「チューズデーがわたしを全力でまもってくれているように、わたしもチューズデーを全力でまもりたいと思っています」
介助犬チューズデーのパートナーであるルイスさんはそう語ります。助けられるものと助けるものという枠組みを越えた、対等なパートナーとして。
人間の日常生活を助ける犬には、盲導犬、聴導犬、介助犬がいます。
著者であるルイスさんは、戦争の後遺症によって歩くのが不自由になってしまいました。
この本の主人公チューズデーは、そんなルイスさんを支える介助犬。
チューズデーの視点からそのパートナーであるルイスさんとのとある一日を描いた本作。
介助犬とはなにかということを知り、それを学ぶきっかけになる作品としてはもちろん、この一冊が特別なのは、チューズデーの役割がルイスさんの手足としてその生活を支えていることだけにとどまらないという点にあります。
実はルイスさん、戦争によってその心にも大きな傷を負ってしまいました。
そのために音や動くものに対して過敏で、戦地の光景がたびたびフラッシュバックし、悪夢にうなされ、パニックの発作にもみまわれます。
人混みに強いストレスを感じるルイスさんは、人がひしめく地下鉄に乗るのも、往来の激しい街をゆくのにも困難をともないます。
地下鉄に乗っているとき、ルイスさんはチューズデーをずっと抱きしめています。
家から街に出るときには、やはりチューズデーに寄り添われながら、人の往来に心が慣れるのをじっと待ちます。
パニック発作の予兆さえ見抜くというチューズデー。
彼はルイスさんの手足である以上に、ルイスさんの心の一部でもあるのです。
体が不自由であることやそれを支える仕組み、戦争とそれがもたらす悲劇、この本をきっかけにして話し合えることがたくさんあります。
もちろん、ルイスさんとチューズデーのほほえましい写真をながめるだけでも楽しい一冊。
どの写真からも、ふたりの仲の良さがよく伝わってきます。
ルイスさんの靴下の柄なんかからは、特に!
(堀井拓馬 小説家)
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