「うんとこしょ どっこいしょ」
この耳馴染みのあるフレーズは、もちろんロングセラー絵本『おおきなかぶ』に登場する掛け声です。有名なロシアの昔話を内田莉莎子の訳、佐藤忠良の絵によって誕生したこの絵本、発売から50年以上経った今も変わらず子どもたちを楽しませてくれています。
ストーリーは、おじいさんがかぶを植えるところから始まります。
「あまい あまい かぶになれ。
おおきな おおきな かぶになれ」
おじいさんの声かけの通り、それはそれは立派なかぶが育ちます。
ところが、とてつもなく大きなかぶは、おじいさんが抜こうとしてもびくともしないのです。
そこで、おじいさんはおばあさんを呼んできて、一緒に抜こうとします。
「うんとこしょ どっこいしょ」
ところが、かぶは抜けません。
今度は、おばあさんが孫を呼んできて、三人で一緒に抜こうとします。
「うんとこしょ どっこいしょ」
ところが、かぶは抜けません。
そこで、孫は犬を呼び、犬は猫を呼び、とうとうねずみを呼んできますが…。
この絵本が小さな子どもたちから絶大な人気を得ている秘密は、この繰り返し。おじいさんだけでも、おばあさんだけでも、孫だけでもダメ。犬が来て、猫が来て、一生懸命かぶを引っぱる。だけどやっぱりダメ。流れはわかっていても、子どもたちは嬉しいのです。
「うんとこしょ どっこいしょ」の掛け声も、もちろん重要なポイントですよね。親子で読むときは、一緒に揺れて。みんなで読むときは、大合唱して。
さらにこの絵本を魅力的にしているのは、彫刻家佐藤忠良によるダイナミックな絵。構図の素晴らしさは言うまでもないのですが、改めてよく見てみると、おじいさん達が意外な程にチャーミングに描かれているのです。かぶだって、本当に美味しそう。きっと、読んでもらっている子ども達は、大人が思っている以上に画面の隅々まで堪能していることでしょうね。
いつの時代も、何回だって読みたくなる一冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
続きを読む