アメリカの伝統的なお祭り「感謝祭」。日本人にはあまり馴染みのないお祭りですが、本国アメリカの人にとって、このお祭りはどうやら特別なイベントのようです。
感謝祭のその日、ワクワクする気持ちで鍋や料理器具を用意するお母さん。
ターキー(七面鳥)を焼くのはお父さん。
お姉ちゃんは手馴れた手つきでパンをこね、おじいちゃんはクランベリーソース、おばあちゃんはパンプキンパイを作る。
親戚のおばさんやおじさんも集まって、家族親戚みんなが1日がかりで感謝祭を作り上げていく。
みんなの作業を手伝いながら、誰よりワクワクしている少年の目線でストーリーは描かれます。
アメリカという国は、たくさんの開拓民が土地を切り開き、天災や不慮の事故などに見舞われながら少しづつ築かれていきました。
そんな歴史を積み重ねてきた彼らにとって、食べ物があるという事、家族がいるという事は、当然のようで、実は何よりもありがたい事。
感謝祭とは、その事を感謝する日・・・。苦難を乗り越えたからこそ生まれたこの祝日の意味はとても大きいものなのでしょう。
感謝祭ならではの献立も興味深く、ターキーにパンプキンパイにりんごジュースに、マッシュポテト!日本人がイメージする、いわゆる「ご馳走」とはちょっと異なるメニューの数々は、どれも感謝祭に絶対に欠かす事のできない料理たちなのでしょう。どの料理も最高に美味しそうに描かれ、食べてみたくなります。
家族みんなで料理を囲んだ記憶は、何物にも代えがたい。
感謝祭を知らない日本の子供達でも十分に楽しめ、共感することができるのは、この絵本の伝えたいことが、世界共通だから。
巻末の、訳者アーサー・ビナードさんの感謝祭に寄せる珠玉の文章も含め、感謝祭がどういったお祭りかを温かく伝えてくれる、繰り返し読みたい絵本です。
(福田亜紀子 元絵本編集者)
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