ワンピースを着た女の子(これが、おひめさま!)と、そのともだちのカエルさんのお話が3つ収められた絵本。
池にボールが落ちたり、おつりをなくしてしまったり、おとうさんの王様の頭にとまった鳥を追い払えなかったり、困って「えーん えーん」とないていると、カエルさんがやってきて
「どうしたのよ、おひめさま。なんで そんなに ないてるの?」
と、なぐさめ、助けてくれるのです。
このお話、実はツェマック家の合作。コールデコット賞を2度受賞しているツェマック夫妻には4人の娘がいて、そのうち長女のケーテが14歳のときに末妹に語り聞かせたのがはじまりだそうです。以来ツェマック家の定番となり、おとうさんのハーヴがそれをもとに文をまとめ、おかあさんのマーゴットが絵を描いたそう。
ひょうひょうとした文章が楽しく、そしてなんといっても、カエルさんの表情がたまりません!
翻訳者の福本友美子さんが1975年発売の原書を、翌年にイギリスで見つけ、長年あたためていたというこの絵本。
「岩波子どもの本」60周年記念の新刊として、ついに、このたび日本での翻訳出版が実現しました。
同シリーズは1953年に創刊された絵本シリーズの草分け。『ちいさいおうち』『はなのすきなうし』など海外の傑作絵本をはじめ、長年読み継がれる名作を多く世に送り出しています。
発表後40年近くたって『おひめさまとカエルさん』が日本語で読める幸運を喜ぶとともに、あらためてツェマック家の虜になりそうです。おさえた色彩やタッチに温もりがあり、そこはかとなくただようユーモアは秀逸。
本書はスモーキーなピンクと緑の色合いがきれいで、前後の見返しにつかわれているのも素敵なんですよ。
同シリーズのマーゴット・ツェマックの作品に『みっつのねがいごと』がありますから、ぜひ見くらべてみてくださいね。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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