朝、学校へ行くまみこは、玄関を出る時に、それはそれは嬉しそうな顔で言うのです。
「きょうはなんのひだか、しってるの?……しらなきゃかいだん三だんめ」
なんでしょう、この謎めいた言葉は。まみこが学校へ行ってしまうと、おかあさんはすぐに階段の三段目に赤いひもを結んだ手紙を見つけます。
「ケーキのはこをごらんなさい」
箱の中にはまた次の手紙、次の手紙を見つけると、またまた次の手紙。まみこの好きな絵本の中、金魚の池、音楽も時々おさらいなさい、めったに気がつかないところ……段々と探す場所もむずかしくなってくるみたい。おかあさんは家中いったりきたり、2階へあがったり、1階へおりたり。とうとうおとうさんにも電話して。まみこはいったい何をしたかったのでしょう。
でもね、おとうさんが会社から帰ってきて、居間に親子3人が揃った時、その秘密と答えがわかるんですよ。さらにまみこへのサプライズまで……!
おかあさんにとっても、まみこにとっても、なんだか長い長い一日だったのでしょうね。でも、本当に素敵な日。まみこがおとうさんとおかあさんを思い、おとうさんとおかあさんがまみこを思い。そのお互いを思うあたたかい心は、読者にだって存分に伝わってきますよね。瀬田貞二さんの文章と林明子さんの絵で味わう、極上の家族の物語。今度は誰の立場になって読んでみようかな。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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