モリスにとって、この世でいちばんたいせつなものは、本。
読むのも大好きで、自分でも本を書いていた。
ところがある朝、突然風が吹き荒れて、何もかもが吹き飛ばされてしまった。
家も町も、そしてモリスが書いた言葉さえも。
そんな途方に暮れていたモリスを導いたのは、空飛ぶ本!
誘われるままに建物に入っていくと、そこにはたくさんの本たちが
ページをぱたぱたはためかせ飛び回っていて、棚には数えきれないほどの本が並んでいたのです。
本たちは「読んで、読んで」とモリスにささやき、ページをめくると嬉しそうに他の本も踊り始めるのです。
ここでモリスと本たちとの幸せな暮らしが何十年に渡って続くのですが・・・。
この作品はアカデミー賞短編アニメーション賞をとった、2012年受賞映画の絵本版。
アカデミー賞短編アニメーション賞と言えば、『つみきのいえ』の大ヒットが記憶に新しいですよね。
実直に本を愛し、本に捧げたモリスの生涯をファンタジックに、優しく美しく、そして少し切なく描き出しています。
冒頭のダイナミックな展開とは対照的に、本たちのすむ館で過ごす長く静かな暮らしは大きな事件は何も起こりません。
それでも、モリスは本当に豊かな世界にいることが伝わってきます。
本が好きな人たちなら共感できるだけでなく、羨ましく思うこともあるかもしれません。
本を読む、ということが人の心にどんな癒しを与えてくれるのか。
具体的な言葉ではなく、物語の世界観だけで感じとることができる、
大人にもおすすめしたい素敵な一冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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