「朝、目をさますといつも、ぼくのまわりはことばの音だらけ。
そして、ぼくには、うまくいえない音がある」
それは、ぼくの舌にからみつき、のどの奥にひっかかり、うめくしかない。今日もまた、重い気持ちのまま学校へ向かう。先生がぼくをさすと、みんなが一斉にふりかえる。みんなに聞こえるのは、みんなと違うぼくの喋り方。見えるのは、ゆがんだ顔とびくびくした心だけ。ぼくは……。
放課後、お父さんがぼくを静かな川へつれていく。だまって歩きながら、上手くしゃべれなかったことを思い出すぼくに、お父さんは生涯忘れることのない大切な言葉をかけてくれた。
「ほら、川の水を見てみろ。
あれが、おまえの話し方だ」
吃音をもつカナダの詩人、ジョーダン・スコットの実体験をもとにして生まれたこの絵本。うまく回らない口で生きていく、その重みやもどかしさを少年の繊細な心を通して描きながらも、伝わってくるのは、もっと奥にひそむ「話す」ことの怖いくらいの美しさ。物語の中盤で見せるのは、シドニー・スミスが描く圧巻の景色。それは、ぼくがぼくとして生まれ変わる瞬間であり、読者がその意味を理解する場面でもある。
「川のように話す」
胸に迫るこの言葉。どの場面を読むときも、静かにゆっくり。しっかりと向き合いながら読んでもらいたくなる1冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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「朝、目をさますといつも、ぼくのまわりはことばの音だらけ。そして、ぼくには、うまくいえない音がある」
苦手な音をどもってしまうぼくは、クラスの朝の発表でもまったくしゃべることができなかった。放課後にむかえにきたお父さんは、そんなぼくを静かな川べりにつれていって、ある忘れられない言葉をかけてくれた。
吃音をもつカナダの詩人、ジョーダン・スコットの実体験をもとにした絵本。
デビュー以来、作品を発表するごとに数々の賞を受賞して注目を集めるシドニー・スミスが、少年の繊細な心の動きと、父親の言葉とともに彼を救ってくれた美しい川の光景を瑞々しいタッチで描いている。
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