるトマとエマもいれば、ぐっと大きく描かれる場面もあります。
でもちゃんとページからページへ、道と道がつながっているからふしぎです!
絵のあちこちにまぎれこむ、シッポの青いトカゲや、郵便ポスト。
誰かの手からはなれた風船や、鳥がわしづかみにして運ぶ虫眼鏡。
地面にひっそりとある小さな扉など、想像がふくらむしかけがいっぱい絵のなかに描かれています。
最後に見返しを見ると、一場面ずつ描かれていた絵がつながった状態で印刷されているのがわかります。
切れ目も段差もない一枚の、道の絵。
トマとエマがたどった道の絵です。
トマとエマの家からおじいちゃんの家までの道を、何度でもたどってみてくださいね。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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